はじめに

 今月のテーマは「仮想通貨」です。

 ビットコインをはじめとする仮想通貨がニュースなどの話題にのぼる機会が増えています。メイン通貨のビットコインの値上がりは、目を見張るものがあり、実際に投資をスタートされている方が多そう。ということで、アンケート。すると、なんとすでに約13%の方がなんらかの形で仮想通貨取引をはじめているという結果に。

 今回は、みなさんが仮想通貨をはじめた目的や投資金額についても聞いています。さらに、楽天証券経済研究所の香川が仮想通貨取引の現状とリスク、そして展望についてまとめています。ぜひご覧ください。

 

楽天DIのまとめ

 楽天証券経済研究所シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

 今回のアンケート調査は11月27日(月)~11月29日(水)の期間で行われました。

 調査終了後に迎えた11月末(30日)の日経平均終値は2万2,724円でした。月次ベースでは3カ月連続の上昇になったほか、前月末の終値(2万2,011円)からは713円の上昇幅です。

 あらためて11月の相場展開を振り返ると、日経平均は前月からの上昇トレンドを引き継ぐ格好で、上値追いでスタートし、11月9日の取引時間中には2万3,382円の高値をつける場面もありました。

 ただし、この11月9日の取引がその後の調整を迎えるきっかけになりました。この日の終値は45円安と小幅にとどまったものの、日中の値幅(高値と安値の差)は850円を超え、前日比で468円上昇したかと思えば、その後に390円下落するなど、慌しい動きでした。これは上下方向に揺らぐ市場心理を示唆するものです。さらに、国内企業の決算シーズンが一巡し、利益確定売りが出やすいタイミングだったことも影響しました。

 とはいえ、日経平均が下落する場面では25日移動平均線がサポートとして機能したことや、押し目買い意欲も感じられたことなどを踏まえると、相場が崩れたわけではなく、これまでの上昇を受けたスピード調整、日柄調整と見る向きが多いと思われます。月末にかけては、2万2,500円を挟んだもみ合いが続きました。

 今回のアンケートは約3,500名からの回答をいただきましたが、日経平均と為替のDIの値は、ともに目先(1カ月先)で少し低下しており、やや慎重な姿勢が感じられる結果となりました。

 

日経平均の見通し

「 目先は慎重、先行きはやや楽観視 」

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

今回調査の日経平均の見通しですが、1カ月先DIの値が21.59、3カ月先DIについては12.53となりました。

 前回の結果がそれぞれ、36.05と9.75でしたので、1カ月先DIは値が低下する一方で、3カ月先DIは増加した格好です。ちょうど前回調査(1カ月先DI増加・3カ月先DI低下)とは逆の結果になりました。とりわけ、1カ月先DIの前回からの低下幅は14ポイント以上と大きくなっています。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 とはいえ、大幅に低下してはいるものの、値自体は今年2番目の高水準ですし、回答の内訳を見ても、中立派が半分以上(約52%)を占める中で、強気派(約35%)は弱気派(約13%)を大きく上回っていて、低下幅の大きさほど見通しやムードが悪化したわけではありません。

 

 

 また、3カ月先DIの内訳でも、強気派が30%以上をキープしており、先行きを厳しく警戒している様子はみられません。

 11月の日経平均は調整する動きを見せたこともあって、個人投資家の見通しは、目先は慎重、先行きは楽観視しているような印象で、「これまで急ピッチで上昇してきたから、多少の調整はあってもおかしくないし、相場が崩れた訳ではないので、再び株価は上昇して行くだろう」という心理を表しているのかもしれません。

 いよいよ2017年相場も12月入りとなり、残り1カ月を切りました。11月9日を境に始まった日経平均の調整局面は、11月16日に下げ渋り、以降の展開は今のところ、もみ合いながらジワリと戻り基調をたどっている状況が続いています。こうした足元の動きは、「上昇トレンドの中の小休止」なのか、それとも「天井圏から下落トレンドへの転換点」なのかを見極めている動きとも言えます。

 上昇トレンドの場合、日々の株価の上げ下げを繰り返しつつ、上値と下値を切り上げながら形成されて行きますが、足元の相場が再び上昇トレンドに復帰するには直近高値を上抜けなければなりません。その目安となる水準は11月9日の高値である2万3,382円になりますが、そのためにはまず、まだ達成していない終値ベースでの2万3,000円台乗せをクリアする必要があります。

 また、企業業績を背景とした強気の見方は根強いですが、決算シーズンも一巡し、物色される対象銘柄の選別が進む中では積極的に上値を追う動きにはなりにくく、新たな材料が出ない限り、短期間での上昇トレンド復帰はやや難しそうです。

 さらに、株式市場のムードは良くも悪くも米国の情勢に左右されます。

 たとえば、12月12日~13日に行われるFOMC(米連邦公開市場委員会)では利上げの決定が確実視されていますが、これを受けて、米国では採算改善期待、日本では出遅れ感を背景に金融株が買われたり、日米金利差拡大による円安進行で、輸出関連企業の業績上振れ期待による物色意欲が見られています。

 ただし、FRB(米連邦準備制度理事会)による2年前の利上げも「あらかじめ想定され、影響も限定的」という見方が多い中で決定されたのですが、決定後の株価が世界的に大きく下落した経緯があったことは、留意しておく必要があります。

 また、税制改革法案についても下院と上院の双方で法案が可決しました。両院の法案内容には異なる点もあるため、今後は法案を一本化してあらためて両院で可決する必要があり、まだ時間が掛かるのですが、米国の株式市場では、法人税率の引き下げやレパトリ減税などの内容を先取りして、NYダウが史上最高値を更新しています。法案成立の見極めと減税効果はこれからになります。

 さらに、ロシアゲート疑惑に対する捜査の進展や、ティラーソン国務長官の進退問題、北朝鮮情勢への対応などの材料も多く燻っています。政治的なものが多く、それだけに、ニュースの見出しに反応したアルゴリズム取引が相場をかく乱し、値動きの振れ幅が大きくなる展開には注意です。

 年末まで残りわずかですが、過度に悲観することはないにせよ、リスクに鈍感でいることは危険ですので、常に警戒のアンテナは張っておきたい局面と言えます。

 

FX:3通貨ペアすべてのDIがマイナスに転換

 楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 楽天DIのFX編は、ドル円、ユーロ円、豪ドル円の、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスのときは「円の先安」見通し、マイナスのときは「円の先高」見通しを意味します。プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強まっていることを示しています。

 11月の楽天DIは、3通貨ペアすべてがマイナスになりました。月末近くになってドル円が110円台まで下落したことで、投資家の円高見通しが急速に強まったことが理由と思われます。

 

ドル円:DIはマイナス転換。一転円高見通しが優勢に

「ドル円は、1カ月後どう動いていると考えますか?」という質問に対して、現在の水準(112.55円)よりも「円高」になるとの回答が最も多く、先月より13ポイント増えて、全体の約36%を占めました。「円安」は約32%、「中立」は約32%でした。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 ドル円のDIは約26ポイントダウンして3カ月ぶりのマイナスとなる-4.03まで下がりました。投資家の円高見通しが強まっていることを示しています。

 

 ただ、全体では、円高、円安、中立に見方が三等分された形で、円高見通しが特に強まったというほどではありません。

 

 11月のドル円は、114.73円をピークに110.84円まで円高が進みました。黒田日銀総裁が講演で「強力な金融緩和を進めていく」と強調。利上げに向かう米国との金利差が拡大するとの思惑でドル買い円売りが優勢になり、11月6日に月の高値となる114.73円をつけました。ただ、115円にのせられないまま、その後はじりじりと下落。月末近くの27日には、北がミサイルを発射するとのニュースで地政学リスクを思い出して急落、2カ月ぶり以上の安値となる110.84円をつけました。

 今年のドル円を動かしている材料は、大きく3つあります。まずは日米の金利差。2つめはトランプ大統領の経済政策、そして3つめは地政学リスクです。

 FRBは来年、3回の利上げを実施すると予想されています。パウエル・次期FRB議長も、「利上げを待ちすぎることにはリスクがある」と発言していますし、日米金利差の拡大が今後もドル円を支えることになります。FRBの利上げ期待が現在よりも強まるならば、115円を超える日も近いでしょう。

 トランプ大統領の政策の目玉である減税プランは、年初からずっと揉めていましたが、ここにきてようやく米議会可決の運びとなりました。マーケットのリスクセンチメントが上向き株価が上昇、ドル/円も上げるという動きになっています。

 そして地政学リスクですが、最近ではマーケットも慣れてしまい、ミサイルが発射されてもあまり反応しなくなっています。とはいえ、仮に戦争が勃発することにでもなったら、良い材料をすべて打ち消すくらいのインパクトがあるでしょう。

 また、ここにきて、新たな材料になるかもしれないロシアゲート問題が再浮上しています。トランプ政権の不安定化は、財政政策の実現性にも影響するでしょうし、またロシアとの関係悪化が、北アジアの地政学リスク解決を遠ざける懸念もあります。

 3つの材料が、円高、円安のどちらのサイドについているかによって、ドル円の方向が決まるならば、3つのうち今は2つ(日米金利差とトランプ経済政策)が、ドル高円安の側についているので、多数決でドル円の方向は円安、ということになるでしょう。

 

ユーロ円:DIはマイナスへ。割合は中立が4割

 ユーロ円は、現在の水準(132.55円)よりも「ユーロ安/円高」になると考える投資家は28%、「ユーロ高/円安」は26%でした。最も多かったのは、全体の約46%を占めた「中立」でした。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 ユーロ円のDIは約6ポイントダウンして、マイナス1.46になりました。円高見通しが強まっているわけですが、その差はわずか。全体としては、ユーロ円に対しては様子見状態といえます。

 

 ユーロ円の水準も、終値で比較した場合、ここ3カ月間は132円台の中に納まる強い動意のない状況が続いています。投資家がユーロ円に対して相場観を持てないのも当然かもしれません。

 

豪ドル円:豪ドル安に傾くが、半数以上は中立

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 豪ドル円は、現在の水準(85.15円)よりも「豪ドル安/円高」に向かうと考える投資家が5ポイント増えて24%、その分「豪ドル高/円安」が5ポイント減って20%になりました。「中立」は動きがなく、全体の約56%を占めています。

 

 豪ドル高見通しが少なくなった結果、豪ドル円のDIは10ポイントダウンしてマイナス3.15になりました。

 ただし、様子見の投資家が最も大きい割合を占めている状況に変わりはありません。

 

今月の質問:「仮想通貨」について

 楽天証券経済研究所 チーフグローバルストラテジスト 香川 睦

 11月の「今月の質問」は、「ビットコインなどの仮想通貨」でした。 

 

[今月の質問 1 ] 
ビットコインなどの仮想通貨の利用状況、認知度について教えてください。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
 

 [今月の質問 2 ]
質問1で「すでに取引している」「仕組みや動向について情報収集し、取引をはじめる予定」という方にお伺いします。仮想通貨取引に感じている魅力、取引する目的について教えてください。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
 

[今月の質問 3 ]
質問1で「すでに取引している」「仕組みや動向について情報収集し、取引をはじめる予定」という方にお伺いします。どのくらいの金額で仮想通貨取引をスタートされましたか? また、スタートする予定ですか?

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
 

 最近、ビットコインなどの仮想通貨取引が注目されています。

 下の図でみる通り、ビットコイン(平均相場)は、2016年初よりの2年弱で約27倍となりました。

 その投機的な価格形成と乱高下から、「投資対象として適格なのか」との批判も多い状況です。「通貨」と称しながら、実際には中央銀行や政府の信用で裏付けされたコイン(貨幣)ではありません。

 また、有価証券(株式、債券、不動産投信)のように、利益や配当の成長、利息(クーポン)や元本償還といった「キャシュフロー」の裏付けがない特徴への不安も指摘されています。単なる「売買需給観測」でのみ形成されている相場であるとすれば、ビットコイン(仮想通貨)は「投資」(Investment)ではなく、「投機」(Speculation)に分類できるかもしれません。

<図表:ビットコイン相場の推移(2016年以降)>

出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2017年12月5日)

 実際、ビットコイン相場は、2016年初からの約2年足らずで約26.6倍となってきました(2017年12月4日時点)。 

 そのプロセスにおける変動性を振り返ると、上昇した場面では10日前比変動率が最大+56.4%に及んだ一方、下落した場合では最低-30.5%となった事実が検証できます。特に、「10日間で35%下落した」投資商品は他にみあたりません。

 つまり、ビットコインは「ハイリスク・ハイリターン」的な色彩が強く、潜在的リスク(振れ幅)には注意すべきと考えます。実際、欧米の金融界や学識者の間では、ビットコインの投機性を批判する声も多くなっています。

 とは言いながら、ビットコインなど仮想通貨の取引価値は、「ブロックチェーン」と呼ばれる情報の共有管理ネットワークシステムにあり、国境を超えた取引・決済に使える「利便性」にこそ価値があるとの見方もあります。

 また、ブロックチェーンの活用で、取り扱い業者は投資・管理コストを抑制することが可能となり、送金コストを引き下げた上での「即時決済」などの、サービス向上が見込まれます。

 今後、金融当局による規制監督が進み、実現損益への税制が整備され、利用者の安全性(セキュリティー)が従前より確保されるなどし、他金融(投資)商品と比較した平等性・公平性・安全性が担保されていくなら、ビットコインの普及が国内で進んでいく可能性はあると考えます。

 

今後、投資してみたい金融商品・今後、投資してみたい国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今月は、毎月継続して実施している設問「今後、投資してみたい金融商品」で「国内株式」と回答した人の割合に注目しました。

 今後投資してみたい金融商品に「国内株式」を選んだ人の割合は、11月の調査で63.28%となりました。10月の調査では、衆院選での自民党の勝利が前向きに受け止められたことなどで64.50%まで反発していましたが、2カ月連続の上昇とはなりませんでした。

 

「今後、投資してみたい金融商品」で「国内株式」と回答した人の割合

出所:楽天DIおよび中国国家統計局のデータより筆者作成

 

 2012年12月の第二次安倍政権発足以降、英国でのEU(欧州連合)離脱の是非を問う国民投票が実施される直前の2016年5月までは75%前後を維持していました。しかし、英国の国民投票直後に行われた2016年6月の調査では63.4%まで急低下しました。

 その後、一時は株高が意識されて70%を回復する場面が見られましたが、再び60%台での推移となっています。

 英国の国民投票が「今後、投資してみたい金融商品」で「国内株式」を選択する人の割合が低下するきっかけとなり、そのムードが現在も続いていると考えられます。

 このような状況の中、最近、外国人の買いが国内株式を支えていると耳にすることがあります。

 一方、日本の投資家の「国内株式」への投資意欲が以前の水準に戻れば(「国内株式」を選択する人の割合が75%前後に上昇すれば)、今度は国内の投資家主体の株高が実現すると考えられます。

 引き続き、設問「今後、投資してみたい金融商品」における、「国内株式」と回答した人の割合に注目していきたいと思います。

 

今後、投資してみたい金融商品 2017年11月調査時点 (複数回答可)

投資対象 割合 前回比
国内株式

63.28%

▼ 1.17%

外国株式 30.25% ▼ 0.99%
投資信託 32.94% ▼ 3.79%
ETF 18.33% ▼ 2.63%
REIT 8.81% ▼ 0.48%
国内債券 5.23% ▼ 0.10%
海外債券 6.01% ▼ 1.37%
FX(外国為替証拠金取引) 11.70% △ 0.60%
15.24% ▼ 0.84%
原油 3.43% △ 0.32%
その他の商品(コモディティ) 2.32% △ 0.05%
カバードワラント 1.06% ▼ 0.44%
特になし 7.95% △ 1.65%

出所:楽天DIのデータより筆者作成

 

今後、投資してみたい国(地域) 2017年11月調査時点 (複数回答可)

国名 割合 前回比
日本 46.53% ▼ 4.22%
アメリカ 39.09% ▼ 4.48%
ユーロ圏 5.95% ▼ 1.23%
オセアニア 5.00% ▼ 0.29%
中国 10.61% △ 0.71%
ブラジル 4.35% ▼ 1.64%
ロシア 3.55% ▼ 0.45%
インド 37.17% ▼ 2.75%
東南アジア 24.51% ▼ 1.10%
中南米(ブラジル除く) 2.83% △ 0.14%

出所:楽天DIのデータより筆者作成