「地球上で最も重要な銘柄」の時価総額は一時300兆円に

 前週後半に主な米国株価指数が最高値を更新するエンジンとなったのはエヌビディアが21日(日本時間22日朝)に発表した11-1月期の決算とガイダンス(業績見通し)でした。

 投資銀行世界最大手ゴールドマン・サックスが「地球上で最も重要な銘柄」(Most important stock on earth)と呼んでいた生成AI(人工知能)向け半導体最大手エヌビディアの売上高は四半期として最高を更新。

 純利益が前年同期比+769%と急増し、今期(2-4月期)の売上高見通しとともに市場予想を上回りました。同社のジェンスン・フアンCEOは「アクセラレーテッドコンピューティングと生成AIは転換点を迎えた。企業と業界、国を超えて世界的に需要が急増している」と述べました。

 図表3はS&P500の構成銘柄について時価総額上位10社と「年初来騰落率」を示したものです。「生成AIブーム」に乗り、エヌビディアの株価は昨年に約3.4倍となったのに続き、今年も年初来で56.8%上昇(28日)。

 同社の時価総額は一時2兆ドル(約300兆円=トヨタ自動車の約5.3倍)に到達した初の半導体企業となり、マイクロソフトとアップルに次ぐ米国3位に浮上しました。AIを中心とするイノベーション(技術革新)進展に対する期待が確信に変わりつつあることを示し、ハイテク企業全般の株価堅調に影響しました。

 今後もエヌビディアの四半期ごとの決算発表(次回は5月24日)が市場全体の乱高下要因になりやすいともいえるでしょう。

 筆者の2024年末までを見据えたS&P500の目標値(メインシナリオ)は5,300ポイントで変わりません。ただ、S&P500が節目とされていた5,000を上回ったことによる高値警戒感で持ち高調整の売りに直面するか、いったんレンジ相場入りする展開も不思議ではなく、上述したリスク要因を警戒して利益確定売りが嵩めば調整モード入りする可能性は否定できません。

 米国株式が過度に下落する場面では、中期視点に基づく押し目買いや積み増し買いが得策になると考えています。

<図表3>エヌビディアは時価総額で米国市場3位に浮上

S&P500の時価総額上位10社

ティッカー 銘柄名 時価総額
(億ドル)
時価総額
(兆円)
年初来
騰落率(%)
SPX S&P500種指数 442,938 6,669.76 6.3
MSFT マイクロソフト 30,295 456.19 8.4
AAPL アップル 28,015 421.84 -5.8
NVDA エヌビディア 19,416 292.36 56.8
AMZN アマゾン・ドット・コム 17,987 270.85 14.0
GOOGL アルファベット 17,020 256.29 -2.4
META メタ・プラットフォームズ 12,344 185.88 36.7
BRK/B バークシャー・ハサウエイ 8,921 134.34 15.6
LLY イーライリリー 7,199 108.40 30.0
TSLA テスラ 6,435 96.89 -18.7
AVGO ブロードコム 5,975 89.98 15.5
出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2024年2月28日)

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