アナリスト評価◎の割安高配当株TOP15

※データは2024年4月30日時点。単位は配当利回りと月間騰落率、移動平均線乖離率は%、時価総額は億円。配当利回りは予想、移動平均線乖離率の基準は13週移動平均線。▲はマイナス。

※コンセンサスレーティング…アナリストによる5段階投資判断(5:強気、4:やや強気、3:中立、2:やや弱気、1:弱気)の平均スコア。数字が大きいほどアナリストの評価が高い。

※移動平均線乖離(かいり)率…株価が移動平均線(一定期間の終値の平均値を結んだグラフ)からどれだけ離れているかを表した指標。この数値がマイナスならば、移動平均線よりも現在の株価が安いということになる。

 上表は、長期投資に適した銘柄の高配当利回りランキングと位置付けられます。

 4月30日時点での高配当利回り銘柄において、一定の規模(時価総額1,000億円以上)、ファンダメンタルズ(コンセンサスレーティング3.5以上)、テクニカル(13週移動平均線からの乖離率20%以下)などを楽天証券の「スーパースクリーナー」を使ってスクリーニングしたものとなっています。配当利回りはアナリストコンセンサスを用いています。

 なお、上場市場は各社ともに東証プライム市場となっています。

中東緊迫化や半導体株安で、日経平均一時3万7,000円割り込む

 4月(3月29日終値~4月30日終値まで)の日経平均株価(225種)は4.9%の下落となりました。

 例年通り、4月月初は年度替わりに伴う機関投資家の利益確定売りが集まり、売り先行でスタートしました。その後も、経済指標の上振れが相次いだことで米国の早期利下げ懸念が後退し、戻りの鈍い展開が続きました。

 4月中旬には、中東情勢の緊迫化が売り材料となったほか、半導体受託生産の世界最大手TSMC(台湾積体電路製造)やオランダの半導体製造装置大手ASMLが決算発表後に株安となったことで国内半導体関連も売り込まれ、日経平均は一時、2月9日以来の3万7,000円割れまで値を下げました。

 4月後半にかけては、中東情勢の落ち着きや米FOMC(連邦公開市場委員会)で想定以上のハト派姿勢が示されたことから安心感が強まり、やや値を戻す展開になっています。26日の日銀金融政策決定会合直後に円売りが強まり、一時34年ぶりとなる1ドル=160円台にまでドル高円安が進んだことが話題になりました。

 こうした中、ランキングTOP15銘柄の株価は売り優勢の展開となりました。上昇したのは4銘柄にとどまっています。

 JT(日本たばこ産業)(2914)は月前半の株安場面でディフェンシブ性の強さが発揮され、相対的に底堅い動きとなりました。AREホールディングス(5857)は25日に決算を発表し、今期の大幅増益見通しが買い材料となりました。自社株買いの発表も支援となったようです。

 一方、アステラス製薬(4503)が大きく値を下げました。無形資産の減損損失計上による業績予想の下方修正を12日に発表したことが売り材料となりました。

 また、JFEホールディングス(5411)神戸製鋼所(5406)などの鉄鋼株も日経平均株価を上回る下落率となりました。特に個別材料はありませんでしたが、鉄鋼セクターが相対的に売り優勢の地合いに押されました。

JTが新規にランクイン!アナリスト評価高まる

 今回、新規にランクインしたのは、東洋建設(1890)、JT(2914)、FPG(7148)、JFEHD(5411)の4銘柄で、除外されたのは西松建設(1820)MCJ(6670)パーソルホールディングス(2181)三洋化成工業(4471)となっています。

 東洋建設はこれまでアナリストのカバレッジ(業績の分析や株式の推奨、論評)がなかったようですが、新たに買い推奨のレーティングが観測されたことで、新たにランキング対象となりました。

 JTはこれまでコンセンサスレーティングが基準未達の状況となっていましたが、新たに新規買い推奨のレーティングが観測され、基準値に達しました。FPGは3月に発表した増配が、コンセンサスに反映されて配当利回りが上昇しました。

 西松建設は配当コンセンサスが低下してランキングから除外されていますが、4月26日に年間220円への増配を発表しており、実質的な配当利回りは4.82%と高水準であると指摘できます。MCJやパーソルHDは相対的な株価上昇でランキングトップ15から外れています。三洋化成工業は株価下落で時価総額が基準を外れました。

 アナリストコンセンサスが会社計画の配当予想を上回っている銘柄としては、東洋建設(1890)、SANKYO(6417)、JT(2914)、FPG(7148)、AREHD(5857)などが挙げられます。会社計画ベースでの配当利回りは東洋建設が4.93%、SANKYOが4.66%、JTが4.57%、FPGが3.97%、AREHDが3.92%となっています。

 SANKYOはややコンセンサス水準が高すぎる印象ですが、その他は業績上振れ余地などから見て、コンセンサス水準が妥当とも考えられます。

 一方、コンセンサス水準が会社計画を下回っているものは大和工業(5444)で、会社計画ベースでは4.72%となっています。2025年3月期の配当計画を示したばかりであり、こちらは今後、アナリストコンセンサスが切り上がっていくことになるでしょう。

米国市場の動向は利下げ先送り観測が強まり、警戒続く

 現在、2024年3月期の決算発表が本格化を迎えつつあります。株主還元の強化などが買い材料視される銘柄も多く見受けられる一方、新年度の業績見通しは保守的な企業が多いように感じられます。

 もともと、2025年3月期の業績見通しは慎重なものになるとみられていただけに、決算発表の一巡後は買い安心感が全般的に強まる可能性もあるとみられます。とりわけ、足元での一段の円安は業績予想に反映されていないとみられます。

 ただし、米国の利下げ先送りの可能性が高まっていることはリスク要因と言えるでしょう。大統領選挙を秋口に控える中での「セルインメイ(株は5月に売れ)」のタイミングでもあり、米国市場のこの先一段高は展望しにくい状況と考えます。なお、転機となる可能性が残るのは、5月22日とみられる米エヌビディア(NVDA)の決算発表となりそうです。

 米国株安という外部環境悪を想定すると、銘柄の選別物色が重要になってきます。2025年3月期決算発表を受けて、業績の上振れが期待できる銘柄を探っていく必要があります。ドル/円相場は当面1ドル=155~160円レベルの推移が続くと見込まれ、円安メリットを強く受ける銘柄、また、業績上振れが一段の配当引き上げにつながりそうな高配当利回り銘柄なども注目できます。

 後者に関しては一般的に、会社予想と比べてアナリストコンセンサスの利回り水準が高い銘柄などは期待を高めやすいでしょう。