米国株が調整モード入りする兆候も出ている

 日経平均が最高値を更新した一因として米国株高による海外投資家のリスク許容度改善に伴う「日本株買い」が挙げられます。21日に発表されたエヌビディアの決算と業績見通しが市場予想を上回ったためハイテク銘柄や半導体株が上昇。前週はS&P500種指数、ダウ工業株30種平均、ナスダック100指数などが最高値を更新しました。

 ただ、図表2で示す通り、S&P500の100日移動平均線に対する上方乖離率も22日に+10%超に上昇し、昨年7月下旬までの株高局面で付けた水準(+8.7%)を上回りました。昨年10月下旬を起点とした米国株高も短期的にはやや過熱感が否めない状況です。

 米著名投資家ウォーレン・バフェット氏は24日、恒例の「株主への手紙」の中で株式相場について「昔とは比べ物にならないほどカジノ的な動きをするようになった」と警鐘を鳴らしました。

 CNNヒジネスが公表している「Fear & Greed Index」(恐怖と貪欲指数)は79と投資家心理が「Extreme Greed」(極めて貪欲)な状況にあることを示しています(28日)。

 株価が調整入りする契機となりうるリスク要因としては、(1)物価指標の伸びの高止まりや景気の底堅さを受けた「早期利下げ観測」の後退と債券金利上昇、(2)都市部の商業不動産不況に端を発した地方銀行の経営悪化や信用不安、(3)3月7日に失効する「つなぎ予算」の行方を巡る債務上限問題の再燃、(4)大統領選挙の共和党公認候補者にトランプ前大統領が有力視され、「もしトラ・リスク」が「ほぼトラ・リスク」に変化した不透明感が挙げられます。

 特に(4)は、「米国第一主義」を掲げるトランプ氏の公約には「中国からの輸入関税を60%に引き上げる」など過激な発言が多く、米中対立激化に伴う中国向けビジネスやインフレ再燃を巡る不安を市場がいったん警戒する動きが想定されます。米国株が下落すると、海外投資家のリスク許容度が減退して「日本株売り」につながりやすい事象には要注意です。

<図表2>米国株にも高値警戒感で調整モード入りの可能性

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2024年2月28日)