買収価値と比べて割安と考えられる銘柄をピックアップ

 保有不動産の含み益を勘案した実質PBR(株価純資産倍率)が0.7倍を割れている銘柄を、「買収価値が高い株」と呼ぶこととします。賃貸不動産の含み益が1,000億円以上で、実質PBRが0.7倍以下の7社をピックアップしたのが、以下です。

賃貸不動産の含み益1,000億円以上、かつ実質PBR0.7倍以下の7社:2024年3月27日時点

  コード 銘柄名 含み益
:億円
実質PBR
:倍
1 8841 テーオーシー 1,102 0.37
2 8830 住友不動産 3兆7,367 0.59
3 8804 東京建物 5,264 0.61
4 8905 イオンモール 3,255 0.61
5 5901 東洋製缶GHD 1,158 0.62
6 8802 三菱地所 4兆6,339 0.67
7 9302 三井倉庫HD 1,104 0.70
出所:各社有価証券報告書およびQUICKより楽天証券経済研究所が作成。
実質PBRの計算方法は3月28日のレポートを参照。このレポート末尾の「著者おすすめのバックナンバー」に掲載

 この中で、一番投資価値が高いと私が考えるのは、三菱地所(8802)です。ついで、住友不動産(8830)テーオーシー(8841)イオンモール(8905)の投資価値が高いと考えています。

 テーオーシー(8841)に対して、2007年に、敵対的TOB(経営陣の合意のない公開買付)がかかったことがあります。当時、ミニバブルと言われた不動産ブームの中で、テーオーシーの割安な株価に注目して、買収合戦が繰り広げられました。

 事の発端は、2007年4月に株価800円でMBO(経営陣による買収)が発表されたことです。これにダヴィンチ・アドバイザーズが株価1,100円で対抗TOBを発表しました。その後、TOB価格は1,308円まで引き上げられました。

 ところが、経営陣が買収防衛の活動を行ったために、ダヴィンチのTOBは不成立になり、テーオーシーの株価は下落しました。さらに2008年にリーマンショックが起こると、不動産価格も株価も急落しました。

テーオーシーの月次株価推移:2004年1月~2024年3月

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

バリュー物色に変化が起こる可能性も

 2021年以降、日本株市場で、バリュー株(割安株)の上昇が目立っています。バリュー株にはおおざっぱに分けて2つの種類があります。

【1】収益価値・配当利回りから割安な株:配当利回りの高い、PER(株価収益率)の低い銘柄が多い
【2】純資産価値から割安な株:PBRが1倍を割れている銘柄が多い

 これまで、バリュー株の上昇は、上記の【1】、特に大型の高配当利回り株に偏っていました。純資産価値(買収価値)で割安な【2】の株価はさえないままでした。

 この流れが少し変わる可能性もあります。短期的な株価上昇率が高い大型の高配当利回り株が買いにくくなる一方、【2】のバリュー株が見直される可能性があると思います。

 最近の株価上昇率が高い大型の高配当利回り株を少し売って、三菱地所やテーオーシーなど純資産価値から割安なバリュー株を少し買ってみたいと考えています。

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