INPEXを高く評価する六つのポイント

 INPEXを高く評価する点は、以下6点です。

【1】今期は減益予想だが、利益は高水準で、株価割安と判断

 今期(2023年12月期)の純利益(会社予想)は、前期比34.9%減の3,000億円です。最高益を大幅に更新した前期との比較で減益でも、今期利益は高水準です。PER・PBRなどの株価指標で見て、株価は「割安」と判断しています。

【2】日本最大の原油・天然ガス生産・開発企業

 原油・ガスの生産量・埋蔵量は国内最大で、海外20数カ国に資源権益を有します。

【3】海外権益のほとんどが友好国に

 海外権益は、オーストラリア・インドネシア・中東などの友好国にあります。権益喪失の危機にあるロシアの「サハリン1」にも出資【注】しているが出資比率は低く、仮に撤退・減損という最悪の事態になったとしても影響は限定的と同社はコメントしています。

【注】INPEXは、サハリン1の権益30%を保有する「サハリン石油ガス開発」の株式を6.08%所有

【4】先行投資が実り、今後生産量・埋蔵量とも拡大が見込まれる

 長い年月をかけて開発を進めてきた オーストラリア(イクシス)・インドネシア(アバディ)などで先行投資が実り、生産量や確認埋蔵量が拡大する局面に入ると予想されます。

【5】技術的に難しい海底ガス田を開発

 技術的に難しい海底ガス田を開発、陸上にガスを誘導してLNG(液化天然ガス)に転換して日本などに輸出するプロジェクトを行っています。

【6】脱炭素にも積極的に取り組み

 2050年にCO2(二酸化炭素)排出ネットゼロを目指し、(1)水素・アンモニア事業、(2)CCUS(CO2回収・貯蔵・利用)、(3)再生エネルギー事業(地熱・風力など)、(4)メタネーション(合成メタン)、(5)森林保全などの事業を推進しています。

INPEXの二つの潜在リスク

 一方で、不安材料もあります。特に私が重視しているのは、以下2点です。

【1】資源ナショナリズムのリスク

 最大のリスクは、資源ナショナリズムです。海外に保有する権益はいつでも資源ナショナリズムによって接収されるリスクがあります。現在、友好国中心に権益を保有しているとはいっても、その友好関係がなんらかの理由で崩れるリスクは常にあります。
 国交断絶にならない限り、さすがに無償で権益を没収されることはないと考えられますが、それでも友好関係が崩れると不当に低い対価で権益を奪い取られるリスクが生じます。日本企業が保有する権益に対し、「環境アセスメントで問題あり」など難癖をつけて取り上げることが考えられます。
 友好国であっても法人税率をどんどん高めることで実質的に利益を取り上げられてしまうこともあります。INPEXも既に海外事業で高率の法人税を取られています。

【2】脱炭素が進むことに伴うリスク

 世界中で、脱炭素に向けた取り組みが進む中、化石燃料ビジネスを展開する企業は、「環境税」などのペナルティを科せられるリスクがあります。これに対し、INPEXは2050年のCO2排出ゼロを目標としてさまざまな取り組みをしていますが、その効果が出るにはかなりの年数を要します。
 ただ、上記に挙げたリスクを勘案しても、先に解説した六つのポイントから、INPEXに投資する価値は高いと判断しています。

 ご参考まで、同社の2014年3月期以降の業績推移を以下に掲載します。

INPEXの売上高・営業利益・当期利益推移:2014年3月期(実績)~2023年12月期(会社予想)

出所:同社決算資料より作成

 INPEXの営業利益は2014年3月期に最高益を更新した後、長く低迷が続きました。天然ガスや原油市況の下落に加え、インドネシアやオーストラリアの海底ガス開発投資が重い負担としてのしかかりました。

 2022年12月期にINPEXの営業利益は9期ぶりに最高益を大幅更新しました。天然ガス・原油市況の大幅上昇に加え、インドネシアやオーストラリアでの先行投資が実って、生産が増えてきた効果が一気に出ました。

 今期(2023年12月期)は、天然ガス・原油市況の反落で、大幅減益ですが、利益は高水準です。今後、生産量拡大が続けば、将来的にまた最高益を更新していく余地があると、私は判断しています。

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