産油国の言い分「消費国のガソリン価格高は、産油国だけのせいではない」

 バイデン米大統領は、10月31日に閉幕したG20で、サウジアラビアとロシアに原油の増産を促したと報じられています。また、「1ガロン3ドルを超えると通勤だけでも家計に影響がでる」と、コメントをしたとのことです。原油高を抑制し、景気回復を加速させると同時に、低迷する支持率を回復させる狙いがあると、言われています。

 そのバイデン氏は、同じG20で、中国とロシアの気候変動対策が不十分だと、不満を述べたとのことでした。

 バイデン氏は産油国に、原油高を抑制すべく、増産をさせたいのか、温室効果ガスの排出を削減すべく、消費国に消費量の削減をさせたいのか(≒生産国に生産量の削減をさせたいのか。生産量は消費動向に応じて調整される)、焦点が定まってないように見えます。

 原油高抑制のための増産要請は短期的施策、温室効果ガス排出削減のための消費削減要請(≒生産削減要請)は長期的施策と、切り分けはできますが、これらを聞いた産油国側は、同じ人物が同じ会合で述べる言葉なのか、という疑問を呈さずにはいられなかったでしょう。

 このように、G20では消費国寄りの言葉が並べられたわけですが、産油国側は今、何を考えているのでしょうか。

 足元の、産油国側の一つの象徴的な動きに、「OPEC(The Organization of the Petroleum Exporting Countries:石油輸出国機構)」と「GECF (The Gas Exporting Countries Forum:ガス輸出国フォーラム)」の連携強化が挙げられます。

 OPECの資料によれば、G20開幕の3日前にあたる10月27日、昨年11月に続き2回目となるOPECとGECFの合同の会合が行われました。同会合の主催者はGECFで、GECFの事務局長はロシア政府でエネルギー関連の要職を務めた人物(ユーリー・センチュリン氏)です。

 会合では、石油と天然ガスが、今後も世界経済の発展のために重要な役割を果たすこと、今後も両組織が緊密に連携することなどが、話し合われたとのことでした。

 また、会合では「the prevalent reductionism and the cancel culture」(過度な単純化と、一要素だけに着目して、存在すべてを否定する考え方のまん延)という文言が用いられました。

 前後の文脈から、この文言は、世界中で「今すぐ脱炭素推進」→「今すぐ石油・ガス不要」→「即、産油国・ガス生産国悪」のような考え方がまん延していることを指していると、考えられます。

図:OPEC と GECF

出所:OPECの資料より筆者作成

 世界的大合唱となっている「脱炭素」が独り歩きをし、必要以上に、石油とガスが否定されていないか、冷静な検証が必要であると、彼らは警鐘を鳴らしているのでしょう。

 筆者が前回、「年内の価格見通し。金(ゴールド)、原油、銅が「脱炭素」で値上がりするワケ」で書いた通り、「脱炭素」には負の面もあります。

 ある意味、方向性が定まらないバイデン氏の発言は、消費国とて「脱炭素」を明確に定義づけられていないことを浮き彫りにしていると言えるでしょう。その意味では、現在の原油相場の動向のカギを握るのが産油国で、産油国次第で原油相場が動く、とする考え方は、説得力に欠けると感じます。