日銀利上げで、有利子負債が少ない高配当利回り銘柄に注目!

 日銀ではマイナス金利政策を解除し、金融正常化の方向に向かい始めますが、短期的にはこうした政策変更によって、物色の方向性に変化が生じていくかが注目されます。

 市場での織り込みは進んでいますが、今後の一段の利上げなどを警戒する動きが強まる可能性もあり、いったんは日銀の政策修正によるマイナスの影響が大きいとみられる銘柄などには手控えムードが強まる公算もありそうです。有利子負債の水準が小さい銘柄、円高への動きを警戒し海外売上比率の相対的に低い銘柄などに関心を移す場面でしょう。

 なお、3月の配当権利取りが終了することで、高配当利回り銘柄に関しては、新年度の減配懸念が小さい銘柄を選好すべきでしょう。

 3.5%以上の配当利回り(2024年3月期ベース)がある銘柄の中で、有利子負債自己資本比率が低い銘柄、海外売上高比率が低い銘柄を、楽天証券のスーパースクリーナーでスクリーニングしています。また、こちらは東洋経済予想になりますが、新年度の配当水準が前期比で減配になるとみられている銘柄は除外しています。

(表)日銀政策修正によるデメリットが小さいとみられる高配当利回り銘柄

コード 銘柄名 配当利回り
(%)
3月18日終値
(円)
時価総額
(億円)
有利子負債
自己資本比率
(%)
1719 安藤ハザマ 4.90 1,225.0 2,217 17.16
8130 サンゲツ 4.24 3,300.0 1,953 8.98
4041 日本曹達 3.98 6,030.0 1,733 19.11
4471 三洋化成工業 3.94 4,310.0 1,014 7.00
1662 石油資源開発 3.85 6,500.0 3,529 0.12

銘柄選定の要件

  1. 配当利回りが3.5%以上(3月18日現在)
  2. 時価総額が1,000億円以上
  3. 海外売上高比率が50%以下
  4. 有利子負債自己資本比率が30%以下
  5. 新年度(2025年3月期)配当予想(東洋経済予想)が減配除く

厳選・高配当銘柄(5銘柄)

1 安藤ハザマ(1719・東証プライム)

 中堅ゼネコンの一角で、トンネルやダムなどの大型土木工事に実績が豊富です。2013年4月に安藤建設とハザマが経営統合して現体制になっています。中山競馬場観覧スタンドや黒部ダムなどの施工実績があり、現在はリニア工事で多くの実績を上げているとみられます。

 2023年3月期個別受注高ベースでの海外比率は7.9%の水準です。2025年度までの中期計画では、総還元性向70%以上を目標としています。

 2024年3月期第3四半期(4-12月期)営業利益は99億円で前年同期比26.8%減となっています。一部利益率の低い建築工事などが進捗(しんちょく)したことによって、完成工事総利益率が低下しています。

 一方、2024年3月期通期予想は205億円で前期比3.3%増の見通しです。国内土木の底堅い需要が見込めるほか、建築では物流倉庫や生産施設、リニューアル案件などの需要が見込めるようです。

 第3四半期末段階での工事繰越高は4,908億円で、2024年3月期通期売上見通しの4,000億円を上回る水準になっています。年間配当金は前期比20円増の60円を計画しています。

 予想配当利回り4.9%(3月18日現在)の水準は、上場している大手・中堅ゼネコンの中でトップとなっており、利回り妙味は高い状況です。高水準の受注残高や中計期間中における総還元性向70%以上目標から、2025年3月期の配当も高水準が続くものと考えられるでしょう。

 なお、2024年3月期業績には下振れ懸念も残ることで、下方修正のタイミングなどは格好の押し目買いポイントになり得ると捉えておきたいところです。

2 サンゲツ(8130・東証プライム)

 住宅、オフィス、商業施設などの壁装材、床材、カーテンなどのファブリックを取り扱うインテリア内装材のトップシェア企業です。壁紙では国内シェア約5割。住宅の門扉や家庭用フェンス、カーポートをはじめ、学校などの公共施設や商業施設にも展開するエクステリア事業、北米、東南アジア、中国・香港などへの海外事業も行っています。

 国内向け製品は約1万2,000点にのぼります。創業約170年、上場以来40年以上連続での黒字経営となっています。2023年3月期の海外売上高は12.3%の水準です。

 2024年3月期第3四半期(4-12月期)営業利益は149億円で前年同期比2.4%増となっています。壁装材・床材などの主要商品は着実なシェアアップに伴う数量増が図れ、売上高が二桁増となっていますが、一部原材料の値上げによる仕入価格上昇および物流コスト増、廃番商品評価減発生などで利益率はやや低下しました。

 2024年3月期通期予想は従来の185億円から200億円、前期比1.4%減に上方修正。販売数量の想定以上に堅調な推移が背景となるようです。年間配当金も従来計画の135円から140円に引き上げ、前期比35円の増配となります。

 住宅着工戸数が低迷する環境下において、着実に国内インテリア事業の売上が拡大していることはポジティブに評価できます。また、チェーンの飲食やホテルなどこれまで弱みであった非住宅分野において、専門部署設置などの対策が奏功していることも注目ポイントになります。

 配当金を中心とした株主還元姿勢なども高評価、2024年3月期は10期連続での増配予定となっていますが、とりわけ、2022年3月期以降は増配のペースが速まっています。2026年3月期までの中期経営計画期間中は130円を下限配当と位置付けています。