<指数パフォーマンス比較~バリュー株orグロース株どっち優勢?~>

4月の中小型株は「大型株が逆流、ここでもグロース劣勢」

 4月は中小型主要指数が全て月間でマイナス、これは今年初のことでした。3月に史上最高値を4万円台に切り上げた「強い日経平均株価」でしたが、その根幹である日経平均も4月はマイナス4.9%安(1,963.78円安)と、2022年12月以来の大きな下落率に。

 とはいえ、日経平均爆上げ時に、中小型株は完全に乗り遅れましたよね。日経平均の上昇には置いてきぼりだったのに、日経平均の下落にだけ付き合うって…。

 地合い悪化は日米同時に進みましたので、海外投資家の利食い売りが本国市場の地合い悪化に伴い加速し、それが日本株市場にも同様の投資行動として表れたものと解釈できます。月初の株売り材料は中東情勢リスクでした。

 その後は、米経済指標の内容から利下げ観測が後退し、米長期金利が上昇。昨年の夏から秋にかけての金利上昇に伴うグロース株壊滅地合いを思い出させる展開ともいえました。

 金利上昇のタイミングに重なったのが、市場をけん引していた大型グロース株の雄「半導体株」の総崩れでした。先に決算発表した海外の半導体企業のガイダンスが物足りないとの見方が伝染し、東京エレクトロン、アドバンテストなど個人投資家に人気の半導体株が急降下(これが日経平均押し下げ役にもなりました)。

 この局面で起きたのが、これまで乗り遅れていた個人投資家による「逆張り買い」でした。大幅下落の場面で絶え間なく逆張り買いが入り、「安く買えた」はずの押し目買いポジションが蓄積。

 ただ、山高ければ谷深し…「安く買えた」はずのポジションは「安くなかった」格好となり、後で買った投資家の買いポジションのロスカットまで巻き込みながら、需給悪化の負の連鎖に。個人投資家の損益状況の急激な悪化は、個人投資家メインの中小型株市場は回避できません。

 4月の中小型株下落はファンダメンタルズではなく、投資家心理が悪化したことが最大の要因だったと思われます。

4月末時点の信用買い残TOP10

コード 銘柄名 信用買い残
(億円)
4月
騰落率
8306 三菱UFJ FG 1,080 1%
6526 ソシオネクスト 848 11%
6920 レーザーテック 817 -17%
8035 東京エレクトロン 760 -11%
8316 三井住友FG 680 1%
9984 ソフトバンクG 638 -12%
6857 アドバンテスト 609 -27%
9501 東京電力HD 566 5%
7203 トヨタ自動車 559 -4%
7011 三菱重工 548 -2%

 また、月末にかけて決算発表が増加する時期。ここでも、増配や自社株買い、株主還元の強化策を打ち出した企業に対する株価リアクションが良好でした。手持ちの資産(政策保有株や不動産)を切り売りし、それで生み出したキャッシュを配当に回してくれる企業が好まれているということ…そんな企業、中小型グロース株にはほぼ皆無ですよね。

 日本株全体の地合いが悪化した4月相場でしたが、その中にあっても中小型グロース株が劣勢だったのには、そんな背景もあったように思われます。

新NISAで中小型株!今月の銘柄アイデアは…「セルインメイの裏に道あり!?」

 株の世界では「セルインメイ(5月に株を売れ)」なる相場の格言が有名ですが、その「売れ」とされる5月に入りました。この辺りから夏場にかけて相場が崩れ、その後から年末にかけて持ち直すことが多いという経験則があるそうで、この格言は「カムバック・イン・セプテンバー(9月に戻ってこい)」に続きます。

「ここらで一回売っておいた方がいいのか?」なんて気にもさせる格言ですが、実際どうなんでしょう? グロース250(旧マザーズ)指数の過去5年間の6~9月の月間騰落率を並べてみたので眺めてみてください。

 5月に株を売った直後の6月は、指数のパフォーマンスが堅調であることが分かります。ここだけ見ても、「セルインメイ」に釣られて売らなきゃ良かったと言えそうなトラックレコードです。この期間でパフォーマンスが悪いのは7月で、パフォーマンスが好転するのは8月という傾向も見えます。2020年、2021年は「6月堅調→7月軟調→8月好調」でした。

 ここ数年の中小型グロース市場は、市場が調子付いても、その後の「利益確定売りモード」に切り替わるスパンが短くなっている印象があります。この抜き出した期間でも3カ月連続で上昇、なんて場所はありませんよね。グロース250指数が3カ月連続で上昇したのは、さかのぼってみても「2020年4~6月」を最後に4年間も発生していません。

 これは、(パフォーマンスが悪すぎる影響もありますが)長期で保有する投資家が激減したこと(=売買の短期化が進行)、そしてハイボライベントとなる3カ月に1回の決算発表が鬼門となっていること(=発表の手前で売る、発表直後に簡単に売るなど決算に対しても近視眼化)が影響しているのではないでしょうか。

「セルインメイ」の直後、6月のパフォーマンスが安定している理由には、5月中旬の決算発表シーズンを通過した後(決算発表ストレスが消える)であることも要因かもしれません。この5月も連休明け後、15日にかけて、中小型株の決算発表は相次ぎます。

 指数でいえば、スタンダード市場指数は年初来で7%上昇、グロース市場指数は7%下落と正反対の株価パフォーマンスでここまで来ています。簡単にいえば、バリュー株(低PBR(株価純資産倍率)株)は堅調で、PER(株価収益率)が高いグロース株は軟調ということ。中小型グロース株でいえば、含み損を抱えて決算を待つという投資家が多いのが実情です。

 そうなると、「需給が悪い」という、ファンダメンタルズとは関係ない理由で決算発表後の株価パフォーマンスがネガティブに振れる可能性も高いと意識すべき(好決算でも戻り売り圧力に押されて鈍い上昇反応になる、など)。

 この決算発表という鬼門イベントの通過を見届けてからのアクションで遅くはないでしょう。そのアクションは、「セルインメイ」に倣って「売る」ではなく、安いところを「買う」という選択肢も悪くないと考えます。

 というのが、今に似た状況は、昨年の安値を付けた10月後半に一度経験しているため。当時も、米長期金利の上昇を売り要因としながら株価が下落。終盤は需給が悪化しながら、「決算発表に注意」という合言葉のまま余計に警戒感が高まりました。

 結果、売買が減少してきました(中小型グロース株は下がり続けるから撤退しよう!というムードが高まるため)。その後はどうだったか?といえば、米金利の上昇が一服してリバーサルムードが高まったときに、不人気化していたことが奏功して売り圧力が小さく、かなり大きく反発しました。

 米金利の上昇一服はチェックしていくしかないですが、当時と同様に中小型グロース株が不人気化している点は朗報かもしれません。東証グロース市場の4月の1日当たり売買代金は1,219億円と、1~3月平均(1,635億円)比で25%も減少しています。

 今年の最低売買代金は4月30日の779億円でした。中小型グロース株の不人気化はすでに極まりつつある点は、ここからエントリーする上で魅力にも映ります。

 今回は、ここまで不人気化する過程で、需給要因(ファンダメンタル度外視)で下値を切り下げた銘柄を「逆張り」発想で注目してみます。ただし前述の通り、「業績は悪くない」のに、「需給の悪化」で株価が下がり、「不人気化」が極まりつつある銘柄という条件がここでは重要です。この条件を満たす時価総額100億円以上の銘柄は…全体で以下の11銘柄でした。

 人の行く(セルインメイ)裏に道あり花の山?

需給悪化で成長度外視で売られた中小型グロース株
【条件】
(1)売買代金が減っている(25日MA<13週MA)
(2)株価が年初来マイナス
(3)今期予想増収率、営業・最終増益率いずれも10%以上
(4)予想PERが低い(20倍未満) ※時価総額大きい順

コード 銘柄名 予想PER
(倍)
年初来騰落率
7095 Macbee Planet 17.6 -29%
7047 ポート 16.4 -16%
9341 GENOVA 15.5 -19%
9163 ナレルG 11.9 -7%
7683 ダブルエー 12.9 -18%
4376 くふうカンパニー 17.3 -22%
7317 松屋R&D 16.6 -7%
7320 日本リビング保証 15.4 -7%
5139 オープンワーク 19.6 -25%
7061 日本ホスピスHD 13.4 -37%
7374 コンフィデンス・インターワーク 14.1 -1%