<指数パフォーマンス比較~バリュー株orグロース株どっち優勢?~>

2月の中小型株ハイライト「日経平均[史上最高値]狂騒の舞台袖で…」

 2月22日、その時が訪れました。1989年12月29日という34年も前に付けていた日経平均株価のザラ場ベース最高値(3万8,915円87銭)をついに更新。バブル高値なる途方も無い高値と思われていた値段を上回ったことで、呪縛から解き放たれ、「ここからがスタートライン」なる声も多く出るようになりました。

 地球上で最も重要な銘柄とされるエヌビディアの超絶好決算(時間外での株価急騰)を受け、エヌビディア株と相関の強い東京エレクトロンやアドバンテストなど日本の半導体株が急騰。半導体株ラリーが日経平均を持ち上げているだけ、という最高値に沸く日本株市場の日常…。

 ただ、この展開と日本の中小型株は本当に相性悪し。日経平均が836円高(2.2%高)した2月22日、東証スタンダード指数は0.6%高にとどまり、東証グロース指数にいたっては0.4%安とまさかの逆行安でした。

 この日の日経平均の値上がり寄与度は、東京エレクトロン、アドバンテスト、ソフトバンクグループ(ARM株大量保有)、レーザーテック、スクリーンの半導体関連5銘柄だけで474円と、日経平均の上昇幅の6割弱に相当。半導体関連株が少ないスタンダード市場、半導体株が皆無のグロース市場は当然蚊帳の外というわけです。

 さらには日経平均に関しては、高値圏で残るショートポジションが、半導体株ラリーに誘発されて買い戻されるという需給要因が加速します。そうした踏み上げの展開に一切持ち込めないのが中小型株市場…。

 半導体株に商いが集中する展開にめっぽう弱い特性が見られる一方、半導体株が上昇一服すると、相対的な力強さが見られ始めたことは収穫でもありました。世界が注目したエヌビディア決算の手前、半導体株ラリー小休止のタイミングで、東証グロース250指数が2月9~19日まで6連騰。

 出遅れ株物色で中小型のバリュー株に向かっただけでなく、グロース株や直近IPO(新規公開株)などへ物色が拡散しました。東証グロース市場の売買代金も、2月14日から5日連続で2,000億円超え。ただ、これも前述の通り、日経平均の爆上げ再開後に沈静化してしまいましたが…。

【東証グロース】2月の月間騰落率上位10

コード 銘柄名 2月
騰落率
予想PER
(倍)
9235 売れるネット広告社 344% 85.4
5892 yutori 103% 43.1
3542 VEGA 89% 27.5
6177 AppBank 86% -
9343 アイビス 82% 16.2
5595 QPS研究所 79% -
7069 サイバー・バズ 78% 34.1
5240 monoAI technology 68% -
5588 ファーストアカウンティング 62% 39.6
7066 ピアズ 60% 23.9

 時価総額の小さい超小型株に関しては、会社側が出した材料に対して「なんでこんな上がるの?」な強反応を示す事例が続出。決算発表シーズンだったこともあり、yutoriやVEGAなど決算で評価を高める銘柄も上位に。また、エヌビディアが中心の的だったこともあり、派生して生成AIに関連する銘柄が最注目テーマともなりました。

新NISAで中小型株!今月の銘柄アイデアは…「3月の高配当株~中小型株バージョン2024~」

 3月に月が替わりましたが、直後も「半導体株ラリー→日経平均爆上げ」という中小型株にとって面白くない組み合わせからスタートしました。1日の日経平均は744円高で4万円の大台に肉薄。一方で、東証グロース250指数は1.1%安、売買代金も1,584億円と低調という「同じ日本株なのにヒドいよ…」な切ない展開となりました。

 生成AIをテーマとした半導体株ブームがどこまで続くか? は誰にも分かりませんが、エヌビディア株の上昇トレンドは強く、人気のスーパー・マイクロ・コンピューター株がS&P500種指数への採用が決まるなど株価への追い風が続いています。

 半導体株ラリーの天井当てゲームのようにもなっていますが、上昇が続く以上は日本の半導体株が崩れる理由も無く、そうなれば日経平均も4万円台からの上値を伸ばす展開になるはず。

 半導体株ラリーの中にあっては、脇役でしかない中小型株に大きな資金が広がる展開は考えにくいところ。エヌビディア株に一蓮托生(いちれんたくしょう)な日経平均ですが、中小型株については「エヌビディア株の上昇一服による物色シフト待ち」といった立ち位置に変化は無さそうです。

 ここは状況を横目で見ながら…としか言えないため、3月ならではの注目イベントを確認しておきましょう。

 まず、イベントとしては、マイナス金利解除の思惑が強まっている日本銀行会合3月18日、19日に開催されます。マイナス金利解除となると、円高/株安の初期反応は想定されますが、バリュー株の多い東証スタンダード銘柄などには無風と言えそう。

 日本の金利上昇要因となるため東証グロース銘柄にはマイナスにも見えますが、金利上昇ペースは極めて緩やかと想定され、影響は軽微でしょう。

 個人的に最も注目しているのは、大物運用会社による「小型株ファンド」の話。2月16日に独立系運用会社大手のレオス・キャピタルワークスが小型株特化の新ファンド「ひふみマイクロスコープpro」設定を発表しました。この日、東証グロース250指数が今年最大の3.8%上昇を記録したのですが、小型株に投資信託経由の資金マネー流入を期待した面もあったと思われます。

 3月5日から募集を始め、3月19日の運用開始を予定しているようです。どの程度の当初資金が集まるかは分かりませんが、数百億円規模で集まれば、その分は全て小型株にとっての「買い越し要因」となります。募集が順調などと観測されれば、レオスがすでに5%ルール報告をしている銘柄などに組み入れ期待が広がりそうです。

レオス・キャピタルワークス5%ルール報告済み小型株

コード 銘柄名 保有割合 報告日
5254 Arent 6.39% 2024年2月22日
3193 鳥貴族HD 6.38% 2024年2月7日
6315 TOWA 5.44% 2024年2月7日
3498 霞ヶ関キャピタル 8.89% 2024年1月31日
2462 ライク 7.22% 2023年11月22日
2884 ヨシムラ・フードHD 5.03% 2023年11月8日
4023 クレハ 5.02% 2023年9月15日
3951 朝日印刷 5.87% 2023年8月22日
9158 シーユーシー 5.50% 2023年7月7日
※小型株の定義は時価総額3,000億円未満とする
※3月1日時点、青の網掛けはスタンダード、ピンクの網掛けはグロース

 そして、3月ということもあり、権利付最終売買日(3月27日)にかけて高配当株物色が目立つ場面もあるでしょう。今年は新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)で枠が拡大したばかりということで、高配当株での枠消化に動く個人投資家も多そう。配当の非課税メリットを享受するためには、1回でも多く配当をとったほうが有利との意識が働きます。

 ということで今回は、新NISAの成長投資枠にもおすすめの3月高配当株を、中小型株に絞ってスクリーニングしてみます。対象は東証スタンダード、グロース銘柄としましたが、高配当株はスタンダードに集中しており、抽出されたのはスタンダード銘柄だけでした。

3月期末配当利回り2%以上!割安中小型株
【条件】(1)予想PER15倍未満、PBR1倍未満
(2)今期最終増益率10%以上
(3)売買代金25日移動平均0.5億円以上
(4)時価総額100億円以上
※期末配当利回りの高い順

コード 銘柄名 期末
配当
利回り
3月期末
配当
(予想)
7991 マミヤOP 4.5% 75
6927 ヘリオステクノHD 4.3% 25
6675 サクサHD 4.1% 135
1972 三晃金属工業 4.0% 200
7927 ムトー精工 3.6% 75.5
3526 芦森工業 3.5% 100
3611 マツオカコーポレーション 3.2% 50
7971 東リ 3.1% 12
2112 塩水港精糖 3.0% 9
4231 タイガースポリマー 2.7% 30
4972 綜研化学 2.6% 85
8291 日産東京販売HD 2.5% 13
6882 三社電機製作所 2.4% 40
6863 ニレコ 2.3% 39
7018 内海造船 2.2% 100
5013 ユシロ化学工業 2.2% 50
7122 近畿車輛 2.0% 50

 3月期末配当を予定している3月決算企業を対象に、よく見かける高配当株ランキング…というわけですが、一定の流動性を有する中小型株(時価総額100億円以上、売買代金24日移動平均0.5億円以上)を対象としたものは珍しいかもしれません。今回は3月の期末配当ですので、会社が予想する期末配当をベースに利回りを計算しました。

 期末配当分だけで配当利回りにして2%を超える高配当株で、かつ割安(予想PER(株価収益率)15倍未満、PBR(株価純資産倍率)1倍未満)な銘柄で、さらには減配リスクが怖いため「今期最終増益率10%以上」という条件も加えると…スタンダード、グロース市場の全銘柄でも17銘柄だけに絞られました。

 期末配当分だけで4%超の利回りとなるマミヤOP、ヘリオステクノ、サクサなど、期末に一括で配当を出す会社であることが理由です。なお、配当分については理屈上、権利落ち日に株価が値下がりします。

 ただ、高配当株を高利回り時に新NISAで買っておき、長期保有で配当分のメリットを享受する…これは本当にお勧めできる投資法ですので、株価上昇で利回りが低下した大型の高配当株が多い中、減配リスクの低い中小型の高配当株もアクセント的に投資対象としてみてはいかがでしょう?