クイズの正解は:1株当たり利益が●して、■%上がる

 正解は【3】。発行済み株式総数の約10%の自社株買いを実施すると、株価は理論上、約11%上昇します。

 A社は、「発行済み株式総数の10%に当たる4億1,700万株を上限として自社株買いを行う」と発表しました。この自社株買いが、株主にどのくらいのメリットを生むか、おおよその見当を付ける方法を、お教えします。

 A社が発表した自社株買いが上限いっぱいまで実行されると、A社の発行済株式総数が10%減ります。すると純利益の額が変わらなくても、1株当たり利益が約11%増えます。PER(株価収益率、株価が1株当たり純利益の何倍になっているかを示す指標)での株価評価が変わらなければ、株価は約11%上昇することになります。

 簡単な例えで計算してみましょう。A社の利益総額を100億円、発行済み株式総数を1億株とします。すると、1株当たり利益は、100億円÷1億株=100円です。

 ここで、A社が発行済み株式総数の10%(1,000万株)の自社株買いをしたとします。すると、発行済み株式総数は1,000万株減少して、9,000万株となります。1株当たり利益は、100億円÷9,000万株=約111円となります。

 従って、1株当たり利益は、100円→111円と約11%上昇します。

自社株買いのメリットの目安

 自社株買いの発表があった時、株主へのメリットはどれくらいか、目安は以下の通りです。

 自社株買いを上限まで実施するとしたら、発行済み株式総数の何%減少するのか、株価がその減少分に応じて理論上、上昇すると考えれば良いです。

 例えば、発行済み株式総数の2%を上限とする自社株買いの発表があれば、株主へのメリットは、約2%と考えれば良いことになります。

 ただし、注意事項があります。自社株買いは、必ずしも上限まで実施するとは限りません。自社株買いをこれまでいつも上限までしてきた企業については、上限までする可能性が高いとは言えます。

配当金と自社株買い、株主にとってどっちが良い?

 次の【1】と【2】で、株主にとってメリットが大きいのはどちらでしょうか?

  1. 配当利回りで2%に相当する配当金を出す
  2. 発行済み株式総数の2%に相当する自社株買いをする

【1】と【2】で会社に必要な資金はほぼ同じです(自社株買いのマーケットインパクトをゼロと仮定した場合)。ところが、株主にとってのメリットは【2】自社株買いの方が大きいと言えます。

 株主が2%の配当金をもらうと、配当金から源泉税などの税金が引かれます(NISA (ニーサ:少額投資非課税制度)などの非課税投資口座を使わない場合)。得られた配当金で投資を続ける場合は、改めて株を買い直す必要もあります。

 一方、2%の自社株買いで理論通り、約2%株価が上昇する場合は、株主はすぐに税金を取られることはありません。売却して売却益を確定させない限り、税金はかかりません。いつ売却して税金を払うか、株主に選択権があります。再投資する手間もなく、そのまま複利で投資を続けられます。

 従って、株主にとって、配当金より自社株買いの方が本当はありがたいのです。それが分かるから、米国の大手ハイテク企業では、株主への利益還元は自社株買いだけで行い、配当金はなしにしているところも多数あります。