2024年におけるS&P500の上値余地と下値余地を試算
本稿では2024年におけるS&P500種指数の想定レンジを試算します。図表2は、筆者が参考にしている株価予想モデル(予想益回りスプレッド=S&P500の予想益利回り(予想PER(株価収益率)の逆数)と長期金利(10年国債利回り)の差から試算したフェアバリュー・レンジを示しています。
レンジが右肩上がりだったのは、S&P500の業績見通し(予想EPS(1株当たり利益))が成長してきたからです。このモデルをもとにした現時点の「ベストシナリオ」(上値余地)は5,521、「リスクシナリオ」(下値余地)は4,199と想定できます。S&P500の直近値は4,704です(1月3日)。
大統領選挙サイクルと株価に関するアノマリーによると、平均的に選挙前年(昨年に相当)に米国株は最も高くなりやすく、選挙年(本年に相当)が次に高くなりやすい経験則があります(Stock Trader’s Almanac 2024)。物価が沈静化に向かい景気が減速を続けると、FRBはピボット(金融政策の転換)に沿い予防的な利下げを実施。長期金利は一段と低下して株式バリュエーションの改善が見込めます。
景気のソフトランディングが示現し、「生成AI」の収益化に対する期待が確信に変化することも株式堅調を支えると見込めるでしょう。今年のS&P500の目標値として、まずは史上最高値を上回る5,000超を想定してます。
一方、リスクとして、物価高止まりや長期金利再上昇(株式バリュエーション悪化)、景気後退入り、中東情勢など地政学リスクを受けた原油相場上昇、ワシントンリスク(債務上限問題再燃や大統領選を巡る不確実性)、中国リスク(不動産市況低迷と中国景気鈍化や米中対立激化による対中ビジネス減退)などが顕在化すると、株式市場は下落しやすいので要警戒です。