OPECプラスの思惑

「市場の常識は変わった」「市場の常識は今後も変わる」という観点で言えば、現在の状況を分析したり、今後の価格動向を考えたりする時に、過去の常識に固執する行為は誤りでしょう。参考にすることはあっても、決定的なよりどころにはしてはならないでしょう。

この点を踏まえながら、1970年代に2度発生し、「狂乱物価」を演出した「オイルショック」が今後、起きる可能性があるかについて、考えます。オイルショックは、ある意味、消費国が不当に安い価格で資源を搾取していた中で起きた、産油国による反乱だったと言えるでしょう。

「メジャー」と呼ばれる欧米の石油会社が、中東などの石油の資源を安い価格で独占していたことに対抗し、中東の産油国が中心となり1960年にOPEC(石油輸出国機構)という産油国のグループを作り、自らの意思で自らが生産する原油の価格をつり上げたことが、オイルショックのきっかけでした。

 産油国の「自らの意思で自らが生産する原油の価格を決定したい」という思いは、今も昔も大きく変わらないでしょう。石油以外の産業に乏しい産油国であればあるほど、です。

 先述の、「存在することには変わらないが、度合いが大きくなった要素」に、産油国のこうした思いが当てはまると、筆者は考えています。要因は「脱炭素」です。「石油は使わない方がよい」「石油を扱う企業は評価されない」など、脱炭素ブームが産油国を取り巻く環境に、強烈な逆風となっています。

 石油に対する逆風の大合唱は、米国でも日本でも欧州でも、ほとんどの主要国で起きています。石油の州で名高い米国のテキサス州に、米IT関連企業の拠点の移転・増設が進んでいることは、どこか、世界が本格的に石油に見切りをつけはじめたことを象徴しているように、感じます。(オラクルの本社移転、アップルの第2拠点設置、テスラの新工場設置など)

 こうした中、OPECプラス(OPEC加盟国13カ国とロシアなどの10の非加盟国、合計23の産油国の組織)は、今後、どういった方針で進んでいくと考えられるのでしょうか。

図:予想される OPECプラスの今後の戦略

出所:筆者作成

「脱炭素」がブーム化した今、高い確率で世界の石油需要は減少するとみられます。こうした中で、産油国が実現しなければならない点は、以下の3つでしょう。

1.生産量の削減を最低限にとどめること。 収益源の一要素「量」の維持

2.単価(原油価格)を上昇させること。 収益源の一要素「単価」の向上

3.市場への影響力を高めること。 生産シェアの維持・拡大

 この3点を実現するために行うことが想定されるのが、1.基本的に、生産量を元に戻すために増産をする、2.増産を感じさせない増産を実施する、3.「アナウンス効果」を巧みに使う、です。