【問4:答え】なぜ、「必要性の低下」が相場に上昇圧力をかける可能性があるのか?

【答4】1.売り手の意向が、市場に反映されやすくなるため。
(筆者が考える、正解に近い回答です)

 世界的に「脱炭素」が大きく進んだ時、石油の消費量は激減していると考えられます。とはいえ、大きな動力を必要とする大型の航空機や船舶では一部、化石燃料が使われているかもしれません。また、ワクチン接種に必要な注射器や医療従事者の方がまとうガウンなど、必要不可欠な石油由来の製品はまだ、存在しているかもしれません。

 先述のとおり、米国のエネルギー内訳でガソリンは45%でした(2020年)。米国で走る自動車すべてが電動になったとしても、石油の消費はゼロになることはありません。ガソリン以外の石油の消費をゼロにできるか? が、自動車の議論の次のステージ(「脱炭素2.0」とでも言うでしょうか)に突き付けられる問いでしょう。

 脱炭素2.0でも、原油の需要は、減少したとしてもゼロにならない、一定程度残る、と考えるのが自然であると、筆者は考えています。

 このことは、超長期的に、原油市場が、買い手(実需)が少ない市場に変貌し、売り手(産油国など)が一方的に価格を決める環境になる可能性を高めていると、考えられます。(実需の話であり、先物市場における現物の受け渡しを伴わない買い手や、原油価格に連動する金融商品の買い手が減少すると言っているのではありません)

「買い手」は価格が安いことを望みます。「売り手」は価格が高いことを望みます。この原理でいえば、売り手が一方的に価格を決めた場合、価格は上昇することになります。この意味で、問4の答えを、1.売り手の意向が、市場に反映されやすくなるため、としました。

 超長期的に原油市場において、経済の常識である、需要供給バランスと価格の関係が、「脱炭素」をきっかけとした需要減少によって、成り立たなくなる可能性があることは、同市場の今後を考える上で、認識すべきことだと考えます。