高配当株を長期運用し、会社員と兼業ながらも資産1億7,200万円を達成したなのなのさん。年間の配当利益は512万円と日本人の平均給与を上回ります。

 大学生の時に株を始めるも毎年赤字が続きました。転機は投資手法を模索したとある実験。その後の投資手法が固まり、資産は劇的に伸びていきます。兼業ながら株式で手堅く不労所得を得る方法とは? なのなのさんにお話を聞きました。

<なのなのさん プロフィール>
会社員兼業投資家。大学時代から株式投資を開始。資産1億7,200万円を実現。
初著書『月41万円の“不労所得”をもらう億リーマンが教える 「爆配当」株投資』も2万部を超えるなど好評発売中。

・セントラルマジカルアカデミー 株式錬金術専攻の兼業投資家

・中長期での高配当株投資がメイン

・メディア:ダイヤモンドZAi、日本経済新聞、日経マネー、SPA!などに多数掲載あり

X :なのなの@けんぎょう投資家

株式購入時のポイントとは

トウシル:高配当株を購入するときの、なのなのさんの基準について教えてください。

なのなのさん:三つあります。一つ目は配当利回りが4%以上であること。二つ目は売上と営業/経常利益が右肩上がりの企業であること。三つ目は株価が割高でないことですね。

 そして、セクターや業種は徹底して分散させています。ですから、株の購入時にはポートフォリオ上、手薄な業界の銘柄を積極的に買うようにしています。

 あと、最近は、東京証券取引所による「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請による経営改善期待から、PBR(株価純資産倍率)が1倍を割っている銘柄を優先的に買うようにしています。PBRとは、株価が割高か割安かを判断するための指標で、一般的にPBRが1倍未満の場合、株価は割安ととらえることができます。

トウシル:購入後に配当利回りが下がってしまった銘柄はどうされていますか。

なのなのさん:配当利回りが2.5%を下回った時は売却するようにしています。配当利回りは、1株あたり配当額÷株価×100で算出するため、分子である「株価」が上昇すると、配当利回りは下がっていきます。

 ですから、日経平均株価が4万円を超えた2024年3月末では、全体的に配当利回りは低下傾向にあります。購入時の配当利回りは4%以上だったけれど、今では2%台に下がったというような銘柄も増えてきています。主観が入ると合理的な判断ができなくなってしまうので、できる限り数字で判断してポートフォリオの入れ替えを行うようにしています。

資産のポートフォリオは株式が中心

トウシル:資産のポートフォリオの内訳について教えていただけますか。

なのなのさん:資産の約85%は株式ですね。その内訳は日本株の高配当銘柄と米国のインデックス投資が中心です。

 現在は、高配当株を中心に日米合わせて約400銘柄を保有しています。そのうち日本株は、できる限り幅広い業種に分散させ、1銘柄当たり10万〜30万円ほどの金額で、約320銘柄を保有しています。

トウシル:日本株以外に、米国のインデックスファンドに投資されている理由はなんでしょうか。

なのなのさん:バブル以降、長らく株価が停滞していた日本と比べて、米国は安定して力強く経済成長を続けています。安定的なパフォーマンスを確保するのであれば米国株かなと思って、購入しました。

 2020年ごろに米国の個別銘柄も結構買ったのですが、やはり米国株は日本株に比べて情報の取得や理解に難しさがあるので、最近はもっぱらインデックス投資ですね。日本企業であればIRを見れば情報がすぐ分かるのですが、英語だとその企業の状況や業界内での立ち位置など、肌感覚がなかなか分からないですね。

トウシル:それ以外の資産はお持ちですか?

なのなのさん:仮想通貨を少し持っています。約20万円、投資したのですが、現在は100万円ほどになりました。債券については国債と外国債の投資信託を持っていましたが、世界的な利上げ傾向により値上がりが期待できなかったことから2、3年前に全て売りました。

トウシル:一番パフォーマンスが良いのは?

なのなのさん:長期的に見るとやはり株式ですね。私のように、長期保有が前提であれば、現金を含むさまざまな金融商品の中でも、株式がパフォーマンス、安全性ともに優れているというデータがあります。そうであれば、わざわざ債券を買わずとも、株式を中心に買っておいた方がいいと思います。

仕事と投資、両立するコツは?

トウシル:仕事をしながら株式投資を並行して行うにあたり、まず「そのための時間がない」という方も多いと思います。株初心者のサラリーマンが株式投資を始める時にまずなにをしたら良いか、アドバイスをいただけますか?

なのなのさん:まずは一刻も早く、証券口座を開くことです! そして、余剰資金を入金して、何かしら、金融商品を買ってみることをお勧めします。最初は何を買えばいいのか分からない、という方は、まずは投資信託を買ってみてください。

 今買うとするならば、私も保有している「三菱UFJ-eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」、「楽天・米国高配当株式インデックス・ファンド」、為替が気になる方には「iFree 外国株式インデックス(為替ヘッジあり)」などから始めてみるのはいかがでしょうか。

 慣れてきたら、ご自身にとって身近な日本株にも挑戦してほしいです。どちらにしても、大切なポイントは、必ず余裕資金で投資をするということです。

トウシル:投資信託は保有しているが、なかなか個別株へ進めない人も少なくありません。そこから一歩踏み出すために、なのなのさんが思う「株式投資の魅力」を教えてください。

なのなのさん:株式投資を始めて、何らかの株を保有してみると、まずは世の中や経済の動きに敏感になりますし、関連する業界の動きやライバル会社の動向など、興味の対象が広がっていきます。

 例えば、街を歩いていても、この店はもうかっていそうだな、上場しているのかな、など、株価の動向も連動して観察する癖がつくと、楽しくなってくると思います。また、基本的に未来のことを考えるので、投資を始めると生き方もより前向きになってくると思います。 

 まずは投資信託を始めて値動きがある程度分かってきたら、日本経済新聞などを読んで、経済情報を追うことから始めても良いのではないでしょうか。いろんな企業(銘柄)の動向の中で自分の興味を引く企業を見つけて、そこの株を購入しても良いと思います。 

 ただ、基礎知識なしに楽をしてもうけようとすると、株式投資もギャンブルと変わらなくなってしまいます。投資信託はほったらかしでもいいのですが、株式投資に関しては勉強した時間が結果につながりやすいと思います。努力が報われることが増えてくると、株式投資はどんどん面白くなってきますよ。

トウシル:兼業投資家として、投資と仕事をどう両立させているのかを聞かせてください。 

なのなのさん:私にとって投資は「趣味」なので、時間を使うことは苦ではないのですが、それなりに生活の中の時間をうまく使って投資に振り分けています。まず、起床後のルーティンとして、米国株と日本株の先物指数をチェックします。

 その後、 テレビ東京の『Newsモーニングサテライト』を音声で聞きながら、楽天証券のMARKET SPEEDIIを立ち上げます。そこで日経テレコンから日経新聞を読んだ後、出勤します。仕事中は気にしても仕方がないので株価は見ません。

 ただ、昼休みと帰宅時の電車の中で株価とX(旧Twitter)のチェックはします。帰宅後、時間がある時は21時ごろから興味のある銘柄の調査や分析をします。そして、ちょうど米国株取引が始まる22時半ごろ、米国株の寄り付き(その日の最初の取引)を確認して就寝ですね。

トウシル:売買はいつ行うのでしょうか?

なのなのさん:大体、夜か昼休みに注文を出しますね。

トウシル:仕事中、値動きが気になったりしませんか?

なのなのさん:仕事中もずっと株価を気にするのは精神衛生上良くないと思っています。値動きを「見ない」ようにしています。そもそも、割安な高配当を買っているので長期で上昇するのを待つというのが基本スタイルです。なので、目先の株価の動きはあまり気にしないですね。

兼業投資家は人生の選択肢が増える最強の生き方

トウシル:なのなのさんの年間の配当収益は512万円とのことですね。日本人の平均年収以上を不労所得として得られていますが、何かご自身の生活に変化はありましたか?

なのなのさん:基本的にはありませんね(笑)。もともとぜいたくをする方ではないですし、投資の収益は株に再投資しているので、生活パターンは以前から変わりません。私にとって株式投資は趣味であり、ゲームのようなものなんです。

トウシル:不労所得を得たことで、メンタル面の変化はいかがでしょう。

なのなのさん:最悪、今、会社をクビになっても生きていけると思えるので、かなり安心感があります。「まあ、何とかなるだろう」と思うと、会社員ライフも、ストレスを感じにくくなります。その精神的余裕が投資にもよい相乗効果をもたらしていると思います。

トウシル:会社から給料を得ながら、投資収入もある兼業投資家は最強ですね。

なのなのさん:おっしゃる通りです。仮に株が暴落しても、働いていれば収入の道は確保できます。明日食べる分には困らない定収入がある、という点は、大きな安心感です。

トウシル:サラリーマン引退のタイミングも自分で決められそうですね。

なのなのさん:定年まで働くのがベストかどうかは人それぞれですが、投資をすることで人生の選択肢は広がるとは思います。FIRE(経済的に自立して早期退職する生き方)がブームになっていますが、個人的には、社会貢献や社会との接点という観点から会社員も捨てたものではないと思っています。

今後も変わらない生活スタイル

トウシル:これからの夢はありますか。

なのなのさん:資産額を10億円まで増やすこと…ぐらいでしょうか。資産を増やしてぜいたくしたいというより、 ゲーム感覚で投資をしているので、とりあえず10億円を達成したらゲームの10面をクリアくらいかなと思っています。おそらく資産が増えても、生活レベルは一生変わらないような気がしています。

トウシル:なのなのさんは最初から富裕層でもなく、元手も30万円からスタートし、「なんとなく時代」を経て今に至る、というのがとても勇気づけられました。特別なことをするのではなく、普通の人が普通にやれることですよね。

なのなのさん:はい、その通りです! 私にできることは皆さんにもできるはずです。最初は手探りでも失敗しながらでもいいので、とにかく「兼業投資家」という生き方を始めてほしいです。今抱えているストレスも軽減できるかもしれないし、人生の選択肢もきっと増えますよ!

トウシル:本日はありがとうございました!

>>前編「配当金は月約42万円!赤字から黒字転換の転機は?兼業投資家・なのなのさんインタビュー[前編]」を読む!