OPECプラスは原油市場における材料の一つに過ぎない。全体像を示す在庫動向に注目

 以下は、OPECプラスが(目を皿のようにして?)注目する、OECD(経済協力開発機構)石油在庫です。OPECのプレスリリースにおいて、このOECD石油在庫は、頻出キーワードです。

 OECDとは、第二次世界大戦後の欧州復興のためにつくられた組織で(当時は欧州経済協力機構(OEEC))、欧米を中心に、現在では38の国が加盟しています。

 1964年に日本が非欧米諸国として始めて加盟。後に、オーストラリア、韓国などが加盟しました。全体として、先進国と呼ばれる国々が多いのが特徴です。

 なぜ、OPECはこのデータを追うのか、それは、OECD諸国が、設立から60年超経過したOPEC諸国にとって長きにわたる重要な商売相手であり、世界経済をリードする国々だからでしょう。OECD石油在庫はそうした国々の石油の需給バランスの状況をつぶさに映す指標です。

図:OECD石油在庫 単位:百万バレル

出所:EIA(米エネルギー情報局)のデータをもとに筆者作成

 上図のとおり、新型コロナのパンデミック化をきっかけとして急増した過剰在庫は、すでにほぼ、はけています。OECD加盟国で大きな需給バランスの緩みがないことが、このデータから伺えます。何が同在庫を減少させたのでしょうか。

 先程の図「OPECプラスのうち減産に参加する20カ国の原油生産量の合計」と照らし合わせると分かるとおり、2020年夏ごろから、OECD石油在庫の減少とOPECプラス(うち20カ国)の原油生産量の増加は、同時進行しています。

 つまり、OPECプラスが削減量(減産幅)を縮小しても(増産と表現するメディアもある)、石油在庫は減少するのです。

 この点はまさに、投資家の皆さまを含めた市場関係者の皆さまに、原油市場がOPECプラス起因の材料だけでできていないことを、明示しています。在庫減少が起きた背景は以下だと、筆者は考えています。

図:OECD諸国の石油の過剰在庫がはけた理由

出所:筆者作成

 繰り返しですが、OPECプラスは原油市場を動かす一因でしかありません。米国の原油生産動向、世界全体の石油の消費動向、そして市場を覆うムードなど、考慮すべき点はいくつもあります。