「クイズでわかる!資産形成」(毎週土曜日に掲載)の第21回をお届けします。資産形成をきちんと学びたい方に、ぜひお読みいただきたい内容です。

今日のクイズ:自社株買いをすると、株価は理論上何%上がるか?

 A社は財務良好で、収益力が安定しています。A社は2024年2月6日の取締役会で自社株買い(自己株式の取得)を決議したと、以下の通り発表しました。

 出所:実在の会社をモデルとして筆者作成

 A社が自社株を上限である4億1,700万株を取得すると、A社の株価は理論上、何%上昇しますか?次の選択肢から選んでください。

【1】0%    【2】約5%    【3】約11%

【参考】自社株買いは、株主への利益配分の手段
 自社株買いとは、上場企業が、自社が発行している株を買い戻すことです。例えば、「NTTがNTTの株を買う」のが自社株買いです。「自社株買い」は、「配当金の支払い」とともに、株主への利益還元の手段です。米国のハイテク企業の中には、株主への利益配分は自社株買いのみ(配当なし)という場合もあります。

ヒント:自社株買いのメリット、ケーキの分け方に例えると

 自社株買いは、株主への利益配分方法の一つです。株主への利益配分で一番普通の方法は配当金支払いですが、自社株買いも株主への利益配分となります。 

 なぜ、自社株買いが利益配分になるのでしょうか?「自社株を買うんだから株価も上がるんでしょ」と、自社株買いのメリットを「買いが入る」という需給材料と考えている方もいます。

 確かに「自社株買い」を発表した企業の株価が、短期的に大きく上がることもあります。自社株買いをネタに、短期筋が買い上がると、そうなります。

 でも、それだけならば、短期的な株価材料にしかなりません。企業の投資価値が変わらなければ、いずれ売られて、元の株価に戻るでしょう。

 自社株買いの一番の意味は、「株価を押し上げる」ことではありません。「1株当たりの利益を増やす」ことにあります。企業が自社株を買うと、発行済み株式数が減ります。企業の純利益の総額が変わらなくても、1株当たり純利益が増えます。

 1株当たりの純利益が増えることを好感して株価水準が高くなることが期待されます。それが、自社株買いによる株主へのメリットです。

 少し分かりにくかったかもしれないので、「例え話」で説明します。

 40個のケーキ(企業の純利益)を株主10人で均等に分け合うことを考えてください。1人4個ずつもらえます。ここで、企業が自社株買いを実施し、株主2人の株を買い取ったとします。すると、株主数は8人に減りますので、1人当たりのケーキの割り当ては、5個に増えます。このように自社株買いとは、株式数を減らすことで、1株当たりの分け前を増やすことにあります。