マイナス金利政策解除は4月ではなく、3月の可能性大

 最初に申し上げておきたいのは、上のカレンダーの政策見通しは筆者が得ている情報やさまざまな分析を基に作成した、あくまで現時点における個人的な予想です。今後、前提条件に変化が生じれば当然変わり得るということを、あらかじめご承知おきの上ご覧ください。

 まず、日銀のマイナス金利解除が3月MPMか4月MPMかという点から整理しましょう。筆者は7対3のイメージで、3月だと考えています。理由は前回のレポート(「日銀のマイナス金利政策解除、3月の可能性が急浮上」)で述べたとおりですが、改めて3点指摘しておきたいと思います。

 1点目は、今回の「展望レポート」(「経済・物価情勢の展望 2024年1月」)で、消費者物価上昇率が「物価安定の目標」に向けて徐々に高まっていくという見通しに関して、「その見通しが実現する確度は、引き続き、少しずつ高まっていると考えられる」と明記されたことです。これはマイナス金利解除が近いという明らかなメッセージです。

 2点目は、4月MPMまで待つというのはいかにも長過ぎるという点です。3月中旬には春闘の集中回答日、3月18~19日には3月MPMがあります。その間、マイナス金利解除や追加利上げへの思惑が強まっていけば、そのうち10年金利は日銀が上限の「めど」とする1.0%を超えてくるでしょう。

 そうなれば、国債買入オペで無理やり10年金利を押さえざるを得なくなり、債券市場も日銀も再び副作用に苦しむことになります。また、過去において日銀から何らかのヒントが出たケースを振り返っても、直後のMPMで動いています。

 3点目は、植田総裁は1月23日の記者会見で、記者から年4回発表する「展望レポート」と政策変更との関係を質され、「展望レポートがない会合でも政策変更はあり得る」と言明した点があげられます。

 4月は補選があります。植田総裁は「選挙の有無にかかわらず適切な金融政策運営をしていきたい」とも述べていますが、3月でも4月でも大差ないのであれば、わざわざ4月を選ぶ必要はありません。

追加利上げはあるのか、あるならそのペースは?

 植田総裁は23日の記者会見で、マイナス金利解除後の追加利上げに関して、重要なヒントを出しています。すなわち、記者から「解除後の連続的な利上げといったことも視野に入れて判断するのか」と問われ、「それは当然そういうことになるかと思います」と答えた上で、以下のようにコメントしました。

 深刻なあるいは大きな不連続性が発生するような政策運営は、現在みている経済の姿からすると、避けられるのではないかというふうにみております。

 つまり、追加利上げを行っていきたいという考えが植田総裁の頭の中にあることは明らかですが、追加利上げを行っていくとしても、そのペースは緩慢なものになるということが、今回の記者会見で明確に示されたと解釈できます。

 では、いつから、どういうペースで追加緩和を行うのか。それを考える上で考慮しなければならないポイントは、(1)マイナス金利から通常の緩和スキームへ円滑に移行できるか、(2)FRBの利下げと重なった時の為替市場に与える影響、(3)日本の景気が金利引き上げにどの程度耐えられるか、の3点です。

 上のカレンダーに明記したとおり、今のところ、3月にマイナス金利政策を解除し、6月と7月のMPMで0.1%ずつの小幅な刻みの利上げを想定しています。なぜそう考えるのか、順に説明していきます。