2024年も「金融ストレス」が低下するかに注目

 S&P500は2022年に19.4%下落し、2023年は24.2%上昇しました。2022年はインフレ加速観測を受けてFRBが同年3月から利上げサイクルに入り、長期金利が上昇して株価の下落を余儀なくされました。

 一方、2023年はインフレのピークアウト観測を受けたFRBが7月の追加利上げで最後に利上げサイクルを停止。物価上昇率がディスインフレ(減速)傾向をたどったことや、労働市場の過熱感に和らぎが見られ、長期金利は2023年10月下旬に5%に達した後は低下に転じました。

 政策金利の行方に敏感とされる短期金利(2年国債利回り)も低下に転じ、金利先物市場で試算されるFF金利見通しは2024年央からの利下げ傾向を織り込むに至りました。

 図表2は、米財務省OFR(Office of Financial Research=金融調査局)が算出している「金融ストレス指数」とS&P500の推移を示したものです。

 金融ストレス指数とは、OFRが金融リスクを監視する目的で、金利の趨勢(すうせい)、投資家のリスク選好度、相場変動率、ドルの流動性、信用スプレッド、資金調達動向など幅広い指標で合成され米国内外の金融市場にどのくらいの緊張が加わっているのかを示す指標です。

 金融ストレス指数のトレンド(100日移動平均線)とS&P500のトレンド(100日移動平均線)はほぼ逆相関の関係にあり、2023年は(3月に発生した地方銀行の連続破綻局面を除き)金融ストレスが低下傾向をたどる中、生成AIブームに乗った大手テック銘柄がリードしてS&P500が強気相場に転換した経緯が分かります。

 2024年はFRBが利上げに転じると長期金利も一段と低下することが見込まれ、金融ストレスが低位で安定すれば米国株の堅調トレンドを支えることが期待されます。

<図表2>金融ストレスの低下傾向は2024年も続くか

*金融ストレス指数=The OFR (Office of Financial Research) Financial Stress Index
(出所) Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2018年初~2024年1月10日)