国内外の原子力発電の建設加速、発電事業者とウラン採掘会社の追い風

 国務院常務会議は12月29日、東部沿海地域における原子炉4基の新設を承認した。これで2023年の承認件数は計10基。原子力発電所の建設計画を再開した2019年以来では最多となった。BOCIは脱炭素目標の達成を睨み、今後数年間は年10件前後の承認ペースが続くと予想。2030-31年には中国の原子力発電機数が米国を上回る可能性を指摘している。一方、原発運営の上流では、ウラン価格の高騰が止まらず、2週間前には1ポンド=90米ドルを突破した。中国および世界の原発開発の加速は、中国広核電集団傘下のウラン商社である中廣核礦業(01164)と、中国の原発最大手である中国広核電力(01816)の追い風。両社の株価の先行きに対して強気見通しを継続している。

 国務院常務会議が今回新たに承認したのは、広東省にある中国広核電力(01816)の太平嶺原発3号・4号機と、浙江省に位置する中国核能電力(上海601985)の金七門原発1号・2号機。4基ともに、中国製の「華龍1号」を採用する。7月に承認された寧徳5号・6号機を加えると、新規承認案件に占める中国広核電力のシェアは40%(2019-23年に平均29%)と、2020年以来最も高い水準となる。2019年の原発建設の再開以降、同社が獲得した新規原子炉の承認はこれで計10基。BOCIは沿海地域に有力な建設候補地を所有する同社が、今後も30-40%のシェアを確保するとみる。

 中国広核電力にとってはほかに、広東省の関連政策がプラス。同省は市場価格枠の電力販売量(MBPS)を2024年も前年並みの195億kWhに据え置く方針であり、同社は石炭火力発電のベンチマーク価格を15%上回るプレミアム価格を維持できる運びとなった。同省における火力発電の市場価格の低迷を受け、BOCIはプレミアム料金設定による恩恵は限定的とみているが、MBPSが前年並みに限定されるのであれば、大幅に事態が悪化することはないとしている。また、同社は配当性向の段階的な引き上げを約束しており、米利上げの終了に伴う金利の低下もプラス。配当面から魅力が高まる可能性が高い。

 一方、ウラン価格の高騰は依然続いており、1ポンド=80米ドルを突破してからわずか29日後のクリスマス前に、同90米ドルを突破。年明けには92米ドルに達した。原子炉1基の新設は、5年間で約50万ポンドのウラン(U3O8)消費につながることから、世界の原発事業者はより高価な期間契約を結ぶなど、長期のウラン確保に向けた早急な対策を迫られる見込み。BOCIは現時点で24年のウラン価格を平均82.5米ドルと予想しているが、直近の価格動向を見る限り、この予測値はかなり低めだとしている。

 BOCIは中国広核電力と中廣核礦業の株価の先行きに対して強気見通しを継続。この2社の中では、前者を選好するとした。香港の全体相場の低迷と金利の低下という環境下で、同社が有利な立ち位置にあるとの見方。後者に関してはウラン価格の一段の上昇が追い風になるとしている。