不動産ローン指標金利の5年物LPRを大幅引き下げ、金融緩和を継続へ

 中国当局が2月20日、事実上の政策金利となる最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)の5年物を4.2%から3.95%へ0.25%引き下げた。5年物のLPRは不動産ローン金利のベンチマーク。1年物は3.45%に据え置かれた。

 今回の5年物LPRの引き下げは基本的に市場の予想通り。中国人民銀行(中央銀行)が1月24日に預金準備率の引き下げを発表したことや、主要銀行が12月に預金金利の引き下げに動いたことで、市場は事前に利下げを見込んでいた。また、1月の新築住宅販売の低調やCPI(消費者物価指数)の下押し、株式市場の低迷を受け、一段の金融緩和に対する期待が高まっていた。ただ、0.25%という5年物の引き下げ幅は市場の予想以上。LPRが2019年に政策金利となって以来、5年物としては最大の下げ幅となった。

 中国の金融当局は2023年12月以降、内需の拡大やデフレ圧力の緩和、不動産販売の改善、株式市場の信頼回復を目指し、新たな政策を打ち出している。5年物LPRは予想以上の引き下げ幅となったが、人民銀が1月下旬に発表した預金準備率の引き下げ幅も0.5%と、2023年に実施した際の各0.25%から倍増した。また1月には、人民元建て新規融資と社会融資総量が歴史的な高水準に達している。不動産関連ではさらに、建設中の一部住宅開発プロジェクトの資金環境の改善に動き、担保付き補完貸出(PSL)を通じて資金調達を支援。1線都市(4大都市)では住宅購入制限の緩和も行われた。今回の5年物LPRの引き下げは製造業投資、インフラ投資、不動産販売に関連する中長期の資金需要を支援することで、内需不足を改善するという当局の意図を強くうかがわせている。

 一方、当局は今回、1年物MLF(中期貸出制度)金利と1年物LPRという短期金利を据え置いた。BOCIはこれにより、インターバンク市場の過剰債務リスクの防止に加え、より高い政策効果の確保、外国為替市場の安定化というプラス効果があるとしている。

 中国指導部は旧正月休暇明けのハイレベル会合において、市場センチメントの改善やマクロ経済の回復につながる積極的なシグナルを発している。BOCIは今後も、潤沢な流動性環境と、内需回復につながる適度な与信の拡大を目指す金融政策スタンスを維持するとの見方。米国が下期に利下げに転じれば、中国の金融政策の柔軟性が高まるため、その時点で短期金利の引き下げもあり得るとしている。

 一方、5年物LPRの引き下げは銀行の利ざやのさらなる低下を招くことから、銀行システムの安定性を維持するために預金金利をさらに引き下げ、利ざやを下支えする可能性がある。BOCIによると、大方の予想を上回る最近の金融緩和は、今後の政策に関する市場の信頼感の改善を後押しする見込み。ほかに積極財政策や構造的な金融政策ツールの活用が相乗効果を生み、中国経済の高質の発展を支える主要分野(インフラ建設、ハイテク製造、エコ開発、住宅投資保証など)を支援する見通しという。