コロナ後の回復鈍く2023年上期決算は低調、政府の「反腐敗」が引き続き影響か

 BOCIの製薬セクターのカバー銘柄のうち、2023年6月中間決算が予想を上回ったのは三生製薬(01530)だけで、その他3銘柄は予想から下振れた。コロナ後も医薬品の販売回復ペースは鈍く、上期にはコスト削減と効率化が焦点となった。売上高販管費率は下期も徐々に低下する見通しだが、これは中国政府の「反腐敗」キャンペーン(製薬会社による贈賄取り締まりなど)を受けた学会の延期・中止が背景。この「反腐敗」は製薬銘柄の売上高にも影響する見通しという。それでもBOCIは引き続き、セクター全体に対して強気のレーティングを付与。個別では低バリュエーションや創新(イノベーション)プラットフォームの構築を理由に、石薬集団(01093)を選好している。

 カバー銘柄の中で上期決算が唯一予想を上回った三生製薬の売上高は、前年同期比22.4%増。トロンボポエチン(TPO)受容体作動薬のカバー範囲の拡大や「Mandi」(ミノキシジル)の急成長が寄与した。ただ、他3社の石薬集団、中国生物製薬(01177)、翰森製薬(03692)はコロナ後の医療活動の回復の鈍さから、各3%、0.5%、1.7%の小幅増収。コスト削減と効率化の重要性が増す中、売上高販管費率は4社ともに低下した。

 当局の「反腐敗」キャンペーンはコンプライアンスへの取り組みや業界改革の加速、イノベーティブ薬の差別化といったメリットをもたらす見通しだが、短期的には、販促活動や医薬品の適応外使用をめぐって混乱が生じる見込み。結果的に、売上高の縮小圧力が高まる可能性が高い。石薬集団の経営陣は2023年通期の業績見通しを据え置いたものの、中国生物製薬は予想増収率を「前年比1桁台後半」から「前年比プラス」に下方修正。三生製薬は上期決算の上振れにもかかわらず、通期売り上げ見通しの上方修正を見送った。翰森製薬は従来見通しの「2桁増収」を据え置いたものの、BOCIは達成が困難との見方だ。なお、国家衛生健康委員会(NHC)は「反腐敗」キャンペーンについて、少数の重要人物に焦点を当てたもので、医療関係者の学会出席の見送りなど、過度の自粛はすべきではないとの見解を明らかにしている。

 BOCIはDCF(ディスカウントキャッシュフロー)方式に基づき、石薬集団と中国生物製薬の株価の先行きに対して強気見通しを維持。翰森製薬と三生製薬に関しては中立見通しを据え置いた。個別では石薬集団を有望視しているが、短期的には2023年通期の業績悪化見通しが同社の株価パフォーマンスに影響するとみている。

 また、今後注目されるのは、年末にも確定する2023年版「国家医療保険償還医薬品リスト」(NRDL)への自社製品の掲載をめぐる交渉の行方。複数企業が初採用候補となる製品を抱える。一方、各社のレーティング見直しにつながる潜在リスク要因として、BOCIは主要製品の価格引き下げ、新製品の商用化の遅れ、パイプライン(製品候補群)の進捗(しんちょく)の遅れなどの可能性を挙げている。