為替介入は1ドル=155円を超えてから?160円が新たな「防衛ライン」!?

 中東リスクを意識したドル買いと利下げ時期後ろ倒しの思惑からドル高円安が続き、1ドル=155円に近づいています。為替介入への警戒感が一段と高まっており、155円が防衛ラインとの見方がありますが、155円が防衛ラインであるならば、介入するタイミングが遅すぎたかもしれません。

 152円を超えたタイミングから介入を実施して、市場に次の介入が出るのではないかと疑心暗鬼にさせないとあっさりと155円を超える可能性があります。155円を超えてから介入を実施しても、オプション絡みの取引には155円が付くと一段の円安を起こしかねないものもあるといわれており、あまり意味があるとは思えません。ひょっとしたら1ドル=155円の水準も152円を超える前と同様に口先介入だけで終わることも想定されます。

 5円刻みの心理的節目である155円は重要なチャートポイントですが、さらに重要なポイントである1990年に付けた160円を当局は意識しているのかもしれません。このポイントが完全にブレイクされると、天井知らずの円安になる可能性があるからです。

 つまり、1985年のプラザ合意によって、1988年には120円までドル安円高に傾き、その行き過ぎた反動から円安の動きとなり、1990年に160円まで戻りました。

 従って、今回、160円を上抜くと260円まで重要な節目がないということになります。そのため、160円を絶対死守するために155円を超えてから本格的な介入を実施することは想定されます。

 介入水準でなく、介入のタイミングも留意しておく必要があります。鈴木俊一財務相は、17日から米ワシントンで開催される20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に関し為替は議題になるかとの記者からの質問に、為替は議題として設定されていないが、「議題にならなくとも話題にはなる」と語っています。

 2022年秋のドル売り・円買い介入は、9月22日、10月21、24日の3回行われましたが、合間の10月12~13日にG20会議が開催されました。このG20の後、10月の「大規模」、「連続」、「覆面」介入が実施されました。今回、ドル独歩高の様相も出始めているため、為替が話題になるかもしれません。

円安による物価上昇懸念広がれば、岸田政権に打撃、円安是正言及も?

 もう一つ留意したいのは、今月28日投開票の衆議院3補欠選挙です。東京15区、長崎3区は自民党は候補を立てず不戦敗ですが、島根1区は与野党の一騎打ちとなります。自民派閥による政治資金規正法違反事件後、初の国政選挙であり、今後の岸田政権の行方や衆院解散戦略に大きな影響を与える選挙です。

 内閣支持率が低水準であるところに、円安による物価の再上昇懸念が広がれば、さらに支持率が低下する可能性があります。不人気を回避するためにも現行の円安に言及する可能性があるかもしれません。

 17日からのG20、28日までの衆院補選期間、そしてその間には、25~26日の日本銀行の金融政策決定会合(政策変更なしと思われますが、公表される展望リポート(経済・物価情勢の展望)の物価見通しが中東情勢緊迫化によって上方修正されるかもしれません。早期追加利上げの思惑から円高要因)、26日のFRBが注目する米3月PCEデフレーターの公表、4月30日~5月1日のFOMCと続きます。

 ゴールデンウイーク期間中は流動性が薄くなり、値動きが荒くなりやすくなります。ゴールデンウイークを控え、財務省・日銀にとって円安に歯止めをかける正念場かもしれません。