現在のマーケットの概況
FRBはコロナ禍を背景としたリセッション局面が終息した後も2年近くにわたって超緩和政策を続けた。このMMT(現代貨幣理論)政策がインフレを生んだのだ。
MMTは政府が自国通貨建ての借金をいくら増やしても財政は破綻せず、インフレもコントロールできるとする理論である。米金融当局は米国経済をソフトランディングできると自信を見せているが、インフレは一度加速し始めると、沈静化させるのが非常に難しい。
インフレに対処するために非伝統的な政策を段階的に廃止し、政策金利を引き上げれば、大規模な債務危機と深刻な不況を引き起こすリスクがある。
しかし、緩い金融政策を維持すれば、2桁台のインフレに陥り、次の負の供給ショックが発生したときに深いスタグフレーションに陥るリスクも高い。インフレについて過小評価している投資家は一段の波乱に直面するかもしれない。
FRBが市場に介入し金融市場の信用の流れを維持する政策(モラルハザード)に打って出たとき、われわれの経済に何が起こったのか、そして今日の市場は典型的なバブルとどう違うのだろうか? 現在の相場は「バブル」というよりも「国家管理相場」である。
米国は直接的に(量的緩和やゼロ金利政策)・間接的に(著しくずさんな経済統計の発表や時間軸政策の導入など)大規模な介入を実施してきた。バーチャル(架空)の価格体系を維持するためだ。今、それがインフレによって崩壊する危機に直面している。
さて、現在のマーケットの概況を見ておこう。
米国債は利上げが来るかのように取引されている。
米国10年国債金利(日足)
ゴールドは利下げが来るかのように取引されている。
ゴールドCFD(日足)
ドル円は利上げが来るかのように取引されている。
ドル/円(日足)
ダウ工業株30種平均はソフトランディングやノーランディングが終わったかのように取引されている。
NYダウCFD(日足)
S&P500CFD(日足)
原油価格は、FRBがリセッション(景気後退)を回避したかのように取引されている。
NY原油CFD(日足)
住宅価格は、住宅金利が3%であるかのように上昇している。
ケース・シラー米住宅価格指数
上記の市場の動きや連関に明確な整合性はないように感じられる。だが、マクロ分析と市場はイコールではない。相場は行きたいところに行く。私たちの目標は相場との戦いに勝つことであり、そのためにはいくつかの戦いに負ける必要があるかもしれない。 そう、私たちはお金を稼ぎたいのだから、お金を失わないことがもっと重要だ。