米FRB幹部の相次ぐタカ派発言で、利下げに向かえないとの観測広がる

 米労働省が先週5日に発表した3月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比30.3万人増と市場予想を超え、失業率も3.8%と前月から改善しました。非農業部門の予想以上の増加は移民の大量流入が要因との見方もありますが、米国における労働市場の強さを示す結果となりました。

 市場では、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)が6月に利下げに転じるのではないかという期待がやや後退し、外国為替市場のドル相場は、1ドル=151円台前半から再び151円台後半に上昇し、152円ブレイクを試す展開となっています。

 FRBのパウエル議長は3月のFOMC(連邦公開市場委員会)後の会見で、強い雇用の伸びについて「インフレを懸念する材料にはならない」、「利下げを待つ理由にもならない」との見解を示していましたが、FOMC後、FRB幹部からは早期利下げを否定する発言が相次いでいます。ローガン・ダラス連邦準備銀行総裁は「利下げについて考えるのはあまりに早過ぎる」と述べ、ボウマン理事からは「利下げの時期にはまだ至っていない」と早期利下げ観測をけん制しています。

 こうした幹部の発言から、市場では「利下げに向かえないFRB」との見方が浮上し始めており、10日に発表される米3月CPI(消費者物価指数)で、物価の持続的な減速を確認できるかどうかに注目が集まっています。パウエル議長は1月、2月のCPIの上振れは季節的要因であり、インフレは目標の2%に向けて徐々に低下しているとして過度な警戒は不要との見方を示していました。

 ただ、6月11~12日のFOMCまでにCPIの発表が2回あります(4月CPI・5月15日、5月CPI・6月12日発表)。また、FRBが注目する物価指標PCEも2回発表があります(3月分・4月26日、4月分・5月31日発表)。

 従って市場は3月のCPIだけから6月のFOMCで利下げがないと予想することはないと思われます。その後の4回の物価指標を見た上で、6月利下げの有無を予想していくと思われます。

 パウエル議長は3月のFOMC後の29日に「利下げは急ぐ必要ない」と発言していますが、年内の利下げは否定していません。果たして、6月あるいは7月に利下げがあるのかどうか注目されます。