リスクアセット共通の要因

金・BTCが同時に史上最高値更新

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

 もう一つ興味深い動きがある。実はBTCが史上最高値を更新した3月9日は、金(ゴールド)が最高値を更新したのとほぼ同じタイミングだった。日経平均株価はその少し前に史上最高値を更新、東京のマンション価格も上がっている。これらは偶然ではなく、日本円や米ドルなどの法定通貨の価値が下がっているのだと考える。

 アーク・インベストメント・マネジメントのキャシー・ウッドCEOはアルゼンチン、エジプト、ナイジェリアなどを例に挙げ、こうした動きを、ひどい財政・金融政策による法定通貨の切り下げに対するヘッジだと指摘した。

新興国通貨の切り下げ相次ぐ(USD/EGP・USD/ARS・USD/NGN)

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

 下は日本円と米ドルの発行残高、すなわちベースマネーだ。米ドルの発行残高はコロナ対策でほぼ2倍に膨らんだが、それをQT(量的引き締め)で2割強回収した段階で、シリコンバレーバンクの破綻など金融危機が発生した。

 すなわち、コロナ対策で日米ともお札を刷ってみんなに配った。これは禁じ手だが緊急対策と説明された。ところが、あれから4年が経過してみて、このばらまいた法定通貨と政府債務を元に戻すことは事実上不可能だということが判明してきた。

日本円・米ドル発行残高(ベースマネー)推移

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

 当時、均等にばらまいたお金は、残高としては4年経過しても市中に存在するが、均等に残っている訳ではない。これを均等に増税や金融引き締めで回収しようとしても、ないところからは取れないという問題が生じてしまう。これが昨年3月の米金融危機の一因だ。

 その結果、各国は金利はともかく膨らんだ政府債務と法定通貨の回収を諦めつつあり、それに不安を覚えた投資家が、手元の法定通貨を別の資産に換金し始め、多くのアセットが過去最高値を更新している構図だ。すなわち、金かBTCかどちらが上がるのか、ではなく、金もBTCもどちらも上がりそうといえそうだ。

半減期の影響

ビットコインキャッシュ(BCH/JPY)の推移

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

 もう一つ、4月のBTC相場を占う上で外せないのが、4月20日ごろと予想される半減期の影響だ。この点、ひと足先に4月4日に半減期を迎えたビットコインキャッシュ(BCH)が参考となる。BCHは半減期の約2週間前から急騰。半減期の3日前にピークアウトするとハッシュレートが低下、ブロック生成の遅延する中、BCH価格は反落。無事、半減期を通過すると反発した。

 BTCは、BCHとは同じプログラムから発生しているが参加者や規模が異なり、全く同じ動きをするとは思えないが、BCHの値動きが示唆するのは、参加者は前倒しで行動することだ。半減期を意識した上昇は前倒しでピークアウトするし、マイナーは収益の半減を前にオペレーションを縮小している。

 BTCに関しては、すでに半減期を意識した上昇は終わっている可能性もあるが、BCHのようにこれからが本番となる可能性も十分にある。また、BTCは昨年末から2倍近くに上昇しているため、報酬が半分になってもある程度マイナーの採算は維持され、混乱は限定的との見方もある。ただ、半減期前にSell the Fact気味の売りが出る可能性が高いことは頭に置いておきたい。

材料から見た4月見通し 

出典:楽天ウォレット作成

 以上、材料面での4月の見通しをまとめると、

  1. ETFのフローは後退、2~3月にかけてのブームは終了
  2. しかし個人に続き法人マネー参入による第二波が期待される中、下げ相場になるのではなく横ばい圏に
  3. 買いの根っこにある法定通貨への不信は続くのでじり高
  4. BCHの例を踏襲すれば半減期前に買いが入り、直前に反落する展開か