ホテルビュッフェやレストランでの食事などを、株主優待で楽しむ様子を発信している夕刊マダムさんは、投資・優待歴35年のベテラン投資家。まだ株購入のハードルが高かった35年前から、どのようにして投資経験を積んできたのでしょうか。また、夕刊マダムさんが優待生活をどう楽しんでいるのかについて、たっぷりお話をうかがいました。

<夕刊マダムさん プロフィール>


投資、優待歴35年。高配当株と株主優待が好き。2004年からブログ「夕刊マダムの悠々優待生活♪」を執筆。東京都在住。
ブログ:夕刊マダムの悠々優待生活♪
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ビギナーズラックが成功体験に!「知ってる会社」から始めよう

トウシル:夕刊マダムさんの投資・優待歴は35年になるそうですね。今よりも投資のハードルが高かった35年前、どんなきっかけで投資を始めたんですか?

夕刊マダムさん:働いていた会社に持株会制度があったんです。入社時に、財形貯蓄と持株会制度(自社の株を従業員が購入・保有できる制度)があるという説明を受け、「これはすてき!」と思って、両方とも満額で始めました。

トウシル:もともと株の知識はあったんですか?

夕刊マダムさん:もちろんなかったです。ただ、自動的に給与天引きで積み立てができるのと、福利厚生として一定額が会社から補填(ほてん)されるので、ふつうに店頭で株式を買うよりお得だ、と聞いて、積立貯金感覚で気軽に始めました。そのうち、個人でも株式を購入するようになったんです。

トウシル:持株会で自社株を買うのと、自分で判断して銘柄を選んで購入する投資との間には、知識的にも気持ち的にもハードルが高そうですが…。

夕刊マダムさん:そんなに不安感が強かった覚えはないですね。実は、父親が投資をしていたようで、毎日5時にラジオで「どこそこの株価が何円」と株の情報が流れてくるのを、何となく耳にしていたんです。当時は、それが株の情報だとすら知らなかったんですが…。

トウシル:親子そろって株に関心を持つ運命だったのかもしれないですね(笑)。本格的に自分の意思で投資を始めた最初の一歩を聞きたいです。最初に買った銘柄は、何だったんですか?

夕刊マダムさん:新日鉄(現:日本製鉄:5401)でした。当時、製鉄系は不人気なセクターだったらしく、たまたま100株10万円台で買えたんですよ。そこへ突如、「低位株ブーム」がきて買いが殺到し、1カ月後に10万円分、利益が出たんです。

トウシル:いきなり成功体験を味わえたんですね!

夕刊マダムさん:ビギナーズラックでした! この経験で「株っておもしろいな」と思いました。その次が東芝(現在は株式併合により上場廃止)ですね。100株40万円ほどしたんですが、これも短期間で10万円ほど利益がでました。

トウシル:当時、どんな理由で新日鉄や東芝の株を買ったんですか?

夕刊マダムさん:自分が知っている会社、というのが基準でした。知名度が高く、自分も知っている会社なら安心だ、と思ったんです。

トウシル:35年前だと、周囲で株をやっている人は少なかったんじゃないですか?

夕刊マダムさん:もちろんです。そもそも、店頭証券しかなく、個人が手軽に株を買える時代ではなかったし、個人投資家向けの銘柄も少なかったと思いますよ。

トウシル:夕刊マダムさんにはご家族がいらっしゃいますが、当時はまだ独身だったんですか?

夕刊マダムさん:いえ、もう結婚していました。

トウシル:では、株を買うときには旦那さんにご相談をされたんでしょうか。

夕刊マダムさん:いえいえ、自分の貯金で買っていたので、特に相談はしたことがないですね。自分の買える範囲で、自分の判断で買っていました。ただ、私が株を買っていることは知っていて、「この株、売ったらいいと思う?」という話をすることはありました。でも、夫はすぐ「売っちゃえ」と適当なことを言うんですよ(笑)。なので、売買の判断も自分でしていました。

トウシル:「売っちゃえ」と言われてはいても、特に反対されることはなかったんですね。

夕刊マダムさん:特にないですね。ビギナーズラックで利益が出ていた時代なので、もうかった話から始められたのも、反対されなかった理由かもしれません。

トウシル:夕刊マダムさんがビギナーズラックを経験したのは、80年代末のバブル真っ盛りの時期ですか?

夕刊マダムさん:いえ、その前にプチバブルがあり、ちょうどそのときに新日鉄や東芝で利益を出せたんですが、その後、子供が生まれてからは、忙しくて投資に全力投球はできなくなりました。

 いわゆるバブル経済の時代は、どんどん株価が上がっていったのを目の当たりにしていたのですが、育児が大変で、「今さら買えない…」と思って、指をくわえて見ているしかありませんでした。

トウシル:投資をお休みして、育児に集中されていたんですね。

夕刊マダムさん:はい。でも、子どもが幼稚園に上がって、家族でファミレスのジョナサン(現すかいらーくホールディングス:3197)に行くようになり、「このファミレス、いいな」と思うようになりました。そして、株主になれば、飲食割引の優待券がもらえると知ったのが優待投資の第一歩です。

 当時…すごく高くて…。優待が発生する100株を購入するのに300万円ほどが必要だったんですが、ちょうど積立貯金が満額だったので、それを突っ込みました。

トウシル:それはスゴイ! 思い切りましたね!

夕刊マダムさん:最初は「これだけしょっちゅう外食に行くんだから、優待券をもらえたらお得だな」というくらいの気持ちだったんです。でも、まだネット証券が普及していなかった時代で、証券会社に電話して「ジョナサンの株を買いたい」と言ったら「ええ? いいんですか? そんな株、頼まれたことないですよ」と驚かれました(笑)。

 当時、ジョナサンの株は取引所に上場していない「店頭有価証券」で、という、マイナー株だったんですよ。また、「300万円もしますよ、大丈夫ですか?」とも言われましたね。

 この当時、優待品目当てで株を買う人はほとんどいなかったようです。証券会社の担当者も、レストランで使える優待券があるということも知らなかったんですよ。

トウシル:満を持してのジョナサン、投資結果はどうでしたか?

夕刊マダムさん:購入後、すぐに株式分割があり、株価が急騰して、30万円ぐらい利益がでました。ほんとにラッキーでした。でも、この利益確定で売却益を得た経験が、「よし、優待投資をやろう!」という手応えにもつながったと思います。

 続けて、後は明治製菓(現:明治ホールディングス:2269)を優待目当てで購入しました。

 明治製菓は、利益も出ましたし、優待品が届くという体験ができて、とてもうれしかったのを覚えています。家にチョコレートが送られてきて、その箱を開けるのがとても楽しくて! 「優待品が届くのってうれしい!」という体験ができました。

 映画の優待券もうれしい優待の1つでした。実は、幼稚園のママ友が偶然、株式投資をしている人で、「映画の券が余ってるんだけど、期限が近くて使い切れないからあげる」と券をもらったんです。

 そこで、夫に子供を預けて、久しぶりに一人で映画を見に行ったんです。育児中のリフレッシュになったのと、「無料で映画を見られるなんてすごい!」と感激して。1人映画はリフレッシュになっていいなと思ったので、東急レクリエーション(現在は東急株式会社に併合)の株も買いました。

失敗経験は数えきれない!あえて忘れることが次の挑戦に向かうコツ

トウシル:ここまで、ビギナーズラックに始まりポジティブな話が続いてきましたが、「これはまずい…」と思ったことってなかったんですか?

夕刊マダムさん:もちろん、ものすごい数の失敗談があります(笑)。例えば、バブル全盛期ですが、エイベックス(7860)の株主総会がスゴイ!とニュースになったことがありました。

 六本木のヴェルファーレというディスコで株主総会があり、豪華なお食事も出る、という話を聞いて、「それ、行ってみたい!」と株主総会に行きたいがために、利益度外視で飛びついて買ったことがあります(笑)。ジョナサンがすかいらーくHDに統合されたので、売却して得た現金が300万円ぐらいあったので、それを使って爆買いしました。

 当時、エイベックスは、東証1部(現:東証プライム)に上場するのではないかと言われていたんですが、そこからどんどん上がっていって、1週間に100万円ぐらいのペースで含み益が出ていたんです。

 その時点で売却して利益確定したんですが、東証1部に上場した後、「また上がるかも!」と期待して買い戻したんです。それが、結果的にすっごい「高値づかみ」で、その後はどんどん下がっていってしまったんです。

トウシル:うーん。バブルあるあるですね…。

夕刊マダムさん:そうなんですよ。株は情報戦なので、上場前に気配を察して買うべき。上場したら後は下がっちゃう。みんながその銘柄を知ってしまったら、そこがゴールなんだなといういい教訓になりました。

 後は介護ブームがきていたときに「介護ベッド、来るかも!」と思って介護系の銘柄を買いあさったんですが、後から見ると、その時がピークと言っていいくらい高値だったり、優待目当てで買ったJFLAホールディングス(3069)が優待廃止を発表して大損したり…。失敗談めちゃくちゃ多いですよ(笑)。

トウシル:優待廃止は優待投資家にとって痛いですよね…。

夕刊マダムさん:そうなんですよ。株価や業績に対して、優待だけが異常に豪華な銘柄は、廃止の危険性が高いので買っちゃいけないんですよ。わかってるんだけど、手を出してしまう(笑)。ただ、廃止した優待が再開されることもあり、そうなると株価にも影響するので、「優待休止」の場合は安易に売らずに保有したままウオッチし続けたりもしています。

トウシル:企業業績を追っていると、優待が続くかどうか、なんとなく匂いますよね。

夕刊マダムさん:はい。「この株価でこの優待?」と感じるアンバランスな銘柄は危険! 東証2部から1部に上がるために出来高を増やそうとして優待を開始して、上場後にさっさとやめちゃった例もたくさん見ています。でも、私には見極める力はないので、最近は新設優待に飛びつくのは控えています。やっと学んできました(笑)。

トウシル:後編では夕刊マダムさんのイチオシ優待銘柄を伺います!

>>後編「みんなで楽しめる銘柄が好き!夕刊マダムさんインタビュー」[後編]を読む!