「S&P500の2024年内目標値」を上方修正した理由
S&P500は昨年12月時点で想定していた「2024年内のメインシナリオ(目標値)」だった5,000をいったん上回りました(9日)。こうした中、あらためてS&P500の想定レンジと目標値を試算してご紹介します。
図表2は、筆者が参照している株価予想モデル(予想益回りスプレッド=S&P500の予想益利回り(予想PER(株価収益率)の逆数)と長期金利(10年国債利回り)の差から試算したフェアバリューのレンジを示したグラフです(9日時点)。
長期的にレンジが右肩上がりで推移してきたのは、S&P500ベースの予想EPS(1株当たり利益)が成長してきたからです。このモデルをベースにすると「ベストシナリオ」(上値余地)は5,890、「リスクシナリオ」(下値余地)は4,384と試算され、2023年12月時点の試算から切り上がっています。
S&P500ベースの予想EPSで見込まれる2024年の前年比増益率は+15.5%、2025年の同増益率は+12.1%となっています(Bloomberg集計の市場予想平均)。こうした状況を加味し、筆者は「2024年内のS&P500の目標値(メインシナリオ)」を従来の5,000から「5,300」に上方修正しました。新たな目標値までの年初来騰落率は+11.1%です。
もちろん、株価が一本調子で上昇することを見込むのは難しく、長期金利の上昇(株式バリュエーションの悪化)、景気後退観測の再浮上、中東情勢の緊張などに伴う原油相場上昇、ワシントンリスク(債務上限問題再燃や大統領選を巡る不確実性)、中国リスク(不動産不況を発端とする景況悪化や米中対立激化を受けた対中ビジネス減退)などのリスク顕在化次第で、市場心理が一時的に下振れする可能性も否定できない点には留意したいと思います。