景気の回復から拡大に向けた本格上昇はいつごろか?

 日経平均株価(225種)は、3万3,000円台の動きとなっています。景気循環からは、企業業績が悪化しやすく、過去においては株価は下がりやすい時期に位置していますが、引き続き堅調な動きとなっています。

 私は景気循環をベースに株価を見ていますが、4月以降の日経平均の上昇は、景気の回復から拡大に向けた本格的な上昇とは考えておらず、本格的な上昇はまだ先と踏んでいます。

 では、景気の回復から拡大に向けた本格上昇はいつごろが想定されるのでしょうか。その点について、私なりの見方をお伝えしていきたいと思います。

日経平均は上昇しているが、本格上昇はまだ先

 まず、私が捉えている景気循環における株価のイメージは次の通りです。

(図1)景気循環における株価のイメージ

出所:マネーブレインが作成

 景気循環において、各局面を独自分析に基づいて「春」「夏」「秋」「冬」という季節になぞらえていて、それぞれ次のように位置付けています。

  • 「春」・・・不況から景気回復の局面
  • 「夏」・・・景気回復から好況の局面
  • 「秋」・・・好況から景気後退の局面
  • 「冬」・・・景気後退から不況の局面

 現在は独自分析上、「冬(前半)」という時期になっていて、2012年以降の日経平均と景気循環の関係は次の通りです。

(グラフ1)日経平均株価と景気循環との関係

*薄いグレーは「冬(前半)」、濃いグレーは「冬(後半)」を示しています。
出所:日経平均株価は日本経済新聞社の公表データを基に作成。景気循環はマネーブレインが独自分析し作成

 日経平均と景気循環の関係において、景気の回復に向けた上昇局面は「春」、拡大に向けた上昇局面は「夏」という時期に位置しています。足元では日経平均は上昇していますが、現在は「春」ではなく「冬(前半)」という時期に位置しているため、本格上昇はまだ先と私は見ています。

ファナックの在庫循環から景気循環をみる

 では、まず、「冬(前半)」の次にある「冬(後半)」がいつごろになりそうなのか、そのタイミングは、FA(ファクトリー・オートメーション)やロボットを扱っているファナック(6954)の在庫循環で決めています。なぜファナックなのかというと、さまざまな銘柄を検証した中で、ファナックが一番、景気循環を見る上で適しているからです。

 ファナックの在庫循環を確認してみましょう。

(表1)ファナックの在庫循環

*青で示した時期は、売上高、棚卸資産がともに前年比で減少した最初の四半期
出所:ファナックの決算短信を基にマネーブレインが作成

(表1)において青で示した時期は、四半期決算において、売上高と棚卸資産がともに前年比で減少した最初の四半期で、この決算発表日を「冬(前半)」から「冬(後半)」に変わるタイミングとしています。

 7月28日に発表されたファナックの第1四半期決算において、売上高は2,017億円で前年同期比でマイナスに転じましたが、棚卸資産のほうは3,776億円と過去最高となっています。

「冬(後半)」となるには、この売上高と棚卸資産がともに前年比でマイナスになる必要がありますが、過去においては、棚卸資産はピークから3四半期後に前年比でマイナスに転じるケースが多く、これを適用すると、「冬(後半)」になるのは2024年3月期の通期決算発表日である来年4月下旬となります。

 ピークから3四半期後よりも前にマイナスに転じたケースとして、過去においてはリーマンショックのとき(1四半期後)と、2005年から2006年にかけて(2四半期後)があります。

 2008年のリーマン・ショックのときは特殊としても、3四半期後ではなく2四半期後となることも考えられ、そのときに「冬(後半)」になるのは、2024年3月期の第3四半期決算発表日である来年1月下旬となります。

 以上から、「冬(後半)」になる時期は、現時点において、来年1月下旬の2024年3月期第3四半期決算発表日か、もしくは来年4月下旬の2024年3月期通期決算発表日と見ています。

日経平均が本格上昇するのは、来年4月ごろか7月ごろ

 その場合に、日経平均が本格上昇する「春」はいつごろになるかというと、過去においては「冬(後半)」はおおむね3カ月程度となっているので、「春」は来年4月ごろか7月ごろとなります。

 本格上昇する「春」の前にある「冬(後半)」が早くて来年1月下旬だとすると、少なくともそれまでの間は「冬(前半)」という、過去においては企業業績が悪化し、株価も下げやすい時期に位置していることになります。

 このため、足元において日経平均は上昇していますが、強気一辺倒ではなく、慎重さも必要と考えています。

 投資はあくまでも自己責任で。