BTC相場へのヒントを探る

 金融先物取引業協会によれば9月の店頭FXの出来高が1,398兆円と過去最高を記録した。国内の現物市場の出来高が約2年ぶりに100兆円を割り込み「冬の時代」と呼ばれる暗号資産市場とは対照的だ(2022年8月 日本暗号資産取引業協会)。

 それもそのはず、為替相場ではユーロ/ドルは10年ぶりにパリティ割れ、ポンド/ドルは史上最安値を更新、ドル/円も32年ぶりの安値水準を更新中だ。

各通貨の米利上げ開始(2022年3月16日)以降のパフォーマンスとCPI・政策金利

単位:% (出典:Bloombergより楽天ウォレット作成)

 その背景は言わずと知れたドル高だ。FRB(米連邦準備制度理事会)が利上げを始めた3月16日以降で見ると、主要通貨のほとんどに対しドルのパフォーマンスが上回っている。

 その中でも日本円が最もパフォーマンスが悪いが、その理由は日本は諸外国に対しCPI(消費者物価指数)が低く、利上げをせずに済んでいるからだ。本稿では、この為替相場とBTC(ビットコイン)相場の関係をひもとき、最近の動向、特に英ポンドを巡る混乱を元に今後のBTC相場へのヒントはないかを探っていきたい。

為替とビットコインの関係

BTC/USDとドルインデックスの相関係数

(出典:Bloombergより楽天ウォレット作成)

 まずBTC相場と為替相場の相関性を見ると2020年半ばごろを機にトレンドが転換していることが見て取れる。大まかに見て2020年以前はさほど相関関係は見られなかったが、2020年以降は逆相関関係に振れ始めている。

 2020年以降ドルと逆相関関係になった要因は、米国の機関投資家の参入との関係が影響している可能性がある。

 それまで既存のアセットとの相関性の低さとインフレヘッジとしての役割を期待され、米機関投資家のポートフォリオの一部に組み込まれた結果、2020年以降、米株相場との相関関係が高まった。既存アセットクラスとの相関関係が高まった結果、ドルとの相関関係が高まった訳だ。

BTC/USDとナスダック総合指数の相関係数

(出典:Bloombergより楽天ウォレット作成)

 2020年以前はおおむね0.5以下で相関関係があるとは言い難いが、どちらかといえば順相関サイドで推移した。この一因として人民元との関係が考えられる。

 かつてキプロスショックでBTCが急騰、最近ではロシアの資本規制とルーブル安でBTCが買われたことがあったように、BTCは法定通貨の逃避先という性格を持つ。資本規制が厳しい中国では潜在的に資本逃避のニーズが高い。

 そこで人民元安が進んだ際に逃避先の一つとしてBTCが選好された結果、ドル高とBTC高が同じタイミングで発生しやすくなった。しかし2020年のデジタル人民元の登場以降、BTCに対する国内での締め付けが強化、ついにはマイニングまで禁止され、それ以降は関係が薄れた(もしくはドルとの逆相関関係が強まった)形だ。

BTC/USDとUSD/CNYの相関係数

(出典:Bloombergより楽天ウォレット作成)

 このように為替相場とBTC相場との関係は、BTC相場のメインプレーヤーが中国から米国に移行したのと共に関係を変えていったが、為替レートやインフレなどで法定通貨の価値が下がりそうな際の逃避先という点では一致している。

 こうした法定通貨への不信といった状況が世界各地で起こり始めている。