社会の変化が、五輪選手の女性比率と金価格の動向を変化させた。

図:五輪選手に占める女性比率と金価格

出所:IOCの資料およびブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 先述の「夏季五輪における各種データ」で示したとおり、五輪では女性選手の人数が増加しています。この点を上図で女性比率として表現しました。また、同時に、金価格の推移を記しました。

 1970年ごろから、女性選手の比率と金価格が、勢いを伴って上昇しはじめたことがわかります。2つが相関関係にある(2つが関わり合っている)わけではありませんが、同じ理由で、2つが上昇しはじめたと、考えられます。

 その要因とは、社会の変化です。女性選手の比率の上昇は、多様性を重視するムードが強くなったことで起き、金価格の上昇は、世界の経済発展が進み、莫大な資金供給を可能にするため、金(ゴールド)を裏付けとする通貨制度を廃止したことによって起きたと、考えられます。

 多様性を重視した社会を実現すること、そして、経済発展を続けることを実現することは、われわれ人類の望みと言えるでしょう。特に多様性を重視した社会を実現することについては、国によって濃淡はあるものの、近年特に、議論が深まりつつあるように、感じます。

 ここまで述べた、五輪の各種資料やデータから、1970年ごろ以降、女性選手の数が目に見えて増え、そして比率が上昇していること、それに伴い、男女混合や女子選手のみの競技や種目が増えて競技数・種目数が増えていることが、わかりました。メダルの裏面のデザインを、開催国が選べるようにもなりました。

 その意味では、五輪は、多様性を重視した社会を実現したいという人類の望みを、一定程度、体現していると言えそうです。政治的な色合いが濃くなったり、扱う資金の額が巨額になりすぎたり、パンデミックなど強い外的要因にさらされ、機動的に方針を決められなかったり、さまざまな課題はあるものの、各種データからは、五輪がここまで紡いできた成果の一部を確認できたような気がします。

 ではこのような五輪のデータから得られた考察は、金価格の今後を考えるために、どのように活かすことができるのでしょうか。