トルコリラ/円が急落。値ごろ感で相場のポジションを取ってはいけない

 トルコリラが急落した。トルコリラは日本人の取引が圧倒的に多い通貨ペアである。

「下落のきっかけは15日、エルドアン大統領がトルコ南部のインジルリク米軍基地について「必要なら閉鎖する」と述べたことだ。米上院が1世紀前のオスマン帝国時代に起きたとされるアルメニア人虐殺事件について「ジェノサイド(虐殺)」と認定する決議案を可決したのに反発した。

 米トルコ関係の悪化は、2018年の通貨危機「トルコショック」の引き金にもなった。ただ、今夏以降は度重なる政治的ショックにもかかわらずリラは安定した値動きをみせていた。市場関係者の間では、3つの国営銀行がリラを買い支えてきたとの認識が一般的になっている。

 ただ、国営銀の介入について著名エコノミストのアティラ・イェシラダ氏は「このところ動きがない」と指摘する。通貨安で伸びていた輸出は10月、前年同月をわずかに下回るなど陰りがみえてきた一方で、輸入は8%増と急増している。同氏は政府が輸出促進のためにある程度のリラ安を容認しているのではないかとみる。

 トルコ中央銀行は12日、主要な政策金利の1週間物レポ金利を2%下げ、12%とした。実質金利は1~2%程度まで下がったとみられ、リラ安をもたらす素地もできていた。」

(『トルコリラ急落、半年ぶり安値 国営銀行が介入停止か』 12月21日 日経新聞)

 セミナーなどでよくトルコリラの損失についての相談を受けるが、トルコリラのような流動性のない通貨は、決して運用のメインにしてはいけない。

 過剰流動性相場の危機のシグナルは、流動性のない商品が売られることである。日本の銀行が買っているCLO(ローン担保証券)やジャンク債もトルコリラと同様の商品だ。昨今の相場では、流動性リスクのある商品も運用難に苦しむ投資家の買いですぐに持ち直すことも多い。しかし、得られる金利に比べて、取っているリスクが大きすぎるという事実を忘れてはいけない。

 50円からのトルコリラ/円の長期下げ相場の教訓は、いくら金利が入るにせよ、値ごろ感で相場のポジションを取ってはいけないということだ。損切りをして、利を伸ばすことが相場の王道である。

【トレンドフォローはオプションの買いに似ている。ストップロスで損失は限定されていて、トレンドが続けば大きな利益が得られる。だからこのトレーディング手法は「損切りをし」「利を伸ばす」ことだ。もちろん、何度もトレンドが進展しないで終わると、限られた損失も積み重なって大きな損失になる場合もある。私は言いたい。人間性に反するような難しいトレンドフォロー(高値を買ってさらに高値を売る・安値を売ってさらに安値で買い戻す)を行うことで、トレーディングの利益は得られるのだと。ここで規律が登場する。心理面での準備や何カ月ものシステムの検証が必要になる。そして、トレーダーは人間の本性に反するトレードを実際に行う自信を身につける】(マイケルラリー・グラハムキャピタルマネージメント社長)

【私たちは必ずしも特定の時期にうまく乗れるわけではない。だが注意深く検討すれば、不確かな世界でも最も理にかなう投資哲学はトレンドフォローだ。トレンドフォローは高値で買ったり安値で空売りする。19年間、私たちは一貫して高値で買い、安値で空売りした。もしトレンドが市場の根本的な性質でなければ、私たちのような取引手法ではたちまち廃業に追い込まれていただろう。しかし、トレンドはこの世の不可欠で根本的な現実だ】(ジョン・W・ヘンリー)

 現在、トルコリラ/円相場は日足と週足の両方で売りトレンドが発生している。流動性の落ちる年明けの相場には警戒が必要だろう。

トルコリラ/円(日足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル

出所:楽天MT4・石原順インディケーター

トルコリラ/円(週足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル

出所:楽天MT4・石原順インディケーター

トルコリラ/円(月足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル

出所:楽天MT4・石原順インディケーター