先週は14日(火)発表の米国10月CPI(消費者物価指数)で物価高の着実な鈍化が確認されたことを受け、米国でも日本でも株価がほぼ全面高の展開となりました。

 日経平均株価(225種)はCPI発表直後の15日(水)に前日比823円高と今年一番の上げ幅を記録し、17日(金)終値は前週末比1,017円高の3万3,585円まで上昇しました。

 トヨタ自動車(7203)をはじめ時価総額の大きい重厚長大産業の割安株の組み入れ比率が高いTOPIX(東証株価指数)の17日(金)終値も、前週末比3.1%高の2,391ポイントまで上昇しました。

 しかし、週明け20日(月)の東京株式市場では、日経平均の終値は前週末比197円安の3万3,388円となりました。午前の取引時間中には前週までの流れを受け、上げ幅が一時、260円を超え、バブル経済崩壊後の取引時間中最高値を更新、1990年3月以来の高値を付けました。しかし、その後は過熱感への警戒から利益確定売りに押されました。

 米国では物価高の鈍化で「これ以上、利上げしなくていい状況」になれば、いまだ景気や雇用が堅調な米国経済がソフトランディング(軟着陸)もしくはノーランディング(無着陸)する可能性も高くなります。

 先週の米国市場もそんな期待感に沸き返り、機関投資家が運用指針にする17日のS&P500種指数は前週末比2.2%高。

 利上げ打ち止めが株価上昇に最もつながりやすいハイテク株が集まるナスダック総合指数は前週末比2.4%高でした。

 10月23日(月)に一時5%台まで急上昇して、株価下落の元凶になっていた米国長期金利の指標である10年国債の金利も11月16日(木)には一時4.3%台まで急低下しており(終値は4.44%)、今週も米国金利の低下が株価上昇を下支えしそうです。

 ただ、今週21日(火)夜には、2会合連続で利上げ見送りを決めた11月1日(水)終了の米国FOMC(連邦公開市場委員会)の議事録が公開されます。

 先週も16日(木)にクリーブランド地区連邦準備銀行のメスター総裁が「(利上げ停止には)インフレ率が目標の2%に戻りつつあることを示す一段の証拠が必要」と発言。

 米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)高官の中には、いまだ金融引き締めに積極的なタカ派も多いため、FOMC議事録にも注目が集まりそうです。

 今週は23日(木)が日本は勤労感謝の日、米国は感謝祭の祝日でともに休場です。

 ここまで株価の上昇がかなり急ピッチだったため、祝日前の利益確定売りで上昇相場が一時停止する可能性もありそうです。

先週:インフレ高金利時代は終焉?米国の物価の鈍化が鮮明に!

 先週は米国の物価高の沈静化が非常に鮮明になった1週間でした。

 14日(火)発表の米国10月CPI(消費者物価指数)は前年同期比3.2%の伸びと予想以上に伸び率が鈍化し、変動の大きいエネルギーと食品を除くコアCPIも前年同月比4.0%増と9月の4.1%増から伸び率が低下しました。

 エネルギーや中古車はすでに前年同月比で大幅下落しており、高止まりが続くサービスや住居費の伸び率も軒並み鈍化する非常によい結果でした。

 さらに15日(水)発表の10月PPI(卸売物価指数)はガソリン価格低下の影響で前月比0.5%下落と予想の0.1%上昇に反して、低下しました。

 これはコロナ禍に見舞われた2020年4月以来、約3年半ぶりの物価の下落幅になります。

 同日発表の10月の米国小売売上高も前月比0.1%減と7カ月ぶりにマイナスに転じ、米国消費者の旺盛な消費もインフレ疲れや高金利の浸透で適度に減速しつつあります。

 イスラエルとパレスチナ武装組織ハマスの戦闘が長期化して市場の関心が薄れつつあるため、一時急騰した原油価格も、WTI原油(西テキサス地域産の中質原油)が1バレル=73~75ドル台まで、9月高値から20%以上も下落しました。

 2022年~2023年にかけて世界の株式市場を悩ませてきたインフレに収束の兆しが見え始めました。

 また、米国では米国政府の支出を認めるつなぎ予算案の期限切れが先週17日(金)に迫っていましたが、14日(火)に米国議会下院で共和党保守強硬派の一部も含む共和・民主両党の賛成多数で可決。

 15日(水)には議会上院も通過し、バイデン大統領の署名手続きも終え、最長で来年2月2日まで米国政府機関の閉鎖リスクが回避されました。

 15日には米国のバイデン大統領と中国の習近平国家主席が1年ぶりに会談し、軍事対話の再開で合意しましたが、株式市場にあまり大きな影響はありませんでした。

 インフレが鈍化し、原油価格が下落して金利が低下すると、資源株や銀行株などには逆風です。

 しかし、先週14日(火)に350億円を上限にした自社株買いや、株主配当金の大幅増配を発表した石油元売り大手の出光興産(5019)の17日(金)終値は前週末比22.6%高。

 積極的な株主還元期待から、石油・石炭製品セクターが先週の業種別上昇率ランキングのトップに輝きました。

 また、株価が割高で金利低下が追い風の半導体関連株も絶好調です。

 10月末に上場したばかりの半導体成膜装置のKOKUSAI ELECTRIC(6525)は17.2%高と、もはや人気花形株の一角になっています。

 主力の東京エレクトロン(8035)も8.7%高で年初来高値を勢いよく更新し、2023年の上げ幅は前年末比86.1%高と、2倍近い上昇になっています。

 今週21日(火)日本時間夜には、生成AI(人工知能)の主力株である米高速半導体メーカーのエヌビディア(NVDA)の決算発表も予定されており、その結果次第では半導体株を中心に日米ハイテク株の大幅上昇に期待できそうです。

今週:米FOMC議事録に注意!日本株に第2のバフェット相場到来?

 週明け20日の日経平均株価は午前の取引開始後早々にバブル経済崩壊後の最高値を更新しました。しかし、ハイテク株などはいったん値を伸ばしたものの利益確定売りに押され、午前終値は前週末比22円安の3万3,562円となりました。TOPIXも下げました。

 先週までの上昇が急速だったため反動が出た形ですが、今週、株価の反発にはまだ期待が持てそうです。

 日本株が本格上昇するためには海外投資家の大規模な買いが必要です。

 11月第2週(11月6~10日)の海外投資家の現物株の買い越し額は783億円とわずかでしたが、先物取引では1兆円以上の大幅買い越しとなっており、外国人も短期的な日本株の上昇を見越しているようです。

 今週、最も注目されそうなのは10月31日(火)~11月1日(水)に開催され、9月に続いて利上げ休止を決定した米国のFOMC(連邦公開市場委員会)の議事録公開です。

 FOMCの参加理事らが今後の政策金利の水準を予想した9月発表の「ドットチャート」の2023年末の政策金利の中央値は5.625%。

 それに対して、2会合連続で利上げ見送りを決めた現状の米国の政策金利は上限が5.5%で下限が5.25%です。

 つまり、FOMCの参加理事らの9月時点の予想中央値では、年内にもう一回の利上げが行われる可能性が依然残っています。

 しかし、物価高も沈静化してきたため、9月時点の予想から想定する金利水準を引き下げるような議論が行われていれば、12月13日(水)終了の年内最後のFOMCでの利上げ見送りが確実視されるため、株価の上昇に弾みがつきそうです。

 その点が曖昧なまま、いまだ年内追加利上げに含みを持たせる内容だった場合は逆に金利上昇、株価下落の流れになりそうです。

 もう一つ気になるニュースといえば、米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる世界最大級の投資会社バークシャー・ハサウェイ(BRK-A,B)が自動車メーカーのゼネラル・モーターズ(GM)全株や資源会社のシェブロン(CVX)株など、大量の保有株を売却していたことです。

 これは14日(火)夜に米証券取引委員会(SEC)に同社が届け出た2023年9月末の保有銘柄リストから明らかになりました。

「投資の神様」ともいわれるバフェット氏が米国の景気後退を予想しているシグナルといえるでしょう。

 もしバフェット氏の読み通りだとすると、2024年は高金利の悪影響による米国の景気後退が予想以上の深刻さで進み、株安トレンドが再燃する可能性もあります。

 一方、17日(金)には、同じバークシャー・ハサウェイが総額1,220億円の円建て債を発行する計画が明らかになっています。

 今後、バフェット氏が日本の保険株や銀行株、もしくは自動車株などの大量保有を発表するのではないかという観測も流れています。

 そうなれば、2023年4月にバフェット氏が来日し、三菱商事(8058)など五大商社の株式買い増しを表明したことで、4月から6月にかけて日本株全体が上昇した「バフェット相場」の再来に期待が持てるでしょう。

 日本は長年のデフレ不況をなんとか克服し、物価高や緩やかな賃金上昇を伴う景気回復がようやく始まったばかり。

 日本経済に対する外国人投資家の期待感が高まれば、2024年も日本株優位の時代が続く可能性もあります。

 もし2023年末で終了する一般NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の非課税投資枠がまだ余っているようなら、日経平均株価やTOPIXに連動するインデックスファンド、金利正常化で収益改善が見込め、配当利回りも高い日本の保険・銀行株などに一部資金を投資するチャンスかもしれません。