先週の株式市場は途中、乱高下する場面もありましたが、先週に引き続き上昇しました。

 例年、株式相場は11月から12月の年末に向けて上昇が続きやすいことから、今週も季節的な強さに対する投資家の期待感が高まり、続伸に期待が持てそうです。

 日経平均株価(225種)の先週10日(金)の終値は前週末比618円高の3万2,568円まで上昇。

 機関投資家が運用指針にする米国のS&P500種指数も10日、前日比1.5%超も続伸し、週間でも1.3%高とプラスとなりました。

 その流れを受けて、週明け13日(月)の東京株式市場の日経平均株価は反発して始まり、半導体関連に買いが集まり、前週末終値比で上げ幅は一時300円を超えました。しかし、心理的節目の3万3千円台に近づくと利益確定売りに押され、17円高の3万2,585円となりました。

 株価上昇の最大の要因は米国の長期金利の指標となる10年国債の金利が10日(金)に4.6%台まで低下するなど、かなり落ち着きを取り戻したことです。

 9日(木)のIMF(国際通貨基金)の会議では、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が「金融政策のさらなる引き締めが適切なら、ためらわない」と、相変わらず高金利の長期間継続に積極的なタカ派的な発言を繰り返しました。

 その発言に動揺し、10月30日(月)から8営業日連続で続いていたS&P500種指数の上昇は打ち止めになったものの、10日(金)夜の米国株は良好な雇用情勢や好調な企業業績を背景に米国経済がソフトランディング(軟着陸)するという楽観ムードが台頭し、大幅に上昇。

 どんな懸念材料も長く続くと、あまり状況が変わらなくとも、いつかは無視されるもの。

 今週もFRBの高金利政策の効果で14日(火)発表の米国10月CPI(消費者物価指数)が鈍化の方向に向かえば、楽観ムードに拍車がかかり、さらなる上昇に期待が持てそうです。

先週:米国の金利低下で株価続騰、相場の主役はハイテク株に交代!?

 先週6日(月)の日本株は先々週3日(金)夜に発表された米国の10月雇用統計で新規雇用者数が鈍化したことを受けて上昇。

 日経平均株価は758円高と、2023年一番の上げ幅となりました。

 上昇が急だったことによる利益確定売りでいったん下落しましたが、9日(木)、10日(金)には反発し、日経平均株価は10月30日(月)始値から11月10日(金)終値まで、2週間で実に1,904円も上昇しました。

 この2週間は日本企業の2023年7-9月期の決算発表が集中した時期です。

 結果的に見ると、外需株は1ドル=151円台に到達した円安、内需株は値上げやインバウンド(訪日外国人)需要による業績好転が目立ったことで、全体相場も大きく上昇したといえるでしょう。

 ただ、6日(月)に投資先の米国オフィスレンタル会社WeWork(WE)が破たんしたソフトバンクグループ(9984)は、2023年4-9月の半年間の最終赤字が1兆4,087億円に達し、10日の株価が前週末比7.8%も下落。

 原油価格の急落や中国経済減速の影響を受け、世界各地に石油権益を持つINPEX(1605)が前週末比6.4%安、海運会社大手の日本郵船(9101)が2.4%安となるなど、気がかりな動きもありました。

 また、メガバンクの三井住友フィナンシャルグループ(8316)は6.1%安、みずほフィナンシャルグループ(8411)は6.9%安と急落。

 一時0.9%後半まで上昇した日本の10年国債の金利が米国の金利低下を受けて10日(金)に0.84%台まで低下したこともあり、金利低下が収益減少につながる銀行株は上げ相場の終わりを感じさせるような下げに見舞われました。

 その一方で株価上昇が目立ったのが半導体関連株です。

 半導体洗浄装置で世界的なシェアを誇るSCREENホールディングス(7735)は業績好調で株価の格付けが引き上げられたこともあり、10日、前週末比15%高で上場来高値を更新しました。

 10月末に新規上場したばかりの半導体成膜装置のKOKUSAI ELECTRIC(6525)は9日(木)に2024年4-9月期の純利益が前年同期比57.8%の減益となる決算を発表しましたが、10日(金)の株価は前週末比7.5%高まで上昇。

 同じ上昇相場といっても、資源、海運、銀行といった重厚長大産業の割安株は低調、半導体関連に代表される電気機器セクターが堅調といったように、主役交代が起こりつつあります。

 こうした主役交代にいち早く気づくと、個別株への投資でも大きな利益を上げやすくなります。

 先週は10月以降、乱高下が続いた米国の長期金利が4.5%前後で横ばい推移したこともあり、米国でも、株価が割高で金利低下が追い風になるハイテク株主体のナスダック総合指数が前週比2.4%高。

 S&P500種指数の伸び率を大きく上回りました。

 では、米国の金利低下は今後も続くのでしょうか?

 9日(木)にパウエルFRB議長は旺盛な個人消費など需要サイドの伸びを抑制するために「もう一段の金融引き締めをためらわない」と、浮かれる株式市場をけん制しています。

 10日(金)発表の速報性が高い米ミシガン大学の11月消費者信頼感指数(速報値)は予想以上に低下し、パウエルFRB議長が懸念する強すぎる個人消費もさすがに鈍化しつつあるようです。

 ただ、同指数とともに発表された1年先、5年先のインフレ期待率は上昇しています。

 将来物価が高くなると思う消費者が増えると、「価格がもっと上がる前に買っておこう」という需要が増えるため、物価がますます上昇することになります。

 このような負のスパイラルは、国債の金利上昇にも潜んでいます。

 なぜなら、国債の金利が上昇すると、利子の支払い額も増えるため、その利子を払うためにさらに国債を発行して借金を増やさなければならないからです。

 実際、米国財務省の国債の発行額は増加が続いており、利払いを支払うためのさらなる国債発行による需給悪化が、米国金利の高止まりにつながる懸念が解消されたわけではありません。

今週:米国10月CPIや小売売上高次第で続伸!?米国債格下げリスクに注意!

 株式市場の雰囲気が好転した今週の日本株は週明け以降、さらに大きく上昇しそうです。

 その上昇に弾みをつける可能性もあるのが、14日(火)の米国10月CPIの発表です。

 事前予想ではガソリン価格の低下で前年同月比3.3%の伸びと、9月の3.7%の上昇から伸び率が鈍化する見通しになっています。

 15日(水)には旺盛な米国個人消費の動向を占う10月小売売上高も発表になりますが、こちらも前月比マイナス0.1%の減少が予想されています。

 予想外に米国の10月のCPIや小売売上高が強含んだ場合、パウエルFRB議長の警告通り、12月13日(水)終了の2023年最後のFOMC(米連邦市場公開委員会)での追加利上げに対する懸念が広がる恐れもあります。

 15日(水)には、物価の先行指標といわれる米国の10月PPI(卸売物価指数)や11月のニューヨーク連銀製造業景気指数など経済指標の発表が相次ぎます。

 日本では、2023年7-9月期決算が13日(月)の鹿島(1812)など割安株の多いゼネコン各社、14日(火)の三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)など銀行各社の発表でほぼ出尽くします。

 ゼネコン株や銀行株は先週、上昇相場の主役交代もあって下落する銘柄も多かっただけに、株価が持ち直すかどうかに注目が集まりそうです。

 さらに今週の懸念材料は、9月30日(土)に米国議会で可決された米国政府の歳出を暫定的に認めるつなぎ予算法の期限が17日(金)に切れること。

 17日(金)の期限切れまでに新たなつなぎ予算法案が成立しない場合、18日(土)以降、再び米国政府の一部機関が閉鎖されるリスクが高まります。

 前回の法案成立後に米国議会下院で選出された共和党保守派のマイク・ジョンソン議長は11日(土)、最大2024年2月2日までの政府支出が可能になる新たなつなぎ予算法案を提示し、早ければ今週14日(火)に下院での可決を目指す意向です。

 しかし、この新つなぎ予算法案には、共和党保守強硬派が要求している政府支出の即時30%削減などは盛り込まれていません。

 法案自体は共和党穏健派と民主党の妥協で成立する可能性が高くなりましたが、そうなった場合、共和党保守強硬派の反発が必至です。

 そんな中、先週10日(金)にはムーディーズ・インベスターズ・サービスが米国債の格付け見通しを「ステーブル(安定的)」から「ネガティブ」に引き下げました。

 格付け自体は最上級の「Aaa」を維持したものの、もし米国議会の紛糾が長引き、同社が米国債格下げに踏み切れば、米国債への売り圧力が高まって再び金利が急上昇するリスクも高いでしょう。

 米国の新つなぎ予算法の審議や米国債格下げを巡る動きで、せっかくの上昇相場が急変する恐れもあるので注意が必要です。