金(ゴールド)が大幅上昇。「材料の足し引き」とは?

 以下は、世界の金(ゴールド)価格の指標の一つ、NY金先物価格の推移です。足元(赤の網掛けの期間)、価格が大きく上昇していることがわかります。

 今年春から夏までは、米国で金融緩和の縮小(テーパリング)が始まるとの観測から、金(ゴールド)相場は下落しました。テーパリング開始によって、米ドル相場が強い基調になり、相対的に金(ゴールド)を保有する妙味が低下するとの見方が浮上したためです。

図:NY金価格(日足 終値) 単位:ドル/トロイオンス

出所:ブルームバーグのデータより筆者作成

 足元の金(ゴールド)市場の材料を確認すると、以下のようになると、筆者は考えています。冒頭の騰落率のグラフのとおり、足元、「株高・ドル高」であるため、代替資産(株の代わり)、代替通貨(ドルの代わり)の側面から、金(ゴールド)市場に下落圧力がかかっていると、考えられます。

図:足元の、金(ゴールド)市場における6つのテーマ

出所:筆者作成

 しかし、実際のところ、金(ゴールド)価格は上昇しています。この値動きを説明するには、簡単な「材料の足し引き」が必要です。足元の金(ゴールド)市場は、「株高・ドル高」起因の下落圧力を相殺して余りある上昇圧力を受けている、ということです。

 その上昇圧力は、「各種リスク拡大」と「インフレ懸念」がきっかけで発生していると考えられます。これら2つの材料は、6つのテーマの「有事のムード」と「代替通貨」に分類できます。

「インフレ(物価高)懸念」は、換言すれば「(相対的な)通貨安懸念」であり、その通貨安懸念が、「代替通貨」の側面から、金(ゴールド)相場に上昇圧力をかけます。

 また、「有事のムード」を強めている各種リスクについては、先々週のFOMC(米連邦公開市場委員会)でテーパリングが決定したことにより、「利上げ」が現実味を帯び始めたことが関わっていると、筆者はみています。