日本は輸入大国。海外の原材料+為替+運賃など、考慮すべき点は複数

 各種コモディティ価格が上昇していることを受け、以下のとおり、日本における輸入価格も上昇しています。この点は、私たちに身近な品目の価格上昇をより強く、裏付けています。

図:日本における輸入価格の変化(2020年8月と2021年8月)

出所:財務省の貿易統計をもとに筆者作成

 日本が「原材料輸入大国」である理由には、自国で生産をすることが難しい(地理や気象条件などのため)、輸入したほうが効率が良い(人件費などのため)、輸入先との関係維持のため(相手の経済発展に資する)、などが挙げられます。

 原材料の生産から日本に住んでいる私たちが消費するまでを、川の流れに例えると、以下のようになります。「原材料輸入大国」は、各種コモディティの国際価格(最上流)のほか、運賃相場や為替(川中)、国内における加工・物流コスト(川中から川下)の影響も受けます。

図:わたしたちに身近な商品が手元に届くまで

出所:筆者作成

 先述のとおり、私たちに身近な品目の値上げについて、大手企業は主な理由を、生産地での天候不順による供給障害としていました。つまり、「最上流」で、価格を上昇させる要因が発生したと、しているわけです。

 しかし、原材料の生産地と消費者が遠ければ遠い(加工や流通の過程が多い)ほど、最下流の価格の変動は最上流の価格と連動しないこともあります。

 仮に最上流で価格上昇が見られても、加工や流通、あるいは小売業者が、安く買いたいと考える消費者の意向に沿うため、価格上昇分を吸収する(業務効率化で別のコストを減らすなど)ことがあるためです。

 とはいえ、さまざまな品目で値上げが相次いでいることを考えれば、もはや業者たちが価格上昇分を吸収することが、限界に達していると、考えられます。それだけ、最上流での価格上昇がきついのだと思います。

 また、最上流の価格上昇に乗じて最上流価格の上昇以上に末端価格を上昇させることを「便乗値上げ」、末端価格を上昇させなくても内容量を減らす「ステルス値上げ」などが、起きることがあります。こうなると、最上流価格が下落しても、末端価格が下落せずに、最下流の価格の変動は最上流の価格と連動しない場合があります。