※この記事は2020年8月9日に掲載されたものです。

06:金先物取引とは?

どんな商品?

 金先物の説明の前に、まずは先物取引について、解説をします。

◆先物取引とは

 先物取引とは、おおまかに言えば、「先」に価格を決めて、あとで「物」の受け渡しをする取引、です。例えば半年後に、とうもろこしを調達しようとしている業者がいたとします。その業者は、先物市場で売買されている半年後に期限(納会日)が到来する取引を利用することで、今の価格で買う約束をして(先に価格を決めて)、半年後に金を受取る(あとで物を受取る)ことができます。

 この場合、半年後に業者が金を受取る時の価格(単価)は、買う約束をした時の価格です。半年後にいくら価格が上昇していても、下落していても、買うと約束をした半年前の価格で受け取る(とうもろこしを購入する)ことができます。また、実際に金を持っている業者が、今の価格で売る約束をして(先に価格を決めて)、半年後に金を渡す(あとで物を渡す)こともできます。この時、業者が渡す時の価格は、売る約束をした時の価格です。

◆金の先物取引とは

 金の先物取引とは、この業者間の取引で発生する金の売買差額を利用して利益を得る取引です。個人投資家は、ほとんどの場合、実際に物を受け取ったり渡したりせず、約束した権利を決済して放棄し、取引を終了します。

 約束した時の価格と、決済した時の価格の差額が、損益の源泉です。買う約束をして取引をはじめ、約束をした時の価格よりも、高い価格で決済をすれば、利益が得られます。また、売る約束をして取引をはじめ、約束をした時の価格よりも、安い価格で決済をすれば、利益が得られます(実際は取引手数料を考慮する必要があります。相場が思惑と反対に動いた時、損失が発生します)。

 取引参加者は取引を開始する際、口座開設をした業者に証拠金(しょうこきん)を差し入れます。2020年7月時点で金の証拠金は1枚(取引の最低単位)あたりおよそ23万円です。例えば、金価格が6,200円の時に、最低単位の1枚、証拠金の23万円を差し入れて買う約束をして取引に参加したとすると、実質的に、金の価格(単価)に取引単位(1枚=1,000グラム)を乗じた620万円(総代金)分の取引を行っていることになります。

 とはいえ、買うあるいは売る約束をした時点では、総代金の受払いは行われません。また、ほとんどの個人投資家が行っているように、納会日が到来する前に決済をすることを前提にすれば、証拠金のみで取引に参加することができるわけです。つまり、ざっくり、上記の例で言えば、23万円で、そのおよそ26倍の620万円分の取引ができるのです。

 このため、価格が思惑通りに動いた場合は利益が大きくなります。しかし、思惑に反して動いた場合は損失が大きくなります。証拠金以上の損失が発生する場合があるため、資金に余裕を持たせ、大きなリスクを許容できる状態で取引しなければなりません。

こんな人におススメ

・FXや、株価指数先物など、少額の資金で大きなお金を動かす取引の経験がある人
・ダイナミックな値動きの投資に挑戦したい人
・リスクを取ってでも、大きな利益を狙いたい人
・資金に余裕がある人

始め方

 証券会社や商品先物会社に商品先物取引の口座を開設します。

コスト

 口座の維持・管理料は発生しません。

 売買手数料がかかります。

※楽天証券の場合、片道250円+消費税/1枚、ミニ銘柄・金スポット(金限日)は片道70円+消費税/1枚です。

メリット

 先程、23万円の証拠金で620万円分の取引ができる例を示しましたが、証拠金の26倍程度の額の資金を動かしているわけですので、資金効率は高いと言えます。このため、価格が思惑通りに動いた場合、利益が大きくなります。

 また、買い、売り、どちらからでも取引をはじめることができます。値上がりを予想する場合は買いから、値下がりを予想する場合は売りから、取引をはじめます。

リスク

 金価格が思惑に反して動いた場合、損失が発生します(金価格は、有事のムード、各国の金融・財政政策、新興国の動向、中央銀行の動向など、さまざまな要因で動きます)。

 また、商品先物取引は、資金効率が高いため、価格が思惑に反して動いた場合、損失が大きくなります。損失が発生した場合、証拠金の金額以上の損失が発生する場合があります。資金に余裕を持たせ、大きなリスクを許容できる状態で取引をすることが重要です。

 また、金関連の投資信託やETFと同様、配当はありません。

アドバイス

「先物取引の特性上、取引に期限がありますので(納会日が到来する)、金関連の投資信託やETFのように、数年、数十年などの長期にわたって同じポジション(建玉 たてぎょく)を保有し続けることはできません。

 また、実質的に、証拠金の数十倍の額の取引を行うことになるため、他の投資商品に比べても、利益も損失も、短期間で大きくなる傾向があります。このため、商品先物取引は、仕組み上、長期投資になじみません。比較的短期間で売買を完結させることを前提に、資金に余裕をもたせ、大きなリスクに耐えられるように、例えば、100万円を預けても20万円分だけ、取引に用いるなどの工夫が必要です」(吉田哲

税金について

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■知識ゼロからの投資・金投資入門講座

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02 「純金スポット」とは? 

03 「金関連の投資信託」とは?

04 「金ETF」とは?

05 「産金株」とは?

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