CASE03:暴かれた「隠し口座」は本当にあった?

世界を揺るがす「パナマ文書」事件。
真相はまだ闇の中…

 第3話のクライマックスでは、三葉銀行「隠し口座」の秘密が、鷲津(綾野剛)によって暴かれます。この「隠し口座」は、バブル崩壊後、日本企業が「財テク」などの損失を「飛ばす」ために作った海外ファンドを思い起こさせます。その組成を積極的に後押ししたのは、日本の銀行ではなくスイス系の金融機関。損失を隠したい日本企業に次々と接近し、損失飛ばしファンドを組成して荒稼ぎしたことが、後に明らかになり、大問題となりました。

「隠し口座」の話は、2016年4月に暴露された「パナマ文書」を思い出した方も多いのでは? 世界中の有力企業や大物政治家が、何十年にもわたり、資産隠しや税金逃れのために海外ファンドを利用していた事実が、パナマ文書の解読によって明らかになりました。日本の大手企業や富裕個人もそこに名を連ねており、その裏で、さまざまな外資系企業が暗躍していたのです。

 ところで、第3話のもう1つのクライマックスは、経営不振の老舗『日光みやびホテル』の経営再建が動き出すところです。新たに就任した貴子社長(沢尻エリカ)が、MBO(マネジメント・バイアウト/経営者による会社買収)を実施することを決意します。

 マネジメント・バイアウトは、日本でも数々の実例があります。2005年まで東証一部上場企業だったアパレル大手「ワールド」は、創業家によるマネジメント・バイアウトで、非上場企業になりました。社長がファンドからお金を借りて、他の株主の保有株をすべて買い取り、MBOを実施、上場を廃止したのです。「短期的な株主利益に左右されず長期的な戦略を展開できる」と上場廃止を決めたワールドは、13年後の現在、再び、東証に上場申請しています。みやびホテル同様、再度の挑戦を見守りたいですね。

 

解説:窪田 真之(くぼた まさゆき)
楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジスト

 

「ハゲタカ」3話おさらい

 深刻な経営不振に陥った『日光みやびホテル』の社長に就任した松平貴子(沢尻エリカ)に、鷲津(綾野剛)は、『ホライズンジャパン・パートナーズ』が日光みやびホテルを買収することを宣言。取引銀行から債権と株式を手に入れ、親族が持つ株式も入手済みの鷲津だが、その狙いはホテルの再生にあった。

 一方で三葉銀行は、地方と企業を支援するプロジェクト『三葉ふるさとファンド』を設立し、『日光みやびホテル』を含む日光・鬼怒川の支援に乗り出す。しかし『三葉ふるさとファンド』の真の狙いは単なる地方支援ではなかった。選択を迫られる貴子が選んだのは?またその覚悟は?

~トウシル編集部員の視聴後レビュー~ ハゲタカ「ココに注目」!

 鷲津(綾野剛)には何か深刻な過去があるらしい、と思わせていた伏線が、3話でようやく明らかになりました。父親の死を経験した鷲津が叫ぶ「死ぬこと以外、かすり傷だ!」という台詞が重い。不肖ワタクシのモットーは「人生、生きてりゃもうけモン」なのですが、要約するとおんなじことになるはずなのに、綾野剛がシャープにキメるとこのかっこよさ。なんかもう”格”の違いを感じます。ハゲタカを逆に利用して雄雄しく羽ばたこうとする貴子(沢尻エリカ)の覚悟も、そこらの男よりオトコマエ。明日もがんばろう、となんだか元気が出た第3話でした。

▼バックナンバー

8/10Released! CASE01:日本初のバルクセール、その背景は!

8/17Released!  CASE02:再生できる企業を見抜くには!

8/20Released!  CASE03:暴かれた「隠し口座」は本当にあった?

8/21Released!  CASE04:敵対的買収に対抗する『ホワイトナイト』とは!

8/22Released!  CASE05:名門電機メーカーの凋落、悲しい日本の現実!

8/24Released!  CASE06:敵対的TOBは減少「表面は友好的に」が定番へ

8/31Released!  CASE07:後をたたない不祥事会見、企業倫理は「再生」できるか?

9/7Released!  CASE08:圧巻の最終回!次世代は鷲津が残した教訓を生かせるか?