CASE01:日本初のバルクセール、その背景は!

ハゲタカには見えていた、日本のバブル崩壊
甘い見通しで問題処理を先送りしていた大手銀行は窮地に!

 1997年、東京三菱銀行が、不良債権のバルクセールを始めました。バブル崩壊から7年、あまりに遅すぎる決断。「いつか不動産や株はまた元に戻る」と甘い期待をいだいて、処理を先送りしていたツケが出たのです。ハゲタカがつけた不良債権の買値は、元本の1割前後。ゆとりがなくなっていた日本の金融機関は、足元を見られているとわかっていても、安値で売却せざるを得ませんでした。

 東京三菱銀行は、まだ財務に余力があったため、バルクセールによる不良債権の最終処理に踏み切れました。ハゲタカにしてやられて悔しがる「三葉銀行」も、まだ生き残ることができただけ、ましだったというわけです。

「社員は悪くありません」と、涙ながらに山一證券社長が破綻を報告するのは、その翌年のこと。続いて、北拓、長銀、日債銀など大手金融機関が破綻。さらに、不動産・建設・金融の上場企業が、ばたばたと倒れていきました。東京三菱銀行のバルクセールは、日本の金融システム不安が本格化する序章に過ぎなかったのです。

「ハゲタカ」とは日本人がつけた呼び名。欧米では、「ディストレスト・インベスター(破産債権投資家)」といいます。

 1997年当時、私は、日本株のファンドマネージャーでした。日経平均先物を売り建てるなどして資産を守るのに必死でしたが、急落する銀行にほとんど投資しないで済んだのは、当時、ゴールドマンサックスに在籍していた銀行株のアナリスト、D・アトキンソン氏の分析をよく聞いていたから。彼は、92年ごろから、すでに日本のバブル崩壊を的確に予見し、銀行株には一貫して弱気の判断を下していました。97年にバブル崩壊したとき、その先見の明に感服したものです。

 

解説:窪田 真之(くぼた まさゆき)
楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジスト

 

「ハゲタカ」1話おさらい

 時は1997年。バブル崩壊後、大手銀行のひとつである三葉銀行は、回収困難な不良債権を投資会社に一括でまとめ売りする“バルクセール”を実施。外資系投資ファンド『ホライズンジャパン・パートナーズ』の代表・鷲津政彦(綾野剛=主演俳優)が買い手として名乗りを上げる。

 簿価総額は723億6458万円。三葉銀行側は「最低でも300億円で買い取ってほしい」と申し出るも、ホライズンジャパン(ハゲタカ)が最終的に提示したのは63億円。三葉銀行の役員が個人的に融資してこげついた案件や、経営内容最悪の企業を水増しして見積もりしたことをハゲタカに見抜かれた三つ葉銀行はこの金額を飲むしかなかった。

 三葉銀行は、二回目のバルクセール(1800億円の不良債権)を、ハゲタカを含む13社の競争入札で実施すると決める。ホライズンジャパン・パートナーズは、水面下で入札準備を開始。落札期限わずか数分前にホライズンジャパン・パートナーズが提示した額は?そしてその勝負の行方は?!

~トウシル編集部員の視聴後レビュー~ ハゲタカ「ココに注目」!

 第一話を視てとにかく印象深かったのが三葉銀行・常務取締役の飯島亮介(小林薫)。役員の個人的なこげつきを、バルクセールに便乗してちゃっかり処分しようとするなど、まぁとんでもないタヌキっぷり(笑)。金融機関の闇の部分をこってりと見せてくれました。闇に首まで漬かってる身としては流れに乗るしか生きるすべはないと諦観してはいるけれど、案外、日本の金融機関の行く末がぼんやりとでも見えていた人なのではないかとも思ったり…。アクの強いヒールぶりが見どころです!

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