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著者の松田 康生が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
5月のビットコイン見通し~半減期通過、ここからが本番?

4月のビットコインイベント

NEW! 4月4日 ビットコインキャッシュ(BCH)半減期
NEW! 4月20日 BTC半減期

*2024年1月以降の主なビットコインイベントは記事最終ページにまとめています。
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材料面から見た5月見通し

4月の振り返り

4月のビットコイン価格(円)とイベント

出典:Trading Viewより楽天ウォレット作成

 4月のBTC相場は上下に大きく振れながらも横ばいレンジでの取引。円建てでは1,100万円と史上最高値を更新したが、ドルで見ると5万9,000~7万3,000ドルの3月のレンジ内での取引に終始した。

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ETFフロー

 先月「1月以降のBTCの上昇はほぼETF(上場投資信託)フローで説明できる」と申し上げた。1月11日のローンチ直後に4万9,000ドルでピークを付けるとSell the Fact(噂で買って事実で売れ)気味に失速、ETFフローがマイナスとなる中、3万9,000ドル割れまで値を下げた。

 しかし2月8日辺りからETFフローが急増、相場を大きく上昇させると、3月5日に2021年11月に付けた史上最高値6万9,000ドルを更新、14日に7万3,000ドル台半ばまで上値を伸ばした。その後、徐々にフローは減少し始めると、ETFフローに一喜一憂する展開が続いた。

FF先物利下げ織り込み回数

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利下げ期待

 この様にETFフローに陰りが見え始めると他の要因の影響も目立ち始めた。まずFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ期待の後退。月初のISM(米サプライマネジメント協会)製造業が景況感の分かれ目となる50を上回り、5日の雇用統計では非農業部門雇用者数が30万人超と予想を大きく上回った。

 とどめは10日のCPI(消費者物価指数)、これがヘッドライン・コアともに予想を上回り、6月利下げ観測がほぼ消滅、7月利下げ織り込みも5割を割ってきた。これが相場の上値を重くした。

中東情勢

 続いて中東情勢の悪化が大きな押し下げ要因となった。4月1日イスラエルがシリア国内にあるイラン大使館を空爆、さらに2日にはガザ地区で食糧支援を行っていたNGOも爆撃した。これに怒ったUAEが同国との外交関係を解消するとの懸念からBTC相場も一時値を下げた。

 その後、半減期への期待感もありBTCは7万2,000ドル台に値を伸ばしたが、イランがイスラエルに反撃する見通しだとの懸念から急落、実際にイランからの攻撃が始まると6万4,000ドル近辺まで値を下げた。

 しかし、事前の通告とイスラエルと欧米の迎撃により被害が限定的に終わると、報復の連鎖は回避されるとの見方からBTCは6万7,000ドル近辺まで持ち直したが、同国軍幹部が反撃を明言すると6万2,000ドル台に、仏独の説得にもかかわらず同国首相が反撃をほのめかすと5万9,000ドル台に値を下げた。

 国際社会の説得によりイスラエルの過越祭の間(22~29日)は反撃はないとの観測が出回ったが、4月19日同祭に入る前にイスラエルがイラン中部の空軍基地を攻撃、BTCは再び5万9,000ドル台に値を落とした。しかしイランが核施設に被害はなかったと報じ、再反撃の姿勢を見せなかったことからリスクオンの流れとなり、6万7,000ドル台までBTCは切り返した。

 市場が最も恐れたのは、紛争が拡大、イスラエルVSイランそして背後に控える米欧VS中ロと第5次中東戦争や第3次世界大戦に飛び火していくことだった。中東情勢はいまだに予断を許さないが、そうした最悪の事態は避けられそうだという楽観的な見方が広がっている。

半減期

 最後に半減期の影響はどうか。半減期による供給減はBTCの上昇要因となるが、それは事前に分かっていることで、「半減期を前に期待先行で上昇、半減期前後にSell the Fact気味に失速する…」が従来からのパターンだった。実際、ひと足先に4月5日に半減期を迎えたBCHも半減期の2週間前から急上昇、半減期の3日前に失速した。

 ところがそのBCHが半減期後に上昇に転じたことでBTCにも買い安心感が広がった。20日の半減期の前はそのポジション調整に加え中東情勢悪化による売りが殺到、大きく値を下げたが、そのせいか半減期を超えても目立った売りは見られず、むしろ買い安心感が広がった。

 加えて、マイナー最大手マラソン社のCEOが同社の半減期後の採算ラインが4万6,000ドルと明らかにし、また通常なら下がるはずのハッシュレートが半減期後に史上最高値を更新したことにより、マイナーの混乱は限定的との見方が広がった。