新興国・途上国の穀物の爆食は続いている

 本レポートで扱う穀物は、しばしば「世界三大穀物」と呼ばれる、トウモロコシ、米、そして小麦です。人類の主食になり得る、農産物の中でも貿易額が大きい、歴史的に人類を支えてきた、などが「世界三大穀物」たるゆえんです。

 先ほど、新興国・途上国で、超長期視点の「圧倒的な数の増加」が予想されていると述べました。

 このことは、肉や乳製品を獲得するために欠かせない「トウモロコシ」、世界各国で幅広く主食として愛用されている「米」や「小麦」といった、間接・直接に関わらず人類の胃袋事情に強く影響し得る穀物の、長期視点の需給動向や価格動向を考える上で欠かせない要因だと言えます。

 以下は、先進国と新興国・途上国の世界三大穀物の消費量の推移です。1960年ごろ、二つの消費量の差は2億トン弱(3億8,000万トン-1億9,000万トン)でしたが、新興国・途上国の消費量が長期的に急増し続けたことで、2023年には12億トン強(18億7,000万トン-6億3,000万トン)の差が生じるまでになりました。

図:世界三大穀物(トウモロコシ、米、小麦)の消費量 単位:百万トン

出所:USDA(米農務省)のデータおよびIMF(国際通貨基金)の資料をもとに筆者作成

 先進国の需要は徐々に頭打ちになっています。人口の増加傾向が緩やかになってきていること(2042年にピークをつけるとみられる。国連の中程度の予想)、高齢化が進んでいること(食が細くなっている人が増えていることが影響か)、菜食主義が徐々に拡大していることなど、大小さまざまな要因が考えられます。

 長期視点の人口増加が主因と見られる「新興国・途上国」の穀物需要の増加傾向が続けば、需給は引き締まり、穀物相場に上昇圧力(長期視点)がかかりやすくなると考えられます。