「円安/円高(為替)」とは?
円安とは、日本の通貨である「円」が海外の通貨と比べて、安い状態を指します。逆に円高とは、高い状態のことをいいます。
例えば、米国の通貨「ドル」と円を交換するのに、1ドル=100円で取引していたとします。これが1ドル=120円になると、同じ1ドルを得るのに20円多くかかるため、円の価値が低くなる=円安となります。
逆にドルから見ると、ドルの価値が高くなる=ドル高となります。また、1ドル=80円になると、1ドルを得るのに20円少なくて済むため、円の価値が高くなる=円高となります。逆にドルは、ドル安となります。
ちなみに、1ドル=何円といった通貨の交換比率のことを「為替(かわせ)レート」や「為替相場」といいます。日本では1ドル=100円といった形で、外国通貨の1単位(1ドル、1 ユーロ、1ポンドなど)を基準に自国通貨「円」では何円に相当するか表すことが慣例になっています。
ここで注意が必要なのは、円の数値が大きくなったら、なんとなく円の価値が外国通貨に対して高くなっているように見えますが、実際には逆です。この場合、ドルなどに対して円の価値が低下する、つまり、円安になることを意味します。
1ドルが何円以上になれば円安か、何円以下になれば円高になるのか、決まった基準値があるわけではありません。その時々の相場の間での比較によって決まります。
新聞やテレビなどで「〇日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後□時現在、前日比■円▲銭円安ドル高の1ドル=●円▼銭を付けた」というようなニュースを見たことがあるかもしれません。この場合は前日の相場と比較して、円安ドル高と言っているわけです。
また、手持ちのドルを円に換算する際にはそのドルを買い付けたときの相場と比べて円安になったか円高になったかが重要になります。それによって利益が出たり損失が生じたりすることになります。
2022年10月には1ドル=151円台後半まで円が下落し、円安ドル高が進みました。約32年ぶりの円安水準です。その主な理由として、米国の*中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)がドルの金利を引き上げる政策を進めていることが挙げられます。
ドルの金利が高くなると、利息が得られます。一方で、日本では中央銀行の日本銀行が超低金利政策をとっているので、円を持っていても利息はほとんど手に入りません。ドルを持っている方が多くの利息を得られるので、お得になります。
こうなると、円をドルに換える動きが外国為替市場で強くなり、円安ドル高が進むわけです。また、お金を銀行で借りる際には、金利が高いドルよりも金利が低い円の方が銀行に支払う利子が少なくなります。金利の低い円で借りて、借りた円を金利の高いドルに換金して運用すれば、利ざやを稼ぐことができます。
ドルに換金することは円を売ってドルを買う取引となります。大口の投資家の間でこうした取引が広がると、円安ドル高を引き起こす原因になります。
円安になると、日本でモノづくりをしているメーカーにとっては輸出競争力が高まります。例えば、米国に輸出する際にドルに換算した商品価格が小さくなるため、米国の輸入業者は安く買うことができます。そうなると、米国製やほかの海外製よりも日本製のものが売れやすくなります。
観光業界にとっては、外国人旅行客を日本に呼び込む絶好のチャンスとなります。外国人客にとっては自国の通貨が円の価値よりも高くなり多くの円と交換できるので、お土産をたくさん購入したり、高級なホテルに泊まったりすることができます。
こうしたメリットがある一方で、円安には、海外から輸入する商品の価格が上昇し、生活費が高くかかるデメリットもあります。日本は石油やLNG(液化天然ガス)などのエネルギー資源や、工業や化学製品の原材料、食料などの多くを輸入に頼っています。
円安になると、電気料金やガソリン代、食料品やティッシュなど生活雑貨の価格が上がり、家計が苦しくなります。輸入業者にとっては、原材料価格が上がり、収益を圧迫します。日本人が海外旅行をする際は、旅行先の国の通貨が円よりも相対的に高くなるので、現地での出費が大きくなります。
日本は自動車などの輸出産業の存在が大きく、これまで円安が経済成長にとってプラスだと長年いわれてきました。ただ、最近は日本企業の海外進出が進み、現地生産が広がっているため、円安によるメリットが少なくなっています。
One More Point!
中央銀行とは…
国や特定の地域の金融機関には、紙幣や貨幣などを発行している「中央銀行」という金融機関があります。日本の中央銀行は「日本銀行」、米国の中央銀行に当たるのは「FRB(米連邦準備制度理事会)」です。欧州では、EU(欧州連合)加盟国で単一通貨ユーロを使っているユーロ圏は「ECB(欧州中央銀行)」、英国は「BOE(イングランド銀行)」です。
これらは、単に紙幣を発行しているだけでなく、市中に出回るお金の量を調節して物価を安定させたり、民間銀行の金利を誘導したりするなどの金融政策を行い、自国の通貨が健全で、安定した価値を保つように管理しています。
また、民間の銀行に対しては、資金を預かったり(預金)、資金を貸したりするので、「銀行の銀行」と呼ばれています。政府の資金を管理する「政府の銀行」という役割もあります。
私たちは普段、民間銀行に預金し、民間銀行から引き出してお金を使っており、中央銀行の存在を感じるシーンは少ないかもしれません。中央銀行がさまざまな金融政策を行うことで、日本の「円」が健全に機能し、私たちの生活を支えているということは知っておきたいことの一つです。