2021年は、相場が回復する中で多くの個人投資家が安定した成績を残した

 米国株・日本株投資家のエルさん、優待&バリュー投資家のようこりんさん、日本株投資家のDAIBOUCHOUさんかぶ1000さん、米国株投資家のたりたり社長さん――。

 今回、トウシル編集部では、人気投資家の5人に2021年を振り返ってもらうとともに2022年の予測、展望についてお聞きしました。

 日本の株式相場は2020年2月のコロナショックで急落しましたが、比較的短期間で危機を脱し、以降、着実に回復の道を歩んできました。2021年に入ると、2月半ばに日経平均が30年ぶりに3万円台を突破。

 その後は、調整局面に入るも9月に復活し、またすぐ急落するという具合に一進一退を繰り返します。しかし、1年を振り返ると総じて好調だったといえるでしょう。

 一方、米国の株式相場も、S&P500の推移を見ると、3月ごろから上昇トレンドに入り、一度落ち込みがあったものの、その後はまた上昇局面にあります。米国経済が順調に回復し、株価を押し上げる結果となっています。そんな中で、個人投資家の多くが安定した成績を残したといえそうです。

 それぞれの運用成績を見ると、日本株のバリュー投資をメインとしているDAIBOUCHOUさんは、業績が好調な中小型銘柄をはじめ、環境設備投資関連銘柄や不動産開発関連銘柄で、年間トータル+20%(2021/11/15時点)ほどの利益をあげています。

 同じく日本株投資のかぶ1000さんは、アフターコロナ銘柄などで利益を出し、年間トータル+約27%(2021/11/1時点)、金額にすると約6,500万円の利益を出しました。

 株主優待銘柄をメインにしている、ようこりんさんも、前年のコロナショック時に安く仕入れた銘柄が跳ね上がったことで、年間トータル10%(2021/11/15時点)程度の利益を獲得したそうです。

 エルさんは日本株と米国株の両方に投資していますが、米国株は2021年に好調だったエネルギー株や銀行株をポートフォリオに組み入れていないこともあって指数を下回る結果に。その一方、日本株投資が絶好調で、大きく資産を増やすことに成功しています。

 たりたり社長さんはインフレ関連が予想を大きく外す結果になったものの、市場全体の方向感やハイテク関連の主要銘柄動向は予想通りの市場の動きだったと振り返っています。

2022年も相場は好調?ただし、不安材料も多い

 では、2022年はどのような年になるのでしょうか。2021年に3万円を突破した日経平均はさらに上昇するのか、それとも一転、下落トレンドに入るのか。

 5人に予想を伺ったところ、5人とも2021年の好調が継続するという回答でした。ようこりんさんは、一時的に日経平均は3万2,000円を超えると予想、かぶ1000さんは「政府の経済政策や企業の業績次第」と断わりつつも、3万5,000円に到達する可能性があるといいます。

 とはいえ、懸念材料もあります。エルさんは2021年に社会を騒がせた新型コロナウイルスやインフレ、半導体不足、サプライチェーン混乱、中国不動産などの問題は、2022年に持ち越されるだろうと見ています。ようこりんさんも、中国経済の不安、新型コロナの再拡大、米国経済の減速、量的緩和の縮小という4つの不安要素を指摘します。また、かぶ1000さんは、「原料高、原油高、人件費高とコスト増が企業業績を圧迫する可能性がある」と分析します。

 一方、米国市場については意見が分かれました。たりたり社長さんは、11月に発表された各社の決算内容がよかったことから、2022年も全体的な好調が続くと予想します。

 それに対して、かぶ1000さんは「指標面で見てもかなり過熱感があり、さらなる上昇の余地は小さい」と予想。エルさんも「さすがの米国株も今年はダメかと思わせる局面がやってくるかもしれない」、「相対的に見ると、米国株よりも日本株のほうがパフォーマンスがよい1年になる」といいます。日本株に投資するか、米国株に投資するか、難しい判断になりそうです。

 なお、5人に取材した後、新型コロナをめぐって新たな動きがありました。南アフリカ共和国で見つかった変異株「オミクロン」が流行の兆しを見せています。この新しい変異株が世界中にまん延するか、それとも深刻な被害となる前に収束するか。それによって世界経済の動向は大きく変わってきそうです。

日本を代表する大型銘柄と割安成長銘柄、2022年はどちらを選ぶ?

 今回は2022年に注目する銘柄について聞きましたが、それぞれの個性がよく表われた回答が返ってきました。

 日本を代表する大型銘柄を挙げたのが、エルさんとかぶ1000さんです。エルさんは、国内時価総額ランキング(2021/12/1現在)第3位のソニーグループ(6758)、かぶ1000さんは同第6位のソフトバンクグループ(9984)を挙げています。株価(2021/12/1現在)は、ソニーが1万4,000円程度、ソフトバンクが6,000円程度と高額なので、投資初心者には手を出しにくいかもしれませんが、いつかは保有してみたいものです。

 また、たりたり社長さんは米国市場を代表する大型銘柄の1つ、ビザ(V)を勧めます。クレジットカード会社の株価は消費需要の動向と海外旅行先での消費動向に左右されます。その点、新型コロナが落ち着いて、消費や旅行が活発になると予想できる2022年は反発するのではないかという見方です。

 一方、割安成長株狙いのDAIBOUCHOUさんと、株主優待派のようこりんさんは、一般にはあまり知られてない中小銘柄を挙げています。DAIBOUCHOUさんの推しは、北陸地方や東海地方を中心にドラッグストア「ゲンキー」を展開するGenky Drugstores(9267)、ようこりんさんのオススメは、電気自動車やIT関連機器、半導体などで使われる非鉄金属を取り扱うアルコニックス(3036)です。

 長い投資歴を誇るベテランであり、「億り人」でもある2人が、何千という中から選んだ1本なので、まずは業績の推移や株価の動きをチェックしてみるといいかもしれません。

投資初心者は、5人の中の2人が推すコストコ・ホールセールに注目!

 5人の方には投資初心者向きの銘柄も1つずつ挙げていただきましたが、こちらは1つ共通点があります。いずれもBtoCの企業であることです。

 かぶ1000さんが「業態がわかりやすいし、自分で商品を使ったり、店舗を訪れたりできるので、その会社がどのような状態にあるのか把握しやすい」という理由からBtoCの企業を勧めていますが、どうやらそれは5人の共通認識といえそうです。

 そのなかでも注目は、エルさんとたりたり社長さんの2人が挙げている米国の大手小売りチェーン、コストコ・ホールセール(COST)でしょう。日本株よりも米国株に興味があるという人にとっては第一候補にしてもいいかもしれません。

 そのほか、ようこりんさんが勧めるヤマダホールディングス(9831)、かぶ1000さんイチ推しの良品計画(7453)、DAIBOUCHOUさんが挙げているやまみ(2820)も要チェックです。

初心者が「勝てる投資家」になるための7カ条

 最後に、5人の回答に基づき、投資初心者が勝つための7つのポイントをまとめてみました。これらを頭にたたき込んで、2022年こそ、ぜひ投資デビューを!

1.少額でもかまわないので、とにかく買ってみる

「今はまだ資金に余裕がないので、もう少し投資資金ができてから投資を始めよう」。こう考えている人もいると思いますが、エルさんは少額でもかまわないので、とにかく投資を始めてみるべきだといいます。

 なぜなら、「自分で株を持つと自然と経済ニュースなどを見るようになり、その結果、投資に対する感度が磨かれ、株式市場と実際の保有先の関係なども実感できるようになる」からです。まずは実際に買ってみて、経験を積むことが大事だといえるでしょう。

2.いろいろな銘柄に分散投資する

 投資の基本ともいえる「分散投資」の重要性を指摘するのは、ようこりんさんです。「500円の株を100株ずつ2種類、1,000円の株を100株ずつ4種類というふうに、いくつかに分けて買うことを勧めます。そうすると、どれかの株価が暴落しても、ほかが上がれば帳尻を合わせることができます」。初心者はなるべくリスクを避けることのできる投資方法から始めてみましょう。

3.配当のある銘柄や株主優待銘柄を狙う

 ようこりんさんは、配当金のある銘柄や株主優待銘柄を狙うのも1つの方法だといいます。年に1度か2度とはいえ、配当金や株主優待がもらえるのはうれしいものです。また「配当や優待があると、株価が下がっても取り戻せたという気持ちになれる」というよさもあります。

4.自分にとってなじみのある企業の株を買う

「自分がよく知らない企業への投資は控えるべき」というのは、かぶ1000さんです。自分にとって縁遠い業種の銘柄や、聞いたこともない企業の株だと、売買のタイミングがわからないため、高いときに買ったり、安いときに売ったりしてしまいがちになるからです。

 普段よく商品を使っている会社や、自分の趣味に関連する会社などの株を検討してみるといいでしょう。

5.トレンドを追いすぎない

 多くの投資家が注目している人気銘柄や、成長分野の銘柄を狙うのは1つの方法です。とくに投資初心者の場合、自分ではどんな銘柄が上昇するか、判断しにくいでしょうから、トレンドに乗るというのは一つの手でしょう。

 ただし、かぶ1000さんはトレンドばかり追うのは、疑問だといいます。話題になっている企業の株は、もうかなり高くなっていて、あとは下がるだけということが多いからです。そういう意味では「誰も注目していない銘柄や、みんなが見放してしまった銘柄を狙う」ことも考えたいところです。

6.相場がいいときこそ、悪くなったときの備えを

 2021年は日本株、米国株ともに好調でしたし、2022年も上げ相場が続くという見方が強くなっています。しかし、永遠に上昇し続けるということはありえません。いつか必ず下げ相場がやってきます。たりたり社長さんは、相場がよく、利益が出ているときも、それに浮かれず、下げ相場になったときに備えることが大事だといいます。

7.勝つことより負けないことを優先する

 投資初心者は、ビギナーズラックがあってもコンスタントに勝ち続けるのは難しい。したがって、最初は勝つことより負けないことを優先するべきというのはDAIBOUCHOUさんです。たとえ勝算があっても大金を注ぎ込むのはやめる、株価が下がったら深手を負う前に損切りする、といったことを心掛けたいところです。

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