今の景気サイクルは何が違うのか

 米国の作家であるマーク・トウェインの「歴史は繰り返さないが韻を踏む」という言葉は、素晴らしい相場格言です。2018年後半、米国では景気「成熟」局面入りの様相でした。

 長期金利が景気中立水準を超えて3%台へ上昇し、住宅が落ち込み、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)など大型株が急落しました。この展開は基本パターンの韻を見事に踏んでいます。

 でも、今回の景気サイクル特有の留意点もありました。まず、何年にもわたって突出した米国株高、米国企業の債務増大です。相場反転の初期は、逆風にさらされる金融・投資ポジションが大きいほど、その巻き戻しのエネルギーが強烈になります。

 さらに、AI(人工知能)の売買シェアが急速に高まり、下げ相場で同じ売り行動に走るものが多いと想定されました。株安が予想外に強烈になり、そのまま企業債務コスト上昇という赤信号になだれ込むリスクが警戒されたのです。

 実際、大型株の相場下落は劇的でした。しかし、この株価急落の切れ味があまりに鋭かったことで、景気が堅調なうちに、政策当局が対応に突き動かされました。

 FRBは利下げ方向へ、トランプ米政権は中国との貿易交渉再開へ、舵を切ったのです。長期金利が2%台に急低下し、住宅の再浮揚、企業債務コストの上昇回避が促されたことで、景気「成熟」局面は生き長らえている格好です。2019年の株価もドルも数カ月は相場を持ち直すと判断されました。