23年の全体の振り返り

 今回は、2024年のコモディティ銘柄を用いた投資戦略を考えます。まずは、2023年の動向を振り返り、重要なポイントを抽出します。以下は、2023年前半(2022年12月末~2023年6月末)と、後半(2023年6月末~12月27日)の、主要銘柄の騰落率です。

図:2023年の各種銘柄の騰落率

出所:マーケットスピードIIなどのデータをもとに筆者作成

 通年で欧米株・金(ゴールド)高、ドル指数・穀物安が目立ったほか、年後半に、原油や銅、プラチナ(需要のおよそ7割が産業用)といった、景気動向に影響を受けやすい銘柄が上昇しました。

 年前半と後半の市場環境の違いを、米国の金融政策に求めることができます。前半は利上げ継続、後半は利上げ打ち止め・利下げ観測浮上でした。FRB(米連邦準備制度理事会)の方針が引き締め的から緩和的になる兆しが見えたことで、年後半よりリスクオン(リスクを取って運用を拡大すること)のムードが徐々に強まり始めたと考えられます。

 米国の金融政策については、2023年12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)でパウエルFRB議長が2024年に利下げを行うことを示唆しているため、足元で生じている緩和的になる兆しが2024年に顕在化し、一段とリスクオンのムードが強まる可能性があります。このことは、2023年後半に見られた傾向(欧米株・金・原油・銅・プラチナ高)が強まることを示唆しています。

24年はFRBの利下げ起因の影響大に

 米国で利下げが行われる(観測含む)と、市場にどのような影響が及ぶのでしょうか。

図:FRBの金利引き下げ時に予想される影響

出所:筆者作成

 金利が下がると、個人や企業は資金調達をしやすくなります。このことは、景気を回復させる大きな原動力になります。すでに米国のインフレ関連指標は低下傾向にあるため、2022年から2023年にかけて行われてきた利上げによるインフレ退治は終焉(しゅうえん)を迎えつつあります。

 このことが、利上げ打ち止め・利下げ開始示唆につながっています。(米国のインフレ関連指標の動向については「金(ゴールド)最高値更新!「始まりの始まり」」で述べています)

 上図のとおり、利下げは景気回復期待を増幅させたり、ドル安やそれによる代替通貨の保有妙味を増加させたり、ドル建て商品の割安感を高めたりします。これらは、株式や原油、非鉄の価格、金(ゴールド)やその他の貴金属価格を上昇させる要因になり得ます。リスクオンのムードが強まれば、農産物相場に上昇圧力がかかる可能性もあります。

 足元、米国でインフレ関連指標は低下傾向を示し、インフレ退治という利上げ策が終焉を迎えつつあります。こうした状況の中で突入した2024年は、時間の経過とともに上図で示したシナリオが強まりやすくなると、筆者は考えています。

今まで以上に「材料の分散注目」が必要

 米国の金融政策を含め、2024年は複数の注目材料があります。

図:2024年の注目材料(一例)

出所:筆者作成

 民主主義の正当性が保たれるかどうかが問われる主要国のリーダーを決める選挙、長期化する懸念が強まる各種戦争、足並みが乱れつつも原油価格を高止まりさせるために行われているOPEC(石油輸出国機構)プラスの減産、欧米以外の主要国で沈静化が進むか注目が集まる物価高、平和の祭典の呼び名のとおり世界平和につながることが期待されるオリンピック・パラリンピック、などです。

 米国の金融政策をきっかけにリスクオンが強まったとしても、戦況が悪化して懸念事項が増えたり、原油高やそれをきっかけとした物価高が再燃したりすると、リスクオフ(リスクを回避して運用を控える)ムードが強まって、各種価格が下落する可能性が生じます。

 米国の金融政策をメインの材料としつつも、こうしたほかの材料にも注意を向ける必要があるのが、2024年だと言えます。

 近年は多くの市場で複数の材料が多彩に入り混じる傾向が目立っています。2024年も例外ではありません。むしろ多彩であることがより目立つ可能性すらあります。

 投資対象を同じ種類にならないようにする「分散投資」を参考にすれば、注目する材料を分散する「材料の分散注目」が強く求められるでしょう。分散せずに偏った材料に注目してしまうと、相場の方向性を見誤りやすくなります。

 金(ゴールド)では、短中期であれば有事ムード(資金の逃避先)、代替資産(株の代わり)、代替通貨(ドルの代わり)の三つ、中長期であれば中国・インドなどの宝飾需要、鉱山会社の動向、中央銀行の動向の三つ、超長期であれば見えないリスク(肌で感じにくい西側・非西側の分断)などに注目する必要があります。

 原油では、短中期であれば産油国の動向(OPECプラスだけでなく米国も)、需要動向(見通し含む 先進国・新興国共に)、中長期であれば気候変動、省エネ技術などの動向に注目する必要があります。

 個人投資家の皆さまを含めた市場関係者は、見たい材料、聞きたい材料、信じたい材料、感じたい材料だけに注目していてはいけません。気に留めやすい限られた材料だけに注目することがないよう、今まで以上に注意が必要です。

積み立てを継続しつつ時には短期売買を検討

 こうした環境下で行う2024年のコモディティ投資について、筆者は以下のようなイメージを持っています(2023年12月27日時点)。長期を念頭に置いてプラチナに積立投資をしつつ(関連ETF(上場投資信託)もしくは金・プラチナ取引で)、状況に応じて金(ゴールド)や原油、農産物で短期売買を行う手法です。

図:基本的な投資スタイル(筆者イメージ)

出所:筆者作成

 2024年価格予想について、金(ゴールド)は1,700ドル~2,300ドル、プラチナは700ドル~1,200ドル、原油は60ドル~100ドル(最大で120ドル)と、筆者は考えています(2023年12月27日時点)。予想の根拠を以下のレポートで述べています。

金(ゴールド):2024年の金(ゴールド)相場予想 2,300ドルも

プラチナ:2024年のプラチナ相場予想 新NISAにも合う

原油:2024年の原油相場予想 60ドルから最大120ドル

 金(ゴールド)は、史上最高値水準での攻防が続くとみられますが、通年でFRBの利下げ起因の上昇圧力がかかりやすくなるとみています(ドル建て)。

 原油はOPECプラスの減産(減産は規模に変動はあるものの2024年12月まで続くことが決まっている)が引き続き下支えするとみられますが、中国の景気減速懸念などの不安材料が上値の重い時間帯を長くすると予想しています。こうした銘柄は、リスク管理を怠らないことを前提とした短期的な売買になじむと考えます。

 プラチナは、2015年のフォルクスワーゲン問題発覚以降、価格が長期的に低迷してきました。しかし近年、低迷の大きな要因となった自動車排ガス浄化装置向け需要の減少は収まり、今後は増加する見通しが出ています。長期視点の価格反発が発生する可能性があることから、2024年を含んだ長期視点の積立投資(投資信託や金・プラチナ取引)がなじむと考えます。

新NISAとコモディティ投資

 コモディティ投資においては、以下のとおり、関連する投資信託、ETF、個別株の取引において、新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の成長投資枠を活用できます。また、楽天証券が提供している米国株の積み立て「米株積立」や国内株式の積み立て「かぶツミ」のサービスを利用することで、成長投資枠を活用した長期投資も可能です。

図:コモディティ投資のいろいろ

出所:筆者作成

 以下に、時間軸・商品別に、具体的な投資商品を掲載しました。皆さまのお考えに近い銘柄をクリックの上、値動きなどをご確認いただければ、幸いです。2024年、これまで以上に、コモディティ関連銘柄にご注目いただけましたら幸いです。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

[参考]コモディティ関連の投資商品例

短期売買になじむ

CFD

CFD(金、プラチナ、原油、天然ガス、トウモロコシ、大豆、小麦、コーヒー、ココアなど)

商品先物

国内商品先物(金、プラチナ、トウモロコシなど)
海外商品先物(金、原油、トウモロコシ、小麦など)

短期売買・長期投資 両方可能

国内・海外ETF(新NISA成長投資枠活用可)

~貴金属~
SPDRゴールド・シェア(1326)
NF金価格連動型上場投資信託(1328)
純金上場信託(金の果実)(1540)
NN金先物ダブルブルETN(2036)
NN金先物ベアETN(2037)
SPDR ゴールド・ミニシェアーズ・トラスト(GLDM)
iシェアーズ ゴールド・トラスト(IAU)
ヴァンエック・金鉱株ETF(GDX)

~エネルギー~
NNドバイ原油先物ブル
NF原油インデックス連動型上場
WTI原油価格連動型上場投信
NNドバイ原油先物ベア
iシェアーズ グローバル・エネルギー ETF
エネルギー・セレクト・セクター SPDR ファンド
グローバルX MLP
グローバルX URANIUM
ヴァンエック・ウラン原子力エネルギーETF

~農産物~
WisdomTree農産物上場投資信託(1687)
WisdomTree穀物上場投資信託(1688)
WisdomTree小麦上場投資信託(1695)
WisdomTreeとうもろこし上場投資信託(1696)
WisdomTree大豆上場投資信託(1697)
ヴァンエック・アグリビジネスETF(MOO)
インベスコDBアグリカルチャー・ファンド(DBA)

~全般~
インベスコDB コモディティ・インデックス・トラッキング・ファンド (DBC)
iPathブルームバーグ・コモディティ指数トータルリターンETN (DJP)
iシェアーズ S&P GSCI コモディティ・インデックス・トラスト (GSG)

国内・海外個別株(新NISA成長投資枠活用可)

~貴金属~
バリック・ゴールド(GOLD)
アングロゴールド・アシャンティ(AU)
アグニコ・イーグル・マインズ(AEM)
フランコ・ネバダ(FNV)
ゴールドフィールズ(GFI)

~エネルギー~
INPEX
出光興産
エクソン・モービル
シェブロン
オクシデンタル・ペトロリアム

~農産物~
丸紅(8002)
ディアー(DE)
コルテバ(CTVA)
ニュートリエン(NTR)
アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)
ブンゲ(BG)

長期投資になじむ

純金積立(当社ではクレジットカード決済で購入可能)

純金積立・スポット購入

投資信託(新NISA成長投資枠活用可)

~貴金属~
ステートストリート・ゴールドファンド(為替ヘッジあり)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
三菱UFJ 純金ファンド

~エネルギー~
UBS原油先物ファンド
米国エネルギー・ハイインカム・ファンド
シェール関連株オープン

~全般~
iシェアーズ コモディティ インデックス・ファンド
ダイワ/「RICI(R)」コモディティ・ファンド
DWSコモディティ戦略ファンド(年1回決算型)Aコース(為替ヘッジあり)
DWSコモディティ戦略ファンド(年1回決算型)Bコース(為替ヘッジなし)
eMAXISプラス コモディティ インデックス
SMTAMコモディティ・オープン