今日は、5月13日「成長株投資入門(その1)」、5月20日「成長株投資入門(その2)」の続きです。その1・その2でお伝えしたかったことは、成長株投資で失敗した時の「損切り」の重要性です。失敗銘柄からきちんと逃げられることが、大当たり銘柄で利益を伸ばしていくために必要と力説しました。失敗銘柄ということが明らかになってから損切りしたのでは手遅れです。失敗かどうかはっきりわからないうちに、チャートで売りシグナルが出たら、とりあえず売ってみるということです。そのためには、チャートの見方を知っておく必要があります。今日は、チャートの読み方の初歩を解説します。

まず、クイズです

 いろいろ解説する前に、まず、いきなりクイズを解いてください。

<クイズ>以下のA社チャートは、売り・買い、どっち?

 注:筆者作成

 私は、2013年まで25年間、日本株ファンドマネージャーをやってきました。その大部分が、年金や投資信託での長期投資でした。2~3年の運用期間を想定し、投資価値を高めていく銘柄の選別に注力していました。

 ただし、私のファンドマネージャー経験の中で、銘柄選別なんか一生懸命やっても意味がない時期がありました。1990年代前半です。バブル崩壊後の日本では、何を買っても、下がるのが当たり前でした。その頃の私は、銘柄選別より、日経平均先物やオプションの売買に熱中していました。先物やオプションの短期売買しか、安定的に利益を積み上げていく方法はありませんでした。

 先物の短期売買で重要なのは、テクニカル分析です。チャートや出来高の変化を見ながら、投機筋の買いポジションや売りポジションがどう変動していくか、1日中考えていました。私は、オプション取引は得したり損したりであまりうまくいきませんでしたが、先物の短期売買では、安定して利益を稼ぎ続けることができました。

 今日、お伝えしたいことは、売買シグナルの意味と使い方です。

 さて、冒頭のクイズの答えですが、「買い」が正解です。A社チャートは、「二番底」(英語では、ダブル・ボトムといいます)という買いパターンになっています。直近の高値を抜けて、ここから上昇に弾みがつきそうです。

 売買高が急増していることも重要です。何か好材料が出て、積極的に買ってきている投資家がいると考えられます。株価が下がってきている時の売買高より、今の売買高の方が大きいので、ここから戻り売りをこなして上値を追っていく可能性が高いと考えます。

100%当たる売買シグナルはない

 こういうクイズを出すと、「チャートだけでは今後の株価はわかりません」とお答えになる方もいます。その通りです。チャートに基づく投資判断は、100%当たるものではありません。

 ただし、チャートのパターンを見ることで、統計的に今後上がる可能性が高いか低いか判断することはできます。統計的に、7割の確率で上昇するチャート・パターンがあれば、それは立派な買いシグナルです。

買いシグナルで買ったら、下がってしまった!

 次のクイズです。

<クイズ>冒頭のクイズで買いシグナルが出ていたA社株を買ったら、いきなり下がってしまいました。さて、ここでの投資判断は、売り・買い増し、どっち?

注:筆者作成

 売買シグナルは、天気予報のようなものです。明日、晴れるといっても、雨が降ることもあります。買いシグナルが出ていると言っても、下がってしまうこともあるわけです。

「当たる可能性が70%」であれば、立派な買いシグナルと言えます。それでも、30%の確率で、買いシグナルは外れるわけです。

 以下に、70%の確率で当たるシグナルで2回続けて売買した時の結果を示します。

7割の確率で当たるシグナルで2回売買した場合

注:◎は当たり、×は外れを示す、筆者作成

 2回連続でシグナルが当たる可能性は49%(約半分)しかありません。つまり、7割当たるシグナルで売買しても、2回売買すれば、2回に1回は外れると考えるべきです。

 さて、クイズの答えですが、ここでの買い増しは厳禁です。「売り」が正解です。いったん買いシグナルが出て、出来高が急増して上昇した直後に、悪材料が出て、ドスンと下がったわけですから、ここからは「三十六計、逃げるにしかず」。ぐずぐずしていると、高値で買いついた人が悪材料を見て、どんどん投げ売りしてきます。

 肝に銘じていただきたいことは、以下の法則です。

「いかなる買いシグナルも、直後に大陰線が出れば、強い売りシグナルに変わる」
「いかなる売りシグナルも、直後に大陽線が出れば、強い買いシグナルに変わる」

 チャートを使った売買で一番重要なことは、以下です。「買いシグナルで買っても、外れたら、すぐに損切りすること」

 100%当たる訳でなくても、チャートのシグナルを見て売買するのは意味があることです。7割の確率で上昇するパターンが出たら買いを実行し、上昇すれば利益が得られます。もし3割の確率で外れて下がったら、その時はさっさと損切りするだけです。

 7割当たるパターンのチャートで何回も何回も勝負を繰り返せば、長期的には利益を積み上げることができるはずです。デイ・トレーディングで利益を積み上げていく人は、それが分かっていて、実行できる人です。

再び強調、「テンバガー狙うならチャートを見よ」

 これから大化けする小型成長株がたくさん出る時代になると思います。その候補となる企業はたくさんあります。ただし、その中から「ほんもの」を見抜くのは至難の技です。ほんものをつかめば、面白いように株価が上がっていく成長株の醍醐味を味わえるかもしれません。

 ただし、偽物だった時は大変です。株価が鳴かず飛ばずで終わるだけなら良いのですが、中には成長ストーリー崩壊で、暴落するものもあります。失敗銘柄で大やけどすると、少ない資金で投資している場合は致命傷となることがあります。そうならないためには、しっかりチャートを見て、まずい感じになった時に、とりあえず売ることが必要です。

 失敗した時に早めに逃げることでゲームオーバーを回避し、勝負を続けていけば、いつかテンバガー(10倍株)に巡り合うこともあるでしょう。テンバガー狙うならチャートを見よ、を再度強調したいと思います。
 

成長株入門を読む!

成長株投資入門(その1):テンバガー狙うなら「チャート」を見よ

成長株投資入門(その2):成長株の3条件、前提が崩れたら損切り

HERE!成長株投資入門(その3):買いシグナルで買ったのに下がった時はどうする?

成長株投資入門(その4):東証マザーズ・グロース株投資の鉄則

成長株投資入門(その5):物流産業から成長企業を探す