バリュー相場が終われば、次はグロース相場に
今年はバリュー(割安)株のパフォーマンスが好調です。昨年、大きく上昇したグロース(成長)株が売られる中で、景気敏感バリュー株の上昇が目立ちます。それが、TOPIXバリュー指数とグロース指数の動きからわかります。
TOPIXバリュー指数とTOPIXグロース指数の動き:2020年1月6日~2021年5月12日
上のグラフの「赤で囲んだ部分」、つまり2021年だけ見たのが以下のグラフです。2021年はバリュー優位であることがわかります。
TOPIXバリュー指数とTOPIXグロース指数の動き:2020年12月30日~2021年5月12日
私は、今年の秋くらいまで、バリュー優位が続くと考えています。以下のイメージ図でご覧いただける通り、現在の日本株は「割安株相場」の中にいると考えているからです。
成長株相場から割安株相場への転換(イメージ図)
したがって、今投資するならば、景気敏感バリュー株が良いと思います。その理由と投資の参考銘柄は、昨日のレポートで詳しく解説しています。昨日のレポートは以下からお読みいただけます。
2021年5月11日:日経平均急落。三大割安株「買い場」の判断変わらず
ただし、私はバリュー相場が何年も続くとは思っていません。今年は、コロナショックから世界景気が急速に立ち直る中、一時的にモノや資源が不足し、一時的にインフレが復活、米長期金利が上昇する中で、金融株・資源関連株・製造業などバリュー株の業績モメンタムが強くなり、バリュー優位になると考えているだけです。そういう特殊な経済環境はコロナからの急回復期だけに見られる一時的なものと考えています。バリュー株の業績急回復が織り込み済みとなれば、それでバリュー相場は終わると思います。現時点の私の予想では、それは今年の秋くらいと考えています。
その先、いったん株式市場全体がいくらか調整し、その後は、再びグロース優位の相場に戻ると考えています。なぜならば、21世紀がITの時代という流れに変わりはないと考えているからです。秋以降は、IT分野から成長企業がたくさん出てくるのを探しながら投資していくのが良くなると予想しています。
グロース株で稼ぐなら「チャートを見ろ」という理由
それでは、今日の本題に入ります。成長株でテンバガー(10倍株)を狙うならば、チャートを見る必要があります。チャートを見るとは、失敗した時に速やかに損切りできる準備をしておくということです。それは、私が過去25年の日本株ファンドマネージャー時代に、数々の小型成長株に投資してきた時に、鉄則として肝に銘じてきたことです。
誰が見ても明らかに成長ストーリーが「終わった」と思われるチャートになった時は、「三十六計、逃げるにしかず」。利益確定、損切りにかかわらず速やかに売る必要があります。迷っていると損が大きくなります。すぐに動くことが必要です。
「チャートの見方がわからない」と心配する必要はありません。ごく簡単なポイントだけ押さえておけば、複雑なテクニカル指標などまったく見なくても「売り」判断はできます。売りチャートの見方は、後日、解説するので、今日は割愛します。
読者の皆様を怖がらせようとして、こんな話しをしているわけではありません。小型成長株を安いところで買い、うまく上昇気流に乗れば、株価が2倍くらいに上昇することはよくあります。買った銘柄がすぐに急騰すれば痛快です。その面白さを知るためにも、失敗した時の逃げ足は速くなければならない、ということをお伝えようとしているのです。
小型成長株の買い方・売り方
小型成長株には、値動きの荒いものが多く、売買タイミングが難しい場合があります。特に、人気の小型成長株は急騰急落を繰り返すことがあるので、要注意です。以下に、私が過去に売買してきた小型成長株の典型的な株価変動パターンを描いたチャートを作りました。こちらをご覧ください。
高下する人気の小型成長株:高値づかみすると大変!(イメージ図)
上の例では、黎明(れいめい)期・急成長期・成熟期の3つのステージがそれぞれ5年続く成長企業をイメージしています。それぞれ、以下のようなステージです。
【1】黎明期:利益は出ないが、将来、大きな夢がある時期です。
【2】急成長期:実際に売上高・利益が大きく伸びる時期です。
【3】成熟期:最高益の更新は続くものの、年率5%程度しか増益しなくなります。
この株を、黎明期の安値(500~600円)で買い、急成長期の高値(5,000~6,000円)まで持てば、その時点でテンバガー(10倍株)です。急成長期の高値で売りそこなって長期保有となってしまっても、それでも黎明期の安値で買っていれば、かなりの株価上昇を享受していることになります。
このような夢のような成長株でも、チャ-トも見ずに他人の推奨だけを鵜呑みにして投資すると、大損することがあります。というのは、いわゆる株式評論家がこの株を「すばらしい」と奨めるのは、チャートの中で、赤の星印をつけたようなタイミングが多いからです(本当です)。いい話がいっぱいあって、株式市場で人気沸騰して、株価がめちゃめちゃ上がった高値で買ってしまうと、赤の矢印で示した通り、株価があっという間に半値になることもあります。このように、長期的に上昇していく成長株でも投資タイミングが悪いと大きな損失を出すこともあります。
こうした成長株は、短期的な株価変動を気にせず、黎明期から黙って長期投資していればいいと思うかもしれません。確かに、黎明期の成長株に長期投資すれば、途中で乱高下しても最終的には大きなリターンが得られます。選んだ銘柄が、真の成長株ならそうなります。
上記の株価チャートは、成長株の成功例をイメージして作ったから、そうなります。ただし、成長すると思われている銘柄のすべてが、このように成長するわけではありません。期待はずれで、まったく利益をあげることができず、暴落したまま終わってしまう銘柄もたくさんあります。どれが本物でどれが偽物か、見抜くのは至難の技です。
真の成長企業を見抜く目があれば良いのですが、それは正直、とても難しいことです。ファンドマネージャー時代、私は、成長株の候補を絞り込まずに、成長しそうな多数の候補銘柄にたくさん投資しました。投資した後、急落する銘柄はどんどん損切りしながら、真に成長する企業を絞り込んでいきました。「相場は相場に聞く」というやり方です。
小型成長株は、チャートを頻繁にチェックし、強い売りシグナルが出たら、問答無用で売ることを徹底していました。成長ストーリーの崩れた失敗企業への投資を放置すると、大きな損失をこうむるからです。
ただし、個人投資家の場合、投資に使える資金規模は限られるので、私のファンドマネージャー時代のように、成長しそうな銘柄多数に投資することはできません。それでは、どうしたら良いでしょう。
大切なのはチャートを見ることです。難しいシグナル見る必要などはまったくありません。誰が見ても「これは終わった」と思うタイミングで、問答無用の売りを出せれば、それだけでOKです。いいタイミングで逃げられれば、またいいタイミングで買うこともできます。いいタイミングで売れないと、いいタイミングでの買いもできなくなります。誰でもわかるシンプルなポイントだけ押さえて売れば良いことです。
繰り返しになりますが、私は読者の皆様、特に投資初心者の方を怖がらせようとしてこんな話しをしているわけではありません。成長株投資で稼ぐためのリスク管理の大切さを最初にしっかりお教えしたいだけです。小型成長株で「誰でもかんたんに稼ぐ」ことなど、できるはずがありません。しっかりリスク管理できる人だけが、大きなリターンを得られると思っています。
今日は、成長株投資入門の序章なので、ここまでにしておきます。今後、本コラムで毎週1回、火曜日から木曜日の間に、成長株投資入門の続編を書いていきます。私がファンドマネージャー時代に実際にやってきた手法をお伝えします。
今ちょうどグロース株が調整しているところですから、急いでグロース株を買っていく必要はないと思っています。私がファンドマネージャー時代に習得したグロース投資のノウハウをこれからじっくり解説していき、最終的に私がファンドマネージャーならば今どんな成長株を買っていきたいか、具体的な銘柄もお話ししようと思っています。
成長株入門を読む!
HERE!成長株投資入門(その1):テンバガー狙うなら「チャート」を見よ
成長株投資入門(その2):成長株の3条件、前提が崩れたら損切り
成長株投資入門(その3):買いシグナルで買ったのに下がった時はどうする?
成長株投資入門(その4):東証マザーズ・グロース株投資の鉄則
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