丸井とマイクロソフトは、同じ業種の企業より株価堅調
では、実際にサステナブル投資は高いリターンを期待できるのでしょうか? サステナブルといわれる企業の株価は実際どのようになっているか見てみましょう。
図6は日米でそれぞれサステナブル企業として評価されている丸井グループとマイクロソフトの株価を見たものです。両社は世界的な株価指数算出会社であるMSCIのサステナブル関連指数に含まれています(2019年2月末時点)。過去5年間の株価の動きを見ると、両社ともに自分の国の同じセクターの株価指数を大きく上回る推移となっています。
サステナブル投資は欧州の機関投資家などを中心に始まりましたが、日本や米国にも徐々に広がっています。サステナブル投資が広がっていくにつれて、よりサステナブルな取り組みを積極的に行っている企業に対して資金が流入してくることが想定されます。
財務諸表などの目に見える価値だけではなく、環境や社会が持続可能であるための取り組みをどれだけ行っているかを含めて企業を選別していく流れが強くなると考えられます。
図6 2014年2月末~2019年2月末、現地通貨ベース、配当込み
丸井の育児休暇取得率は、9割超え!
では具体的に、サステナブルな企業はどういった取り組みを行っているのでしょうか?
ここでは丸井グループの例を見てみましょう。同社はビジネスを通じて持続的な社会、地球環境を実現するために顧客、従業員、投資家、取引先、将来世代とともにサステナブルな取り組みを行うことを標榜しています。
2050年に向けた長期のビジョンを作成し、途中経過を積極的に発信。世界的な株価指数算出会社であるMSCIのサステナブル関連指数にも含まれています。
丸井グループはサステナビリティに関して様々なデータを公表していますが、そのうちのいくつかを見てみましょう。
図7は、同社の二酸化炭素排出量の推移です。これは自社で直接排出したもの以外に、原材料の調達や輸送、顧客が購入した後の排出量までを含んだバリューチェーン全体のCO2排出量です。
日本では年間100万トンの衣料品が廃棄されているといわれていますが、そのうち再利用、再資源化されるのは3割未満とされています。同社では不要になった衣料品などを下取りして再利用に回したり、使用頻度が低いドレスなどをシェアリングできるサービスを開始し、ドレスの生産量そのものを減らしたりすることで環境保全と顧客サービスの深化を進めています。こうした取り組みが奏功し同社のCO2排出量は減少傾向となっていると考えられます。
図7 丸井グループのバリューチェーン全体のCO2排出量
図8は男性社員の育児休暇取得率を表しています。2014年には男性社員で育児休暇を取得したのは1割強にとどまっていましたが、2017年には9割を超える水準にまで高まりました。日本企業全体で見ると、男性の育児休暇取得率は5%程度に留まっており、如何に同社の取り組みが進んでいるかが分かります。人の成長が企業の成長であるという考え方をベースに、組織風土や人材への投資を重視する同社の姿勢が伺えます。
図8男性育児休暇取得率
マイクロソフトは、クラウドサービスでCO2を削減!
海外の企業ではどのような企業がサステナブル企業といわれているのでしょうか?マイクロソフト(米国)の例を見てみましょう。同社は2012年に世界でも最も早くカーボン
ニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量を同じにすること)を達成した企業の一つです。同社は様々なサステナブルの取り組みを行っていますが、2018年における主な取り組みとしては以下のようなものがあります。
図9:マイクロソフト社のサステナブルに関する主な取り組み(2018年)
マイクロソフト社のサステナブルに関する主な取り組み |
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世界のNPOに対して14億米ドル相当のソフトウェアとサービスを寄付 |
494校、16,000人の高校生に対してコンピューター・サイエンスの講座を提供 |
マイノリティ、障害者、退役軍人、女性の事業者に対して30億米ドルを投資 |
カーボンニュートラルを達成(2012年以降、連続) |
2018年にリリースした新製品のパッケージ重量を20%削減 |
2022年までに、米国の地方に住む200万人以上にブロードバンドインターネット環境を整備 |
注:マイクロソフトよりUBSアセット・マネジメント作成。記載されている個別の銘柄・企業名について、その銘柄又は企業の株式等の売買を推奨するものではありません。上記は過去のものであり、将来の動向を示唆、保証するものではありません。 |
同社は今後の取り組みとして、例えば環境分野では、2030年までに温室効果ガスを2013年対比で75%削減することを掲げています。これまで以上に再生可能エネルギーの比率を上げることや、エネルギー効率向上のための投資を積極的に行うとしています。
同社が進めているクラウドコンピューティングは、エネルギー効率の改善などを通じて温室効果ガスの削減に貢献することを自社のデータで実証しており、今後は顧客にも同様の取り組みを進めていくことで、本業との相乗効果も期待されます。
特集:サステナブル投資
(1)「正義=利益」は成立する!?富裕層の新常識「サステナブル投資」って何だ?
(2)GPIFも導入。サステナブル投資の長期リターンと世界的な資金の集まり度合い
(3)イクメン、CO2削減・・・社会にやさしいサステナブル企業は、株価も優秀!?
(4)「不快」に投資しない。簡単にできるサステナブル投資。あなたのお金で世界の幸福度が変わるかも
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