NYダウの強さに引きずられて、日経平均も上昇が続いている

 先週の日経平均株価は、1週間で525円上昇し、2万1,425円となりました。米中通商協議が何らかの「落としどころ」に落ち着く期待、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長がハト派に転じた安心感から、NYダウが力強く上昇しているのに引きずられて、日本株も上昇が続いています。

日経平均週足:2018年1月4日~2019年2月22日

 

 先週の日経平均は、昨年のボックス圏(2万1,000~4,000円)まで戻りました。心理的な上値抵抗線となりつつあった2万1,000円を超え、安心感が広がりました。ここからは、戻り売りが出やすい水準に入るので、しばらくは2万1,000円台の値固めが必要と考えられます。2万1,000円が下値抵抗線と意識されるようになるまで、今しばらく時間がかかりそうです。

 一方、NYダウは既に、昨年10~12月の急落の大部分を取り戻しています。

NYダウ週足:2018年1月2日~2019年2月22日

2つの不安緩和で、NYダウは力強く上昇

 昨年、米国株の上値を抑えていたのは、利上げ加速の不安と、貿易戦争エスカレートの不安でした。2つとも緩和しつつあることが、NYダウの強さにつながっています。

【1】パウエルFRB議長が豹変

 昨年までタカ派発言を繰り返していたパウエルFRB議長が、今年に入ってから、一貫してハト派発言を繰り返しています。利上げを急がないだけでなく、イエレン前FRB議長が始めた、FRBの保有資産縮小(量的引き締め)を年内にも終了する方針を打ち出しました。

 利上げも、資産縮小(量的引き締め)も終了させる、株式市場に友好的なハト派議長になる可能性を示しています。

【2】トランプ大統領は貿易戦争をエスカレートさせる気はない模様

 トランプ大統領は、3月1日までに米中通商交渉が合意に至らなくても、中国向けの制裁関税の引き上げは行わないと考えられます。合意が近いと判断し60日程度、関税引き上げを延期する見込みです。

 トランプ大統領は、米中首脳会談(習近平中国国家主席との会談)が実現しない限り、通商交渉の合意はないと話しています。3月1日までに首脳会談は実現しませんが、それでも「あまり遠くない将来に行う」とトランプ大統領は22日に発言しており、延長交渉が行われる4~5月に最終合意を見据えた首脳会談が実施されると考えられます。

 トランプ大統領は、これまでに何度も「破談」をほのめかしたり、「合意は近い」とほのめかしたりして、株式市場を混乱させてきました。今回も、示唆通りに首脳会談が行われるか、現時点で不透明です。

 ただ、貿易戦争が、米景気にも悪影響を及ぼし始めていると考えられること、中国が歩み寄りの姿勢を見せていることから、4~5月には何らかの合意に達すると、私は考えています。

世界景気に対する不安が広がっている

 中国発の景気減速が、世界全体に広がっています。昨年、中国景気悪化の兆しが見えましたが、世界全体は好調と考えられていました。ところが今年に入り、中国だけでなく、景気停滞色が世界全体に広がっています。

 欧州景気の下ぶれリスクが高まり、ECB(欧州中央銀行)は、量的緩和の長期化を示唆し始めています。東南アジアの景気にも減速色が強まってきました。さらに米国景気にも悪化の兆しまで。世界まるごと好景気だった、2017年から様変わりです。2019年前半は、世界まるごと景気停滞となるリスクが出てきています。

1-3月が買い場の見方継続、押し目を待ちたい

「1-3月が2019年の世界景気悪化を織り込む株安の最終局面になる」との予想を継続します。4月以降は、2020年の世界景気回復を織り込んで、世界的に株が上昇すると考えています。

 ただし、1月からの世界株高は、ややピッチが速すぎると感じています。3月には世界の政治経済で大きなイベントが多数控えており、足元、日経平均のボラティリティ(変動性)が低下していますが、3月には再び荒れる可能性も残っています。

 長期投資で日本株は買い場との見方は変わりませんが、押し目を待って買い出動した方が良いと思います。

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