下方修正優勢でも、先行きに悲観は広がっていない

 2019年3月期の第3四半期(10~12月期)決算が出そろいました。事前に予想されたとおり、通期見通し(会社予想)の下方修正が増えました。

 特に米中貿易戦争を受けて、悪化しつつある中国景気の影響が色濃く出て、中国関連株、設備投資関連株に下方修正が目立ちました。また、原油など資源価格急落の影響から、石油、鉄鋼、非鉄など素材関連株も下方修正されました。

 ただし、事前に想定された範囲内での下方修正が多く、発表後に売られる銘柄はあまりありませんでした。むしろ下方修正発表後に、株価が反発に転じる銘柄が多数ありました。

 

中国景気の悪化で、11月から業績モメンタムが悪化

 それでは、今期(2019年3月期)業績予想がどう変化してきたか、簡単に振り返ります。

東証1部3月期決算、主要841社の連結純利益(前期比変化率): 2019年3月期(予想)

出所:楽天証券経済研究所が作成、▲はマイナスを示す

 主要841社で見ると、5月時点の会社予想(期初予想)で、2019年3月期の連結純利益は▲2.5%の減益になる予想でした。

 これに対し、楽天証券では5月時点で、+1.1%の増益になると予想していました。期初の会社予想は保守的(低め)になることが多く、後から上方修正されると読んだためです。特に、為替や原油価格の前提が、実態より保守的になる企業が多いことを考慮しました。

 12月時点で、会社予想は▲1.8%の減益予想に修正されました。期初の▲2.5%減益より、わずかに減益幅が縮小しました。9月中間決算発表時点で、業績見通しを上方修正する企業が優勢だったためです。ただし、その頃から中国景気の失速が顕著になりつつありました。ドル/円為替レートでは円安が進みましたが、円安効果よりも米中貿易戦争の影響で、中国景気が変調を来たした影響の方が勝っていました。

 12月時点で、841社の業績予想を見直した結果、楽天証券では、今期▲4.3%の減益になると予想を下方修正しました。11月から中国関連株やハイテク関連株で業績悪化が顕著になり、10~12月の決算発表時に業績予想の下方修正が増えると予想したためです。

 その予想通り、10~12月決算の発表では、下方修正の発表が増えました。10~12月決算が出そろった2月18日時点で、841社の今期純利益(会社予想)を集計すると、▲5.1%の減益に下方修正されています。楽天証券予想と近い減益率になってきました。

株式市場の注目は、来期に移りつつある

 今期(2019年3月期)業績が下方修正されても、さほど悲観が広がっていないのは、来期(2020年3月期)に向けて、一段と業績が悪化するとは見られていないからです。株式市場の注目は、今期業績から徐々に来期業績に移りつつあります。

東証1部3月期決算、主要841社の連結純利益(前期比変化率): 2016年3月期(実績)~2020年3月期(予想)

 楽天証券では、来期(2020年3月期)は、主要841社の純利益は6.8%の増益と予想しています。来上期(2019年4~9月期)は前年同期比で減益になると考えられますが、下期から回復し、通期で増益になると予想しています。

 その前提条件は、2019年に減速する世界景気が、2020年に回復するという見通しです。1~3月が2019年の景気減速を織り込む最終局面になるので、1~3月に株が売られる局面では、長期投資でしっかり日本株を買っていくべきと判断しています。

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